医師に薬の説明を行う専門性の高い職種としてMRがあります。その中でも、ワクチン領域に特化したMRとしてワクチンMRが存在します。

ワクチンMRは特に女性から重宝されます。女性の中でも、育児経験のある女性MRは転職で有利になりやすいのです。ワクチン接種は主に赤ちゃんに対して行われるため、育児経験のある女性は医師に対して自信をもって説明することができるからです。

ただ、ワクチンMRとして転職したいとき、求人はどのように確認すればいいのでしょうか。当然ながら、プライマリー・ケア領域に比べてワクチンMRの求人は少ないです。ただ、方法によっては求人を見つけることができます。

なぜ、ワクチンが必要なのか

医薬品の中でも、なぜかワクチンは薬害について問題になりやすいです。「インフルエンザワクチンは効かない」「ワクチンによって副作用が表れる」などのようにいわれやすいです。

ただ、ワクチンMRを目指す以上はワクチンの歴史や活用実態を含め、詳しく知っておく必要があります。特にワクチンMRへの転職を目指すのであれば、以下の知識や歴史を知ることは必須だといえます。

ワクチン後進国だった日本

かつて、日本はワクチン後進国といわれていました。世界では当たり前のように使われていたワクチンですが、日本ではほとんど承認されていなかったのです。

こうした背景としては、「以前のワクチンには、品質に大きな問題があった」ことが挙げられます。

例えば1948年には、京都と島根でジフテリア事件が起こりました。ジフテリアの予防接種を受けた子供に異常が起こり、多数の死者が出たのです。このときは京都で68人、島根で15人もの方がワクチンによる副作用が原因で死亡したといわれています。

ジフテリアワクチンはトキソイドと呼ばれ、トキシン(毒)を無毒化したワクチンです。ただ、毒を無毒化するということは、無毒化が不十分であると実際にジフテリア毒素によって症状を発症することになります。要は、ワクチンによってジフテリア症状を引き起こしてしまうのです。

こうして起きた薬害事件が京都・島根ジフテリア事件です。

また、麻しん(はしか)、おたふくかぜ、風疹の3つが混合されたMMRワクチンによっても薬害事件が起こりました。MMRワクチンを接種することによって、無菌性髄膜炎の副作用が高頻度で起こるようになったのです。

これを受け、1989年から活用されるようになったMMRワクチンは4年で製造中止となりました。

感染症が蔓延していた日本

こうした事件を受け、日本ではワクチンの集団予防接種が中止になった時期がありました。集団予防接種から勧奨個別接種に切り替わり、強制的なワクチン接種が任意になったのです。

その結果、ワクチン接種を受けていない子供が成人した結果、2000年以降に感染症が蔓延するようになりました。麻しん(はしか)や風疹による集団感染が日本で何度も起こるようになったのです。

同じ2000年のとき、アメリカでは麻しん(はしか)の排除に成功していました。しかし、日本では麻しんが流行しており、日本は感染症輸出国といわれるほどでした。

海外では当たり前のように使われていたワクチンが使用されていないことによる弊害は他にもありました。

例えば、赤ちゃんはポリオの予防接種を受けます。ただ、当時の日本では不活化ポリオワクチンが承認されてなく、生ポリオワクチンが活用されていました。

生ポリオワクチンでは、弱らせてはいるが生きたポリオウイルスを用います。そのため、ワクチンによってポリオを発症してしまい、重篤な障害を残してしまうケースがありました。一方、不活化ポリオワクチンの場合、死滅させたポリオウイルスを用いるのでポリオ発症のリスクはゼロです。

しかし、こうしたワクチンであっても日本では使われていませんでした。

そうした中、2008年以降から日本でも徐々にワクチンが承認されて扱えるようになってきました。ワクチンの重要性が認められ、ようやく日本でもワクチン接種が盛んになってきたのです。

