ずっとMRとして活躍してきた人であっても、MRとしてのキャリアに穴を開けてしまうことがあります。要は、ブランクを生じてしまうのです。
そして数年ほどMRを経験していないと、再びMRとして復帰するのが難しくなるのではと考えてしまいます。実際、期間が空きすぎてしまうとMRへの復職は難しくなりますし、他の職種として転職した方がいいこともあります。
それでは、どれほどのブランクがあると復帰が厳しくなるのでしょうか。また、ブランク明けのMRはどのように転職すればいいのでしょうか。これについて、どのようなキャリアパスを通るのが一般的なのかについて確認していきます。
もくじ
なぜ、MRを離れた後に復職を考えるのか
そもそも、なぜMRを一度離れた後に再びMRとして復職を考えるようになるのでしょうか。
MRをやめるようになった理由は人によって異なりますが、これには主に「結婚や妊娠・出産など女性特有の理由」「同じ会社(または別会社)でMRとは異なる仕事をしていた」「留学やMBAなど、勉強のために退職した」などがあります。
同じ会社(または別会社)でMRとは異なる仕事をしていた
会社で仕事をしていると異動になることがよくあります。特にMRは全国転勤があるため、どこの勤務になるのか分かりません。
ただ、中にはMRではなく他の部署への転勤になることがあります。MRとは異なる別の部署へ異動になり、マーケティング調査や学術系の仕事に携わるなど、別の働き方を会社から提案されるのです。
または、他の会社へ転職したり起業を目指したりして製薬会社を辞めてしまった人もいます。
こうしたとき、MRの方が良い待遇だったので不満に思ったり、別会社での仕事があまりうまくいっていなかったりしたとき、再びMRとして活躍するために転職を検討するようになります。MRは単純に年収が高く、福利厚生を含めて好待遇であるためMRとして復帰しようと考える人は多いです。
結婚や妊娠・出産など女性特有の理由
MRをやめることになった最も一般的な理由としては、女性特有の理由があります。結婚や妊娠・出産を機に働いていた会社を辞めるのです。
妊娠・出産を経験した女性であっても、産休・育休を取得して復帰する場合であれば、同じ会社にMRとして戻ることができます。ただ、既にやめてしまった場合は復職することができないため、転職サイトなどを活用してMRとして再び活躍するための手はずを整える必要があります。
このとき、新薬を取り扱う製薬会社のMRであると全国転勤があります。男性が単身赴任で全国を飛び回る場合は問題ありませんが、母親が旦那や子供を残して全国転勤するのは現実的ではありません。こそこで、地域限定で働くことが可能なコントラクトMRを目指すケースが多いです。
女性MRの場合、結婚後や妊娠・出産後ではどうしても勤務時間や勤務地に制約が出てくるため、これらを考慮した上で転職を検討する必要があります。
留学やMBAなど、勉強のために退職した
勉強のためにいまの製薬会社やCSOを退職したという人もいます。留学することで語学を勉強したり、MBAに通うことでビジネス的な観点を学ぼうとしたりするのです。
他には、海外留学のような「語学の勉強をするために退職した」というわけではなく、バックパッカーのように海外をフラフラと歩きながら冒険してみたいという人もいます。こうして海外を旅して新たな土地に足を踏み入れて人と交流し、満足した後にMRとしての復職を目指すのです。
MRは未経験の人であっても問題なく受け入れてくれる業界であるため、たとえ留学やMBAでの勉強によってブランクを生じたとしても、問題なくMRとして復帰できるのではと考えてMRを目指すのです。
ブランクがあると当然ながら不利になる
それでは、ブランクがあると実際のところMRとして転職するのは不利になるのでしょうか。当たり前ですが、ブランクがあるとその分だけ不利になります。
何らかの理由で再びMRとして復帰しようとするとき、現職MRがライバルになります。製薬会社からすれば、「前の会社を退職してブランクのあるMR」と「現時点でMRとしてのキャリアにブランクがなく、成果を出している人」が目の前にいたとき、後者を採用したいと考えるのは当然です。
どのような理由であったとしても、ブランクがあるという事実だけで転職は不利になってしまいます。
それでは、ブランクがどれほどの期間であれば不利になるのでしょうか。これについては、大まかに「2年」だと考えてください。つまり、ブランク1~2年であれば新薬メーカーであっても問題なく転職できる可能性が高いです。
ただ、ブランクが3年になると微妙になってきます。この場合、製薬会社への転職は採用者の目が厳しくなるため、CSOに応募してコントラクトMRを目指すケースが多くなります。新薬メーカーでの再就職を希望する人はたくさんいるものの、現実的にはコントラクトMRのほうが最適の場合が多いです。
一方でブランクが4年以上あると非常に厳しくなります。MRとして仕事を行うときの勘は鈍っていますし、医薬品知識を含め覚え直すことが多くなります。
基本的に医療業界ではブランクの期間は「2年」です。なぜかというと、2年で大きく業界内のルールが変わるからです。診療報酬は2年に一回のペースで改定されますし、これだけの期間があれば新薬はいくつも発売されています。また、既存薬の適応拡大も進んでいます。
