あらゆる営業職の中でも、MRは全国転勤のある職業として知られています。MRとして採用された後、どの都道府県で活動するようになるのか分からないのがMRです。

また、たとえMRとして頑張って医師や薬剤師との信頼関係づくりがうまくいくようになったとしても、転勤によってすべてゼロからのスタートになることはよくあります。

独身である場合、ある程度は全国転勤を許すことができます。ただ、結婚して家族が増えたり持ち家をもったりしたとき、全国転勤のあるMRとしていまの会社で働くことに疑問を抱くことがあります。MRの転職理由の上位に勤務地の問題があるため、人によっては転勤を命じられたことによって転職を検討することがあります。

それでは、「地域限定の転勤なし(転勤が少ない)」という求人は存在するのでしょうか。これについて確認していきます。

MRは転勤頻度が多く、希望勤務地は無視される

MRであっても希望勤務地を聞かれることがあります。ただ、全国転勤ありのMRの場合、基本的に希望勤務地は無視されます。

東京や大阪などの都市部を希望していたとしても、生まれ育った地元への就職を考えていたとしても、その願いが叶えられることはほぼありません。男性でも女性でも関係ありません。当然、家族や子供がいても転勤はあります。

経験者MRであれば、新薬メーカーへ転職することで最初の勤務地については希望を聞いてくれることがあります。ただ、次の転勤時にはまったく知らない土地で働くようになる可能性が高いです。

このように考えると、地域限定や転勤なしで勤務できるMRはほぼ存在しません。そして前述の通り、勤務地が原因で退職するMRは多いです。

私の元同僚には、千葉県でMRをしていた女性がいました。ずっと関東で生まれ育った人であり、関東から出て働くのは嫌だとずっと前からいっていました。

そうしたとき、会社から辞令が出て青森県への転勤を命じられました。会社命令のため、彼女は仕方なく青森県へ行って引継ぎのために一週間あいさつ回りをすることになります。ただ、あいさつ回りの後すぐに会社へ辞表を出し、会社を去っていきました。それだけ、彼女にとって関東を出て田舎で働くのが耐えられなかったのだと思います。

たとえ他の地域で働きたくないと思っていたとしても、会社都合によって転勤させられるのはMRの運命だといえます。そのため、この女性MRのように転勤を機に転職を考えるようになるのです。

MRの転勤頻度の期間・年数

一般的にMRは転勤が多い職業として知られています。それでは、具体的にどれくらいの頻度で転勤するようになるのでしょうか。

あくまでも私の主観ですが、転勤頻度としては5~8年サイクルのような気がします。これだけの期間、同じ地域で働いた後に辞令が出て転勤するようになるのです。転勤時期については製薬会社ごとにバラバラですが、いずれにしてもこれだけの年数を働いた後に転勤となります。

しかし、転勤が多いとはいっても5年以上は同じ地域で活躍することになります。ある程度の年数は同じ地域でMR活動をすることになりますし、5~8年ほどの期間で配置換えを実施するのは他の企業も同じです。

そのため、他業種と比べMRが特別に転勤までの年数が短く転勤頻度が多いかというと、実はそうでもありません。MRは転職が盛んであり、さらには全国転勤が基本という職業柄、転勤頻度が多いと考えられているのではと思います。

勤務地を考慮してくれる製薬会社は少ない

それでは、製薬会社はまったく勤務地のことを考慮してくれないのかというと、必ずしもそうではありません。前述の通り、経験者MRでは初任地に関して希望を聞いてくれることがあります。

また、新薬メーカーであっても勤務地限定の考えを取り入れているケースが存在します。

もちろん、このときは経験者MRでそれなりの実績を出している場合に限ります。そこまで成果を出していないにも関わらず、「地域限定の転勤なしがいい」などの要望を出したとしても、その希望を聞き入れてもらえることはありません。自分の要望を聞き入れてもらうためには、当然ながらMRとして活躍している必要があります。

ただ、それでも勤務地を考慮してくれたり転勤なしを実現できたりする製薬会社は少ないのが現状です。

・MR未経験者は勤務地希望を限定できない

特にMR未経験の状態であると、地域限定であったり転勤なしだったりする希望を受け入れてもらえることはありません。そもそも、MRへ転職したい人は多数存在します。その中で勤務地の希望を望んでいる状態では、内定をもらえることはありません。

日本全国で業務展開している製薬会社にとって、「特定の県だけでしか勤務を希望しない人」と「全国どこでも受け入れてくれる人」であれば、当然ながら後者の方がありがたいです。

既に大きな成果を出しているMRであれば、辞めてもらったら困るので勤務地限定で働き続けられる可能性があります。ただ、成果を出せるかどうか分からない未経験の状態では、地域限定での働き方を実現することは不可能です。

