MRとして成績を伸ばすことを考えたとき、避けて通れないものとして学術論文(英語論文)があります。営業成績の優れた一歩先をいくMRであるほど、学術論文を活用します。

ただ、英語論文を読むとなると非常にハードルが高いように思います。医師であっても、実際のところ英語を扱えない人が多いので、英語で書かれた文献を躊躇してしまうほどです。

しかし、情報提供によって営業成績の向上を目指す以上、学術論文について理解することが必要です。そこで、どのように英語の文献を扱えばいいのかについて確認していきます。

MRは文献を理解する必要がある

営業活動をする上で、MRにとって英語はそこまで重要ではありません。たとえ外資系製薬会社で働いていたとしても、高い英語力は要求されないのです。特に開業医担当のMRであると、英語論文を医師に渡す機会はほとんどなく英語がまったくできなくても困りません。

ただ、英語を扱える必要がないというのは、「英語論文を理解する必要がない」という意味ではありません。たとえ開業医担当であったとしても、学術論文を読んで中身を理解する必要があります。

外国人相手に会話するほどの英語力は必要ないものの、医師の診療をサポートするため、文献に対する最低限の知識はどのMRであっても必要なのです。

会社資料だけで満足しているMRは二流

MRとして活動するとき、医師に情報を提供するときの情報源としては会社資料と文献の2つがあります。このとき、実際のところ会社資料だけで勉強をすませている人は多いです。

一見すると、会社資料だけを理解していればMR活動ができるように思えます。ただ、会社の資料は宣伝的な要素が大きいです。そのため、実際のところ会社資料を使って医師にいくらアピールしても採用や処方増につながらないことを多くのMRが実感しています。

この理由は単純であり、医師は「製薬会社の資料は製薬会社によって都合の良い部分をピックアップしている」ことを理解しているからです。

一方で学術論文は科学者によって執筆されたものであるため、宣伝というよりも科学的な側面が強いです。もちろん、製薬会社の寄付金などによって成り立っている研究も多いため、一概にはいえませんがそれでも製薬会社が作る資料に比べると中立的です。

そのため、医師は製薬会社が作った資料よりも英語論文に書かれている内容の方を信用します。

また、医療に関する最新の知見は会社資料になく、論文として発表されます。そのため、文献を理解できれば医師により高度な情報を提供できるようになります。

特に大学病院や基幹病院を担当するなど、MRとしてステップアップしていくにしたがって英語論文に触れる機会が多くなります。そのように考えると、学術論文についてMRは理解しなければいけません。

MRによってTOEICなどの英語は必須でないものの、「学術論文をある程度まで理解できるレベルの語学力は必要」というわけです。

病気や治療法、患者背景について理解するべき

世間一般的には、学術論文に書かれている内容はパターン化されているので読むのが簡単だといわれています。ただ、実際に英語論文を取り寄せて読むと分かりますが、書いてある内容をまったく理解できないという事実に気が付きます。

私の経験上、「文献(学術論文)の英語が簡単」というのは半分正しく、もう半分は間違っています。

考えてみれば当然ですが、文献に書かれてある内容は学術的で難しい内容です。そうした難しい内容を英語で書いているため、さらに内容は難解です。このように考えると、日本語で読んでも理解できないのに、英語で書かれてある内容を把握できるわけがありません。

そこで、英語論文を理解する前にあなたが行うべき最初のこととしては、「これから読もうとする英語論文の周辺知識について、日本語で勉強する」ことがあります。要は、自分の担当領域に関して日本語でインプットするのです。

最初に英語へ手を出してはいけません。まずは、日本語を読んだときに自分の担当領域に関わるさまざまなことを理解できるようになっておく必要があるのです。医学情報について日本語で理解できているからこそ、英語で読んだときにようやく内容を把握できるようになるのです。

病気や治療法、患者背景を含め、自分の担当領域については医師と対等に話せるレベルにまで成長することで、ようやく英語論文に書かれてある内容が分かるようになるのです。

日本語で周辺知識を学べば、英語論文を読めるようになる

こうして日本語で医療に関する情報を学んだ後に英語論文を読めば、格段に内容が頭に入ってくるようになります。

例えば私が大学生のころ、理系出身だったので4年生になって配属された研究室では英語論文を読み込む必要がありました。ただ、文献を読んでも内容をまったく理解できません。前述の通り、日本語で読んでも分からない内容であったため、英語論文で理解できないのは当然だといえます。