医療というのは日々進歩していきます。そのため、営業スキルの勘が鈍るというだけでなく知識の面でも現役MRと比べて劣ってしまうのです。
必ず確認が必要になるMR認定資格
そして、MRとしての復帰を考えるときに必ず確認すべきものとしてMR認定資格があります。
MR認定資格は公的に認められた資格ではなく、民間資格でしかありません。そのため、MR認定資格がなければMR活動を行えないわけではありません。ただ、MR経験者として転職するときはMR認定資格が必須になります。
MR認定資格は更新制であり、5年が期限です。そのため、ブランクの期間が長いほどMR認定資格の期限が過ぎて失効している可能性があります。期限が切れている場合、経験者枠での転職は無理なので早めに確認するようにしましょう。
もし、MR認定資格の期限が切れている場合は主催団体へ連絡を取るようにしましょう。そこから、資格を復活させたり再び取得したりして、何とかしてMR認定資格を取り戻すようにするといいです。そうすれば、問題なく経験者枠として転職活動を進めることができます。
たとえブランクがあったとしても、MR認定資格は必ず取り戻すことを考えましょう。MR認定資格がなければ、未経験者と同じ額の給料提示になってしまいます。そのため、MR認定資格をもっているのとそうでないのでは、転職時の年収が100~200万円以上異なることはよくあります。
たとえ別の部署で働いていたとしても、留学中であったとしても、少しでもMRへ戻る可能性がある場合は資格の有効期限について確認するようにしましょう。もちろん、MR認定資格の失効時期が近づいたら更新するようにするといいです。
どうしても新薬メーカーのMRを希望する場合の対処法
なお、最初からCSO(コントラクトMR)を目指すのであれば問題ないですが、中にはどうしても製薬会社のMRとして働くことを希望する人がいるかもしれません。CSOの正社員よりも新薬メーカーのMRとして働く方が年収や福利厚生を含めて充実しているため、全国転勤でも問題ない男性であれば当然かもしれません。
ただ、運よく製薬会社へ転職できればいいですが、前述の通り最初はCSOのMRを目指した方が適切なケースがあります。この場合、最初はコントラクトMRとして活躍し、その後に製薬会社のMRとして再び転職するという方法を取るといいです。
MR未経験の人が新薬メーカーのMRを目指すとき、多くは「コントラクトMR → 製薬会社のMR」というキャリアパスを通ります。これと同じことを実践するのです。
または、少数ながらも製薬会社によっては「未経験OKの求人」を出していることがあります。厳密には未経験でないものの、ブランクありの元MRとしてこうした求人へ応募すると採用されることがあります。
英語力を活かして別の部署で活躍する
語学留学していたり、既に英語力が高かったりする人の場合、CRA(臨床開発モニター)へ転職するというキャリア形成の方法があります。MRとしての経験を活かして、CRO(製薬会社の治験を代行する会社)のCRAとして活躍するのです。
CRAでは主に治験業務を行うことになりますが、MRのように「医師へアポイントを取って数分ほど説明し、その中で何とかして薬を使ってもらうようにする」などのような仕事とは異なります。治験の説明をするとき、医師だけでなくそれに関わる医療者全員が真剣に話を聞いてくれます。
そのためMRのときと比べれば仕事はかなり進めやすくなります。全国を飛び回る仕事にはなりますが、ブランクありのMRはCRAとして転職することも視野に入れるといいです。それまでMRとしての経験が十分にある場合、35歳まで(できれば20代)であれば未経験であってもCRAへ転職することができます。
例えば、以下は東京の会社から出されたCRAの求人募集です。
ここにある通り、必要な資格に「MR資格」とあります。今回のCRA未経験でも応募できる中途採用の求人ですが、MR資格がある場合は問題なく転職できます。
履歴書や面接で伝えるべきこと
それでは、MRの経験はあるものの数年のブランクをもつ人が製薬会社MRやCSO(コントラクトMR)、さらにはCRAなどの異業種へ転職するときは、履歴書や面接でどのように伝えればいいのでしょうか。
当然ながら、どれだけそれまでMRとして優れた成績を残していたとしても、伝え方を間違えると採用されることはありません。履歴書を通過させ、面接で内定をもらうためには事前に理解しておくべきことがあります。
ブランクありのMRが転職するとき、面接で聞かれるときのポイントとしては以下のようなものがあります。
・MRを離職した理由を考える
転職のとき、どのような場合であっても聞かれるものとして「前職を辞めた理由(MRを離職した理由)」があります。
例えば女性MRの場合、結婚や出産・育児によっての退職であれば、もっともらしい理由に聞こえるかもしれません。
ただ、MRとしての復職を目指して転職活動しているのであれば、前の会社を辞めずに「産休・育休を取得し、製薬会社のMRとして戻る」という選択肢があったはずです。なぜ、こうしたことを行わずに退職し、再びMRを開始しようとしているのか明確に話さなければいけません。
また、同じ会社(または別会社)でMR以外の仕事をしていた場合、自分都合・会社都合に関わらず「なぜMRではなく、その仕事をしていたのか」の説明が必要です。たとえ会社都合による異動であっても、もしかしたら営業成績が悪かったために異動になったのかもしれません。