・地域限定の要望を取りいれられるケースは存在する

ただ、それでも場合によっては地域限定の要望を取り入れられるケースが存在します。選考基準はよく分かりませんし、製薬会社によって考え方は違いますが、「特定の地域だけで勤務する」ことが通るケースがあるのです。

例えば、私が勤務していた製薬会社とは異なる他社にはなりますが、新卒で鳥取県への勤務になった女性MRがいます。もともと鳥取県での勤務を希望しており、どうやらそこが生まれ育った地元の地域らしいです。

地元でのMR活動であるため、当然ながら子供のときにお世話になった病院がいくつか存在します。また、家族や親せきがお世話になった病院・クリニックを含めるとその数は多くなります。

MR活動では地元に関する話題を交わすことができるため、比較的早く医師と信頼関係を築くことができ、MRとして成果を出していったと聞きました。MRにも関わらず、地元就職を果たすことができた珍しいパターンです。

内資でも外資でも、会社都合で田舎の地域限定はある

また、外資系製薬メーカーに勤める他の男性MRの中には、岩手県でMRをしていた人がいます。この人は大学が岩手県であり、MRの勤務地も同じ地域でした。

本人は岩手県以外を希望していたらしく、「いま住んでいる県以外なら、どこで働いても問題ない」と申し出ていたそうです。ただ、そうした希望を無視されて「大学のときから慣れ親しんだ土地で営業活動した方が良さそうだ」と会社に判断され、結局のところ岩手県の田舎で勤務をしていました。

この男性MRは大学時代を含め、10年以上岩手県の田舎に住んでいます。家は建てていないものの、結婚しており、「転勤の気配はなく、ずっとこの土地で暮らすのではないか」といっていました。

会社の判断によって、このように地域限定で働くようになることがあります。その地域での勤務を本人が希望しているかどうかは関係なく、会社判断によって特定の勤務地だけで働くようになるケースは存在するのです。

地方の田舎町であれば、希望する人は非常に少ないです。そのため、そうした場所へ勤務したい場合、空きがあけば地域限定で働けるようになる可能性があります。

一方、製薬会社でMRをするとき、東京や大阪などの都市部での勤務を希望して最初から受け入れられることは少ないです。東京や大阪などの都市部では、そうした地域で働きたい人が多数存在するため、ある程度の成果を出せていない限り勤務が厳しいのが現状です。

転勤なしの求人はコントラクトMRとなる

それでは、結局のところMRとして大きな成果を出せていない人は転勤なしを実現することはできないのでしょうか。また、勤務地限定でMR活動をすることはできないのでしょうか。

前述の通り、製薬会社であれば地域限定を含め勤務地の要望を聞き入れられることは少ないです。ただ、CSOに所属するコントラクトMRであれば勤務地限定で働けることが可能です。

・コントラクトMRを目指す

基本的に製薬会社で働く方が年収は高いし福利厚生もいいです。ただ、それでもコントラクトMRへ転職する人は数多く存在します。この理由の一つとして「勤務地限定で勤務できる」「地域限定の転勤なしを実現できる」という要因があります。

製薬会社の場合、プロジェクトごとに必要な人員が違ってきます。また、プロジェクトによっては特定の地域に多くのMRを送りこむ必要があったり、その反対にMRの数を減らしたりした方がいい場面が表れます。こうしたとき、転勤を命じられます。

ただ、コントラクトMRの場合はプロジェクトごとに働く製薬会社が異なります。数年ごとに派遣先の会社が変わるため、「関東のプロジェクトだけを担当することで、勤務地限定を実現する」などのようなことが可能になります。

・複数の都道府県にまたがって勤務可能だとアピールするべき

しかし、コントラクトMRであっても勤務地にある程度の自由度をもてる人の方が転職の際に有利です。

特定の県だけではなく、その周辺地域を含めて勤務可能の人の方がCSO側も扱いやすいです。その地域で次回も製薬会社からプロジェクトの要請があるわけではないからです。

そこで、「大阪でしか勤務しない」などのように考えるのではなく、「大阪・京都・兵庫・奈良であれば勤務可能」などのようにある程度のゆとりをもたせると転職に成功しやすいです。

例えば、以下は実際のコントラクトMRの求人募集ですが、「東京、埼玉、神奈川、大阪のいずれか」のように、複数の県にまたがるようになります。

基本は全国転勤であり、勤務地限定の場合であってもこのようにいくつかの都道府県にまたがるようになるのが一般的です。

ちなみに、私の知り合いMRには大阪から岡山まで毎日通っている人がいます。大阪から岡山までは新幹線で1時間ほどです。そのため、毎日新幹線による通勤をすることでMR活動をしています。移動手段を考えれば、意外と他の県であっても勤務することが可能です。

このように考えると、都道府県をまたがって勤務するのはそこまで難しくないことに気づきます。もちろん、移動手段が整備されていない地域では難しいものの、都市部に住みながら地方で働くことは可能です。