そこで、先輩に質問するなどして、まずは自分の研究分野について深い知識をつけるようにしました。そうすると、それまで意味不明だった英語論文の内容がうっすらと理解できるようになりました。また、論文を5つくらい読み込むうちに書かれてある内容やパターンが同じであることに気が付き、さらに読むスピードが上がっていきました。

学術論文というのは、言い回しや書かれてあることが決まっています。これを理解すれば、文献を読むのは思ったほど難しいものではないのです。

例えば、糖尿病を治療するときは「HbA1c」「インスリン」などの単語が必ず出てきます。このとき、HbA1cの意味やインスリンの役割を知らない状態で論文を読んでも内容を理解するのは困難です。

ただ、これらの単語の意味や糖尿病の治療背景をしっかり理解したうえで読む場合、たとえ内容が英語であったとしても「ここはこういうことを言いたいのだろう」とある程度まで推測できます。

論文の構成を学ぶ

日本語で医学知識をつけた後は、ようやく英語論文を読んでいくようになります。ただ、文献を上から下まですべて読む必要はありません。むしろ、上から順に読んでいってすべての内容を理解するのは不可能です。

論文の内容は高度な学術知識であり、そもそも日本語で読んでも理解できないことの方が多いです。これが医学論文になると、すべて理解するためには統計知識が必要になるなど、かなりレベルの高い学術知識が要求されます。

ただ、MRが統計知識まで学ぶのは現実的ではありません。また、すべての論文について上から下まで読んでいると、いくら時間があっても足りません。

そこで、論文を読むコツとしては「必要な部分だけを流し読みする」ことがあります。論文すべてを読むのは非効率なだけであり、MR活動をする上で必須となる部分だけを理解していれば問題ありません。

基本はAbstract(アスブトラクト:要旨)で十分

英語論文を読むとき、基本的にはAbstract(要旨)だけを読むようにしましょう。論文に書かれてあることをすべて読むのは現実的ではないため、興味のある論文だけを選別する必要があります。このときにAbstract(要旨)が役立ちます。

Abstractには「何を目的に研究を行い、どのような方法で行い、どのような結果が得られ、何が分かったのか」という論文全体での言いたいことが書かれています。そのため、Abstractを読めば論文の概要を把握できます。

Abstractをメインで読み、さらに深い内容を知りたくなったときは中身を読んでいくようにしましょう。

それでは、Abstractは論文のどこにあるのでしょうか。論文では型があり、決まった順番に沿って書かなければいけません。「序論 (Introduction)」「方法(Methods)」「結論(Results)」など、いくつかのパートに分かれていますが、Abstractはタイトルの下に必ず記載されています。

どの論文であっても構造(論文の書き方)はすべて同じであるため、いずれにしても「タイトル下にある、最初の書き出し文章がアブストラクトである」と理解すれば問題ありません。

Abstractの次は考察(Discussion)を読む

英語論文のAbstractを読んでいるうちに、「自分の営業活動に役立ちそう」「医師の情報提供のネタになりそう」など、何かしら役立ちそうな論文が出てくるようになります。そうしたとき、上から順に読んでいってはいけません。

例えば、論文を上から順に読んでいくとなると「どのような方法で行ったのか(方法:Methods)を読破する必要があります。ただ、「方法:Methods」では、どのような患者さんを集め、どのような統計処理を行い、どのような考えで研究をしていったのかを含め、日本語で読んでも理解できない難解な言葉が並んでいます。

また、こうした部分を読んで内容を理解したとしても、あなたの営業活動にとって有益な情報を得られることはほぼありません。統計処理に関する英語をどれだけ読んだとしても、医師に提供できる情報を抽出できないのです。