ワクチンは効くのか

重要な問題として、実際のところ「ワクチンは効くのか?」という疑念があります。結論をいえば、ワクチンは強力な効果を発揮します。

大昔、人類を悩ませていた感染症として天然痘(てんねんとう)があげられます。天然痘は天然痘ウイルスによって引き起こされますが、「人間だけに感染し、他の動物などには感染しない」という特徴があります。

そこで、天然痘ウイルスに対する予防接種が広まった結果、現在では天然痘を撲滅することに成功しています。いまでは天然痘の患者は世界中でゼロです。また、麻しんウイルスは天然痘と似た性質をもっており、撲滅可能だといわれています。

ワクチン接種のスケジュールが大変

感染症を予防するときに大きな効果を発揮するワクチンですが、前述の通りワクチンを接種するのは主に年齢の小さい子どもです。赤ちゃんのときを含め、計画的にワクチン接種を実施する必要があるのです。

ワクチンには、種類によって接種期間や時期が異なります。「初回接種から3ヶ月後に2回目の追加接種をする」「生後2~3ヵ月からワクチンを開始するべき」など、ワクチンによって使い方が違ってくるのです。

また、年齢の小さいときは多くのワクチン接種が必要のため、同時接種が基本です。このとき、ワクチンMRは「他のワクチンと同時に活用しても問題ないのか」など、医師に対して適切に情報提供を実施しなければいけません。

自社製品のワクチン単独で用いることはほとんどないため、他社製品についても学ぶ必要があります。

それだけでなく、接種間隔も重要です。ワクチンを接種したあと、生ワクチンの場合、4週間(28日)は次のワクチン接種を控えるように要請されています。これが不活化ワクチンやトキソイドワクチンの場合、次のワクチン接種までに1週間(7日)は空けるようにいわれています。

しかも、子供はいつも体調が良いとは限りません。風邪をひいているとき、予防接種を受けさせることは困難です。

そうしたとき、「ワクチンの接種間隔はいつまであけても問題ないのか」「次回の摂取時期はどのように設定すればいいのか」などを含め、さまざまな疑問が出てきます。こうしたとき、ワクチンMRからの情報提供が役に立ちます。

育児経験ありの女性MRがワクチンMRに重宝されやすい

こうした赤ちゃんのワクチン接種に関するタイムスケジュールを管理し、実際に育児をしながら子供の面倒をみる人は多くの場合で女性です。そのため、育児中の女性であればワクチン接種のスケジュール調整がどれほど大変であり、子供に対してどのように接すればいいのかに関する実体験があります。

こうした理由から、ワクチン領域のMRでは育児経験のある女性が重宝されます。ワクチンMRの求人票についても、「育児経験によりワクチンの重要性を理解している女性を望む」と明記されているケースがあるほどです。

育児の分野については、男性MRでは分からないことが多いです。そこで女性がワクチンMRとして情報提供すれば、より実体験に基づいた医薬品情報の提供を行えるようになります。

ワクチンMRは時短勤務を実現できる

ただ、育児経験のある女性MRが復帰するとなると、その実現は現実的には非常に難しいです。MRは全国転勤ありが基本であり、早朝の卸訪問や夜の講演会を含め、フルタイムで働くことがほとんどです。残業時間も長いです。そのため、結婚後にMRを続けていた人であっても、妊娠・出産を機にほとんどの人が辞めていきます。

育児経験後にMRで復帰するとなると家庭との両立がうまくできません。毎日長時間の残業を行い、土日であっても講演会の準備を行うとなると、育児どころではないからです。

ただ、ワクチンMRでは育児経験のある女性を求めていることから、MRでは珍しい時短勤務を実現できる求人が出されています。

一般的にMRが時短勤務をしたとしても、大きな成果を出すことはできませんし同僚に迷惑をかけることがほとんどです。そのため、時短勤務の求人が出されることはありません。