ちなみに、特定の都道府県だけでMRを行いたい場合、多くのケースで契約社員として働くことになります。ただ、CSOによっては勤務地限定であっても正社員で働ける会社が存在します。正社員でありつつもMRを目指したい場合、転職先の会社はかなり吟味しなければいけません。

転職時の志望動機理由が「勤務地だけ」では問題か

それでは、実際のところ志望動機が勤務地だけの場合は転職で受け入れてもらうことができるのでしょうか。

このとき、たとえ本音は「勤務地限定が志望理由だった」としても、それだけで転職を実現しようとするのは微妙です。そこで、地域限定で働ける求人を選んだ理由を述べるだけでなく、「なぜそのメーカーを選択したのか」「新たな職場で実現したいことは何か」などを履歴書や面接で伝えるようにしましょう。

勤務地限定の求人を選んで申し込んでいる時点で相手企業は「あなたが勤務地限定の求人を望んでいる」ことは分かっています。ただ、それでも勤務地以外の志望動機を考えるといいです。

ただ、特定の勤務地だけで働くことのできる求人へ応募するときは注意すべきことがあります。それは、それぞれ以下になります。

・MR認定資格をもち、MR経験が2~3年以上ある

前述の通り、MR未経験の転職で勤務地希望が通ることはほぼありません。地域限定の求人が出されるとき、基本的にMR経験者が対象です。このとき、MR認定資格は当然もっている必要がありますし、MR経験が2~3年以上あることが条件になります。

会社によって「MR経験2年以上」となっていることがあれば、「MR経験3年以上」と記載されていることもあります。何年かについては、募集企業によって異なります。

なお、「基幹病院を経験したことがある」「オンコロジー(抗がん剤領域)の経験が必須」などの条件を設けていることがあり、求人ごとに特徴があります。

・ざっくりとした勤務地限定の求人がある

特定の都道府県ではなく、「大阪・京都・兵庫であれば勤務可能」のように複数の都道府県にまたがっても問題なく働ける場合、勤務地限定の求人で採用されやすいことを述べました。これは、そうした求人が実際に存在するからです。

例えば、「勤務地:関西エリア」としている求人があれば、「仙台オフィス(青森・秋田・岩手・山形・宮城・福島いずれか担当)」「北陸オフィス(富山・長野・石川いずれか担当)」のように、複数の都道府県の中でどこに配属されるかわからないケースがあります。

他には、「勤務地:東京、大阪」のように都市部での勤務は確実ではあるものの、関東と関西のどちらで就職するのか分からないこともあります。

このようにざっくりとした勤務地を指定される求人は数多く存在します。

勤務地限定の求人を確認する

それでは、実際の勤務地限定の求人としてはどのような案件があるのでしょうか。実際に出されている求人について、以下でいくつか確認していきます。

・外資系新薬メーカーの地域限定求人

まずは、東京・神奈川での勤務地募集をしている外資系新薬メーカーです。新薬MR経験2年以上の人が申し込めますし、循環器系の薬は多くのメーカーで取り扱っているので対象となるMR経験者は多いです。

今回は東京・神奈川を載せましたが、他の都道府県についても同じ内容で求人が出されています。

・北海道・東北エリアでのMR募集

この中途採用の募集については、勤務地が北海道・東北となっています。このエリアであればどこで働くようになるか分かりませんが、このような求人は多数存在します。

こうした「○○エリア」のような求人であると、転勤があったとしても移動距離は少ないです。また、転勤も少なくなる傾向にあります。

全国転勤であると、日本のどこで働くようになるのか不明です。ただ、同じ田舎で働くにしても、ある程度のエリアが分かっていれば安心できます。

家族や子供を考え、勤務地限定を勝ち取る

このように実際に求人を確認すると、勤務地限定の求人を勝ち取るためには、何年かのMR経験が必要になることがわかります。これについては、製薬会社の地域限定求人に応募するときであっても、コントラクトMRとして勤務地限定で転職するときであっても同様です。

また、実際に求人を見ればわかりますが、求人によっては「オンコロジー領域を経験している」「大学病院・基幹病院を経験している」などの専門的な経験を積んでいると有利になることがあります。

MRという職業柄、特定の地域だけで転勤なしで勤務するのは非常に難しいです。ただ、転勤なしや勤務地限定の求人がまったくないかというと必ずしもそうではありません。

また、特定の都道府県でなくて「複数の県にまたがっても問題ない」という場合であれば、「関東エリア限定」「富山・長野・石川いずれか担当」のような求人であっても応募できるようになります。これはつまり、転職するときの選択肢が広がることを意味します。

独身ならいいですが、結婚して家族や子供がいる場合は転勤なしを考えなければいけません。そうしたとき、求人数は少ないものの、転職サイトを活用して地域限定の求人を探して応募してみてください。そうすれば、あなたが希望する地域だけでMR活動を行えるようになる可能性が高まります。


MR転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。

特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。

ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。

以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれ転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができるようになります。

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