そこで、Abstractを読んだ後は考察(Discussion)まで一気に飛び、読みはじめるようにしましょう。

Abstractさえ理解できれば、論文でどのようなことを行い、どのような結果を得られたのか把握できます。これらの研究によって得られた情報をもとにして、著者(論文の研究者)がどのように結論付け、どのようなことが考えられるのかを述べている個所がDiscussionです。

Discussionには「○○について薬剤を活用することで、××の副作用低減を期待できる」「□□を実施することで、より相乗的な治療効果を望める」などのようなことが書かれています。

MRにとって、Discussionに記述されてある内容はそのまま医師への営業トークとして活用できます。論文に書かれてあることを医師に話すことで、自社製品のメリットを押し出しながらアピールすることができます。

さらに、このときの情報源は会社情報ではなく学術論文です。文献という中立的な立場で述べられた内容を参照した上での情報提供であるため、当然ながら医師はあなたの話す内容を信頼してくれやすくなります。自社パンフレットを活用した宣伝よりも、文献によって根拠を提示した方が、信頼性が高いのは当然だといえます。

こうしたことから、社内資料だけで勝負している状態では不十分です。文献まで含めて情報提供をすることで、ようやく質の高いMR活動ができるようになるのです。

現在、「大学卒業という学歴」がなければ、MRになることができません。ただ、大学へ入れるくらいの学力があれば、誰でも英語論文を読めるようになります。外国人と会話できるレベルになる必要はなく、AbstractとDiscussionを読むことができれば問題ないからです。

最初は日本語で医療について勉強する必要はあるものの、一度知識をつければ問題なく論文を読み進めるようになります。

どこで学術論文を入手すればいいのか

それでは、実際に文献を手にするときはどこで検索すればいいのでしょうか。

医師を含め、多くの研究者は「Pubmed」というサイトを活用して論文を検索しています。私もMRとして文献検索するとき、このサイトを活用しています。論文を読みたいとき、あなたも同じようにこのサイトを利用しましょう。

次に、何を調べればいいのかというと、基本的には薬に関することがメインになります。そこで、調べたい薬剤名(一般名)を入力してみましょう。あなたの知りたい薬剤に関する論文がたくさん出てくるはずです。

例えば、糖尿病治療薬であるグリメピリド(商品名:アマリール)について調べてみたいと考えます。このとき、商品名で入力してはいけません。必ず一般名(今回であれば「Glimepiride」)で検索する必要があります。商品名は日本だけで活用されている名前であることが多いです。さらに、学術論文では基本的に商品名を記載しません。

そこで、先ほどのPubmedを開いて「Glimepiride(グリメピリド)」と入力し、「Search」のボタンを押して検索にかけます。

そうすると、グリメピリド(商品名:アマリール)に関係する論文がたくさん出てきます。この中から、興味のある論文をピックアップすれば問題ありません。

MRである以上、担当している薬があると思います。このときは自社製品だけでなく、他社製品(ライバル商品)を含めて調べてみるといいです。論文を読めば、会社のパンフレットには載っていないあらゆる情報を手にすることができます。

製薬会社であれば、Pubmedと契約しているので自由に論文を読むことができるはずです。本来、論文を閲覧するためには高額のお金が必要です。こうした費用を製薬会社が負担し、いつでも情報を取り出せるようにしているため、こうした素晴らしい環境を使用しない手はありません。

アプリを活用して、効率的に論文を集める

ただ、最新の論文を毎回検索することで情報収集しようとするのは非常に大変です。日々、論文が出されているので自ら検索して情報を取りに行くとなると、大きな手間暇がかかります。

そこで、アプリを活用するようにしましょう。まず、学術雑誌ごとに専用のウェブサイトを保有しています。そこで、学術誌のサイトが更新された(新たな論文が掲載された)とき、その情報を届けてくれるように設定するのです。

例えば、「Feedly」というアプリを活用すれば、最新の論文を自動で収集してお知らせしてくれます。

医療雑誌として有名なものとしては、NEJM、The Lancet、Annals of Internal Medicine、BMJ、JAMAなどがあります。これに加えて、糖尿病担当MRであれば「Diabetes」を加えるなど、あなたが興味のある学術雑誌をアプリに登録するのです。そうすれば、新たな論文が掲載されたとき、その情報が届くようになります。

