女性MRをしていると、人生のライフステージが大きく変わる場面が表れます。それは、結婚や妊娠・出産です。結婚すれば旦那と一緒に住むことになりますし、妊娠・出産によって育児をしなければいけません。
こうした女性が心配することとして、「結婚後や育児中であってもMRとして活躍できるのか」ということがあげられます。また、妊娠をキッカケに退職したものの、主婦子持ちの状態からブランク明けの復帰を目指す人もいます。
このとき、どのように考えて女性MRは仕事を考えればいいのでしょうか。これについて確認していきます。
もくじ
結婚後であってもMRを続けることは可能
結婚を機にMRをやめる女性は多いですが、たとえ結婚後であってもMRを続けることは十分に可能です。実際、結婚後もMRを続けている女性はたくさんいます。
結婚の場合、乱暴に行ってしまえば一緒に暮らす人が一人増えるだけです。MRで働くと帰宅が遅くなったり、土日に講演会の準備をする必要があったりと忙しいですが、結婚相手が了承してくれるのであればこれまで通り働けば問題ありません。
もちろん、「結婚後であっても問題なくMRを続けられる」とはいっても、完ぺきに実現できるわけではありません。MRは全国転勤があるため、場合によっては見知らぬ土地への転勤を命じられ、結婚相手とバラバラになって暮らさなければいけなくなる可能性もあります。
そうしたときは、さすがに「MRを退職する」「他の会社へ転職する」ことをほとんどの人が考えます。
男性MRであれば、結婚していたり子供がいたりしても当然ながら転勤辞令が出されます。ただ、それを「女性MRに対して考慮してくれるかどうか」は製薬会社やCSO(コントラクトMR)によって異なります。
妊娠・出産によって子供が生まれるとほとんどの女性が退職する
それでは、結婚ではなく妊娠・出産によって子供が生まれ、育児をしなければいけなくなった場合はどうなのでしょうか。この場合、ほとんどの女性がMRを辞めていきます。
実際にMRとして周囲を見たとき、若い女性MRは存在していたとしても子持ちのママMRはほとんどいないのではないでしょうか。
私の知り合いには、一人だけママMRをしながら子育ても頑張っている40代女性がいました。ただ、その人以外には子持ちの状態でMRをしている女性を私は見たことがありません。
MRは年収が高く、有給休暇を取得しやすいので恵まれているように思えます。ただ、残業は多く土日も医師の相手をしなければいけないため、精神的なストレスが多く体力的に厳しいです。そのため、専業主婦になったり他の職業へ転職したりするのです。
子持ちの状態になると、子供の送り迎えをしないといけなかったり、夕食の準備をしたりする必要があります。旦那一人だけの場合、夕食とはいっても「勝手にご飯を食べてきて!」と言っておけば問題ありませんでした。しかし、それを自分の子供に行うわけにはいきません。
旦那が非常に優れた人であり、毎日の夕食や子供の世話をしてくれるのであれば大丈夫です。しかし、現実的にそのような人はほぼいないため、子持ちの状態でMRとしてフルタイムで働いていると家庭が崩壊してしまうのです。
育児中のママMRにとって、MRを続けていくのは容易ではありません。こうした現状から、女性MRは独身であったり、結婚していたとしても子供がいなかったりする人ばかりなのです。
MRとして働く場合、産休・育休を含め女性は外資系がお勧め
それでは、育児中の女性MRに対してまったく優遇制度が整っていないかというと、必ずしもそうではありません。産休・育休は問題なく取得できますし、旦那の転勤にあわせて同じ地域に転勤させてくれる会社も存在します。
また、育児中であってもMR活動を行えるように、「同じエリアを二人体制で活動することで時短勤務を実現している会社」もあります。
そうした会社は内資系ではなく、外資系が多いです。製薬会社の場合、外資系のほうが女性MRにとって働きやすい環境が整っているといえます。
ただ、これらの制度があったとしても育児を理由に退職していく女性MRは多いです。これは、なぜなのでしょうか。
現実として、産休・育休によって一時的に職場を離れるとなると、他の人が補充されます。このとき、1年後にあなたが復帰したとしても、補充のために来た人は困ってしまいます。既に得意先と信頼関係を築けていますし、成果も出ているからです。
そこで、MRの補充はせずにそのエリアにいる他のMRでカバーするようにしている会社もあります。つまり、あなたが産休・育休を取得することによって同僚MRの担当エリアが広がるようになります。
このとき、問題なくあなたが復帰すればいいですが、1年後に再び妊娠して産休・育休を取得するとなると、再び職場は混乱します。自分が原因で職場環境が悪くなるため、迷惑をかけないためにも結果として退職という選択をしてしまうのです。
また、時短勤務を実現できるとはいっても、時短勤務が認められるようになるためにはある程度の成果を出していなければいけません。さらに、たとえ時短勤務を実現できたとしても、MRである以上は早朝や夜にしか会えない医師も多く、時短勤務で成果を出すのは非常に難しいのが現実です。
なお、私の会社ではママMRのために時短勤務が導入されています。時短MRでは朝9:00から夕方17:00までの勤務になります。時短勤務なので病院の忘年会などには参加せず、早朝や夜でしか医師に会えない病院・クリニックを担当させないようにしています。