MRではなく別の仕事をしているということは、何かしらの理由があるはずです。そこで、そのための理由を面接で話さなければいけません。
これが留学やMBAなどのために退職したとなると、退職理由を綿密に考えなければいけません。「自己実現のために何となく退職し、留学やMBA取得を頑張った」という理由では面接官は納得してくれません。そこで、何を得て学んだのかについてじっくりと整理しておくようにしましょう。
・転職理由を明確に示す
このとき、転職理由は求人先の会社が納得できるものにしなければいけません。当然、「MRは他の業界よりも年収が高く、福利厚生も充実している」「MRの活動がきつくて辞めたが、実はかなり待遇が良いことに気づいた」などの理由ではダメです。
「ブランク期間中に多くのことを経験させてもらったが、こうした経験を通してMRとして活動することの重要性を再認識し、医療へ貢献するために復帰したい」ということを述べるようにしましょう。
これについては、CRA(臨床開発モニター)や医療機器メーカーなど、MRを活かして他職種へ転職するときも同様です。なぜMRをやめ、ブランク期間中に何を学び、その業界へ応募しようと考えたのかを話せるようになる必要があります。
・これまでの経験で何を学んだのか伝える
また、ブランク期間中にあなたが磨いたスキルや経験も重要視されます。経験者MRとして転職する場合、現役MRと比べられることになります。このとき、現役MRとしてずっと働いている場合、それだけ営業スキルを磨くことができますし、経験も蓄積していきます。
ただ、「ブランクあり」であるとそれだけMRとしての腕が鈍ることになります。このとき、ブランク期間中にあなたが「現役のMRとして活躍するよりも、素晴らしい経験をして大きなスキルを身につけることができた」ということを語れるのであれば問題ありません。
ブランク期間中に何も学んでいないのであれば、当然ですが現役MRの方が転職で有利に受け入れられるようになります。
結婚や育児で女性が会社を辞めたケースでは、何を学んだのかを語るのは難しいです。ただ、別部署で仕事をしていたり、留学・MBAなど勉強のために辞めたりしたのであれば、これらの経験によって得たことを話せるように準備しましょう。
一貫性をもたせた志望動機を述べる
それでは、どのような内容にすれば履歴書や面接などで一貫した退職理由・志望動機になるのでしょうか。例えば、以下のようになります。
留学のために2年間ほど海外にいました。MR時代は医師へ薬の説明をすることに主眼をおくよりも、「どのような学術情報を提供すれば喜んでくれるのか」「最新の知識や治療法を提供するにはどうすればいいのか」など、患者さんの治療に必要な情報だけを提供することを考えていました。 自社製品とはほぼ関係ない情報ばかりを提供していたと思いますが、これによってMRの3年目には九州エリア2位の実績を取ることができました。医師であっても英語力が十分でないケースがあるため、そうしたとき私の情報提供はかなり重宝されたのです。 そうしているうちに、自分の英語力をネイティブレベルにまで引き上げることができれば、より高度な医療へ貢献できるのではと考えました。そこで英語を学ぶために留学し、英語論文を理解できるだけでなく、ネイティブと対等に会話できるまでになりました。 こうした経験を活かせば、さらに高度な医療情報を医師や薬剤師に対して提供し、頼りにされるMRとして医療に貢献しながらも薬のPRを行えると考えています。 製薬会社の中でも、御社は大企業であるために新薬のパイプラインが豊富です。さらに、疾患別で区切るのではなく、エリア別でMR活動を行うようになるため、あらゆる種類の薬のPRを行えることに魅力を感じています。 |
このように、「なぜ退職したいのか」「ブランク期間中に経験したことは何か」「なぜMRへ復帰したいのか」について一貫性をもたせるようにしましょう。
あなた自身が経験したことをベースにして、退職理由を述べたり志望動機を作ったりしなければいけません。そのため、転職活動を行う際は自分の行動を深く振り返り、どのように志望動機につなげればいいのかを考えるといいです。
ブランクありのMRとして早めに復帰する
ブランクがあると、MRとして転職するときにそれだけ不利になるのは当然です。これについては、MRの経験を活かして異業種へ転職するときであっても同様です。
ただ上記に挙げた志望動機の例のように、伝え方によっては素晴らしい内容になります。そこで、自分独自の経験を活かしてMRとして転職活動を実践するようにしましょう。
このとき、できるだけ早めにMRとして復帰するのが適切です。ブランク期間が短いほど転職で有利となりますし、年齢は若いほど中途採用で採用してもらいやすくなります。そのため、いますぐ転職サイトへ登録するのが正しいです。
空白期間をできるだけなくすようにして、早めに対策を練ることで、MR経験を活かして高年収を維持しながら次の就職先を見つけられるようになります。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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