医師へ情報提供するためには、最新の知見を知っておくと非常に効果的です。このときにアプリを活用すれば、どの医師よりも早く最新情報を得られる環境を作れるようになるのです。

医師への学術論文の届け方

なお、MRとして文献を読めるようになっておくだけでなく、医師へどのようにして英語論文を提供すればいいのかについても理解しておく必要があります。

例えば、医師から「あなたの糖尿病治療薬の中で、相互作用(飲み合わせ)に関する論文がほしい」といわれたとき、どのように行動するでしょうか。

医師の言葉を真に受けて、自社製品の糖尿病薬の中で相互作用に関わる文献をすべて印刷し、もっていくようにしてはいけません。それでは膨大な量になってしまい、医師にとって大量に印刷された紙をもってこられるのは迷惑です。また、調べるために何日もの時間が必要になります。

そこで、なぜ論文が必要なのか医師に詳細を聞くようにしましょう。このとき、例えば「実は医師同士の糖尿病の研究会で、次回のテーマが『抗がん剤と糖尿病治療薬を併用するときの注意点』になったため、そうした内容がほしい。特にがんの中でも、患者数の多い肺がんや大腸がんなどに使われる抗がん剤との相互作用に関する論文が望ましい」などのような情報を聞き出すのです。

これであれば、「頻繁に用いられる抗がん剤」と「自社製品の糖尿病治療薬との相互作用」だけに限定して情報を集めればいいことが分かります。その結果、翌日には医師に対して素早く情報を提供できます。

その数日後、「他社製品ではありますが、こうした相互作用も報告されているようです」「必要かと思い、なぜそのようなメカニズムが起こるのかに関する文献も集めました」などのように情報提供すれば、医師は喜んでくれます。

MR活動ではスピードが求められます。このとき、完璧な回答を用意しようとするMRであるほど、情報提供のスピードが遅くなって医師をガッカリさせます。

そこで、医師が求めているものを最初に把握するようにしましょう。その後、素早く情報を提供して満足してもらった後、さらなる情報提供をすることで医師からの信頼度が高くなります。

ただ、こうした情報提供を実施するためには、MR自体が論文を読めるようになっておく必要があります。もっといえば、Abstractを読むことで論文に書かれてある内容を把握し、医師に対して素早く情報提供できるようになっていなければいけません。

MRが論文を読めるというのは、単に自分自身の知識にとってプラスになるだけではありません。医師へ迅速に情報提供するときであっても役に立つのです。

学術論文を活用し、一歩先のMRを目指す

英語の論文を読むとなると、正直なところ面倒です。また、英語論文を読むことに慣れていないので、最初は誰もが挫折しそうになってしまいます。

ただ、大学に合格できるレベルの英語力(中学英語)さえできれば、誰でも論文を読めるようになります。難しい文法は使われていないからです。その代わり、最初は日本語で医療に関して必死に学ぶことで基礎知識をつけないと、いくら英語力に長けていても内容を理解できないため、医療の基本についてはしっかりと学ぶようにしましょう。

そのうえでAbstract(要約)やDiscussion(考察)を読めば、多くの知識を手にすることができます。特にDiscussionの内容は営業トークに活きてくるため、論文から使えそうな言葉を盗み取るようにしましょう。

論文をすべて読み込む必要がなく、AbstractとDiscussionを見れば問題ないと分かれば、非常に心が楽になるのではないでしょうか。完璧に英語を扱える必要はなく、あくまでも医師に有益な情報を提供できれば大丈夫なため、MR活動では簡単な英語力さえあればまったく問題ないのです。

「英語論文のどこに何が書かれてあるのかザックリと理解している」「Abstractを読めば、大まかな内容を把握できる」というレベルになっておけば、MRとしての学術知識はトップレベルになります。

多くのMRはそこまでしないため、情報提供するときに医師をガッカリさせます。ただ、少し努力してコツさえ掴めば、誰でも文献を読めるようになります。

どのようにして学術論文を読むのかについて、今回その方法をすべて公開しました。英語だからといって苦手意識をもたず、チャレンジしてみるとMRとしてさらにステップアップできるようになります。


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