つまり、昼だけの活動で完結する得意先が担当になります。要は、比較的楽な得意先が担当になり、「夜も出入りして活動する必要がある得意先」など対応が難しい病院・クリニックは他の独身のMRが担当になるということです。
しかし、やはり時短MRで大きな成果を出している人はいません。ある程度の成績を残す人はいるものの、それでも「ボチボチの成績」というのが実情です。
コントラクトMR(CSO)や本社スタッフとして異動する
会社によってはこうした時短制度はあるものの、MRを続けられないことを悟った時点で「退職して主婦になる」「転職して異業種で頑張る」「本社スタッフとして内勤への異動をお願いする」などを考えるようになります。
このうち、主婦などにはならず本社スタッフとして働きたい場合、早めに転職をするなど戦略を練らなければいけません。
内資系や外資系に限らず、本社スタッフとして働くのはハードルが高いです。限られた人しか本社勤務は実現できません。ただ、同じMRであってもCSO(コントラクトMR)であれば、本社スタッフに異動しやすくなります。
そこで結婚前や妊娠・出産前に製薬会社からCSOのコントラクトMRとして早めに転職しておき、実際に子持ちMRになったときに内勤職へ異動するという手法も存在します。
CSO(コントラクトMR)の場合は転勤なしを実現しやすいため、これについても女性MRがコントラクトMRの求人募集へ応募し、転職する理由になっています。
MRがパート・派遣を行うことはできるのか
ここまで述べてきた通り、MRが働くときは基本的にフルタイムでの勤務となります。単純にそのようにして働かなければ成果を出すのが難しいからです。そのため、MRの求人でパートや派遣の案件は存在しません。
CSOのコントラクトMRは製薬会社からの要請を受け、MRを派遣する業務ですが、コントラクトMR自体はCSOの正社員です。CSOの正社員として製薬会社に派遣されるため、その中身は世間で考えられている不安定な派遣ではなく、雇用が守られた状態での派遣になります。
正社員である以上は他のMRと同じように残業ありのフルタイムで働かなければいけません。
こうしたことから、パートや(世間一般的な)派遣のMRの求人は存在しません。パートMRや派遣MRとして、製薬会社やCSOで残業なしや時短勤務を実現しながら勤務することはできないのです。
ワクチンMRは例外的に最初から時短勤務が認められている
ただ、中には例外的に育児経験のある女性MRが重宝される分野があります。それは、ワクチンMRです。
ワクチンMRの場合、時短勤務ありの求人が出されます。求人にも「育児経験のある女性MRを望む」と書かれており、育児中であったり子持ち主婦であったりする女性がMRとして活躍するときに重要となる求人だといえます。
ワクチン接種が必要になるのは主に赤ちゃん・幼児のときです。ワクチンの同時接種を行い、次のワクチン接種を打つ間隔を考える必要があります。このとき子供が病気にかかれば、ワクチンを接種できなくなるのでスケジュール調整が必要になります。
こうしたことを経験している女性だからこそ、男性MRよりも育児の実体験に基づいた質の高い情報を医師に提供できるのです。
ワクチンMRでは育児経験ありの女性を積極的に採用するため、MRであってもこのような時短勤務制度を採用しています。以下では、実際に出された求人を記します。
求人票にある通り、育児経験のある人が歓迎されています。契約社員ではありますが就業時間は6時間であり、ワクチン領域のMRとして時短勤務を実現しながら問題なく働くことができます。
注意点として、こうしたワクチンMRの求人数は非常に少ないことがあげられます。そのため、早めに転職サイト(転職エージェント)に登録しておくなど、いつ出るか分からない求人に備えておく必要があります。
子持ち主婦が復帰するには
なお、中には子持ち主婦であり現在MRから離れている人がいます。そうした人がMRとして復帰する場合、どのようなことを考えればいいのでしょうか。
前述の通り、パートMRや派遣MRとして「特定の時間や曜日だけ働ける」というMR求人は存在しません。また、ワクチンMRの求人は数が少なく全員が採用されるわけではありません。
そのため、結婚後や育児中などでブランクのある女性がMRとして復帰する場合、それなりの覚悟が必要です。
ただ、MRは非常に年収が高いですし、有給休暇を取りやすいことは他にはない有利な点です。土日を含めフルタイムで働くこと以外は優れているといえます。たとえ子供が病気に罹ったとしても、MRであればいつでも有給休暇を取得して看病することができます。
MRに復帰する場合、まずはMR認定資格の期限が切れていないかを確認しましょう。MR認定資格は期限が5年なので、いつの間にか失効していたという事態が考えられます。経験者MRとして転職する場合、MR認定資格は必須です。
そして、ブランクの期間は短いほどいいです。ブランク2年であれば許容範囲であり、ブランク3年は微妙になり、ブランク4年以上では転職が非常に難しくなります。
そうした場合、CSO(コントラクトMR)を目指したり未経験MR募集にチャレンジしてみたりすれば、より確実にMRとして復帰できるようになります。
MR以外の職業を考える
ただ、実際のところMR以外の異業種を目指す女性MRは多いです。そこで、どのような求人へ応募し、転職する人が多いのかについて確認していきます。
MR以外の職業へ転職するときの注意点としては、ほぼ確実に年収が下がるということです。ただ、それでもMRから異業種へ転職する人は多いため、どのような求人が存在するのか確認しておくといいです。
学術DI・コールセンター
製薬会社やCSOは医師や薬剤師からの問い合わせを受けたり、MRからの質問に対して返答したりする学術部門をもっています。このうち、電話での問い合わせを受けるコールセンターがあります。
ただ、電話をかけてくるのは一般顧客ではなく、医師や薬剤師、自社MRなど専門性の高い人です。そのため、専門的な知識をもった人でなければ対応できません。こうしたとき、現場でのMR経験のある人は重宝されます。
会社によっては「予約制のコールセンター」なのでストレスが少なかったり、土日休みで残業なしを実現できたりするなど、子持ち女性であっても問題なく育児を行える体制が整えられています。
以下では、実際の求人を載せます。
DIコールセンターでのデスクワークであり、残業なしを実現できる求人です。MR経験を活かしながら、結婚後や妊娠・出産後も女性として長く働きたい場合に向いています。
一般的には、MR経験が2年以上なければ転職は難しいです。ただ、この求人ではMR経験が1年以上あれば転職することができます。
CRA(臨床開発モニター)
MRから異業種を目指すとき、女性に人気の職種としてCRA(臨床開発モニター)があります。治験に携わることによって、医薬品開発に貢献するのです。
CRAは女性比率が高く、これは子持ち女性であったとしても問題なく働ける環境が整っているからです。そのため、MRからCRAを目指す女性はたくさんいます。以下では、実際に出された東京でのCRAの求人を記します。
CRA(臨床開発モニター)へ応募する場合、理系でなければ受け入れてもらえません。ただ、MR経験者の場合は例外的に文系大学の出身者であっても応募できます。
MRとは異なり、CRAでは英語力が要求されます。必ず英語が必要だというわけではないものの、国際共同治験など英語力があると重宝されます。
また、CRAへの転職を目指す場合、できれば20代が望ましいです。30代では難しくなり、35歳を過ぎると転職はほぼ不可能になります。そのため、早めに転職を検討しなければいけません。
なお、病院側の治験を支援するCRC(治験コーディネーター)へ転職するという方法もあります。CRCよりもCRAの方が難易度は高いため、CRAが難しい場合はCRCを目指しても問題ありません。
その他の異業種を目指す
MRとしての経験があれば、上記に挙げた業界以外を目指しても問題ありません。例えば医療関連分野としては医療機器メーカーや検査薬、消毒薬などがあります。会社によっては、MRのようにフルタイムで働かなくてよく、家庭との両立を実現できることがあります。
MRの教育、生命保険の営業、キャリアアドバイザーなど意外とMRとしての経験を活かせる職種はたくさんあるため、どのような求人が存在するのかを確認するようにしましょう。
このとき、「会社に在籍する女性の割合がどれくらいなのか」ではなく、「育児中のママがどれだけいるのか」を基準に求人を確認するといいです。
どれだけ会社の女性比率が高かったとしても、子供のいない未婚女性ばかりいる会社では意味がありません。そうではなく、育児中の女性がどれだけ在籍しているのかによって、その会社での女性の働きやすさを測ることができます。
結婚後や育児中でも仕事を続ける秘訣を知る
ここまで、「結婚後や主婦子持ちの女性がMRとして働き続けることは可能か」について解説してきました。
単に結婚しただけであれば、転勤さえなければ問題なくMRを続けることができます。ただ、妊娠・出産によって育児をしなければいけない場合、現実的にMRを続けるのは難しくなります。
時短勤務によるMR活動であっても難しいと判断した場合、「退職して主婦になる」「異業種へ転職する」「内勤への異動を目指す」などの選択に迫られます。
このうち仕事を続けたい場合は早めに対策を練るようにしましょう。転職で異業種へ移る場合、20代など年齢が若いほど成功しやすいです。
また、内勤への異動を目指すとはいっても、いまの会社で実現できるかを考えなければいけません。そこで、内勤へ異動しやすい会社へ先に転職し、キャリアを積んだ方が良いケースはたくさんあります。
そして重要なのは、「勤務地限定を実現できるMR求人」「MRから異業種へ転職できる求人」「コールセンターやワクチンMRなど、残業なしで働ける求人」は非常に少ないという事実です。
そこで、ワクチンMRの項目でも述べた通り、早めに転職サイト(転職エージェント)に登録するようにしましょう。転職エージェント側に希望条件を伝えておき、求人が出たときに早めに教えてもらうようにするのです。
MRの経験が他の業界でも活かせるのは事実です。ただ、そうした求人が存在しなければ応募できません。しかも年齢が若いときであるほど転職に成功しやすいことを考えたとき、早めに行動することで将来の人生プランをより良いものにできます。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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