しかし、ワクチンMRの場合は最初から時短勤務の求人が提示されます。これは、たとえ時短勤務であったとしても、育児経験のある女性MRのほうが男性MRよりも大きな成果を出すことができるからです。プライマリー・ケア領域とは異なり、ワクチン領域では育児経験が非常に重要なのです。

そのため、例外的にワクチン領域では育児経験ありの女性MRを積極的に採用するため、時短勤務の求人募集が出されます。例えば、以下のような求人になります。

MRとしての活動時間が1日6時間の求人募集です。契約社員という雇用形態ではあるものの、自宅から60分以内の営業所で働くことになります。つまり、時短勤務だけでなく勤務地限定で働くことができます。

「育児経験がある方は歓迎」とありますが、実際のところ男性MRがこのような求人へ応募しても書類選考や面接を通過することはありません。求めている人は育児経験ありの女性であるため、そうした該当者であれば採用されやすいです。

ブランクありの状態から素早くMR復帰するべき理由

ただ、育児を経験している女性ということは、必然的にMRとしてのキャリアにブランクがあることを意味します。

産休は必ず取得しなければならず、企業側も「出産後8週間は女性を働かせてはいけない」と法律で定められています。また、実際のところ前述の通り妊娠・出産によってほとんどの女性MRが退職していきます。

このとき、出産を機に会社を辞めたものの、MRとして復帰することを考える人の場合、ブランクの期間は2年以内に収めるようにしましょう。

2年以内のブランクであれば許容範囲であり、3年のブランクは微妙です。4~5年のブランクでは、MRとしてほぼ復帰できなくなります。MRとして復帰するとき、MR認定資格が必須です。MR認定資格は5年が有効期間であるため、期限が切れていないかどうか確認しなければいけません。

ワクチンMRが認識すべき活動内容

それでは、実際にワクチンMRとして活躍するときはどのような点に注意すればいいのでしょうか。

一般的な医薬品とは異なり、ワクチンには独特の特徴があります。そのため、ワクチンMRとして転職して活躍する前に、どのような点に注意すればいいのかについてあらかじめ理解しておくことが重要です。

ワクチンでは副作用情報がクローズアップされやすい

飲み薬を含め、一般的な医薬品に比べるとワクチンは副作用がクローズアップされやすいです。もちろん抗がん剤ほどの副作用はないものの、副作用に注意した上で情報提供しなければいけません。

例えば、子宮頸がんワクチンとしてはサーバリックやガーダシルが知られています。これらのワクチンを接種することによって、将来の子宮頸がんを予防しようとするのです。

ただ、子宮頸がんワクチンが発売されて多くの女性に接種されるようになったあと、運動障害などの副作用が多数報告されるようになりました。副作用の発生率はインフルエンザワクチンの10倍ともいわれ、そうした結果を受けて「積極的な勧奨接種を見合わせる」ことになりました。

こうしたワクチン事情はあるものの、「学会ではどのような見解になっているのか」「海外で行われている試験では、どのような結果になっているのか」などを含めて情報提供すれば、医師を通じて患者さんに「ワクチン接種をしても問題ない」ことを説明してもらえるようになります。

工夫して医師に説明することで、ワクチンMRとして自社製品を多く活用してもらえるようになることは可能です。

「自分自身のことは我慢できても、子供に薬の副作用が出たら我慢できない気持ちになる」ことについて、育児経験のある女性ならよく理解できると思います。そうした気持ちに配慮しつつも、ワクチンを普及できるように努力していくのです。

医薬品卸と協力して品切れに注意する

また、ワクチンの性質上、品切れを起こしやすいです。製造までに時間がかかり、保存期間も短く、さらには冷蔵によって運ばなければいけません。特に冬になると、毎年のようにインフルエンザワクチンが品切れになり、物流制限がかけられます。

こうしたワクチン事情があるため、物流に深く関与する医薬品卸MSと協力しなければいけません。

製品供給が不安定になると、当然ながら医療機関からクレームがきます。しかも、ワクチンでは接種期間が定められていることが多く、品切れは非常に大きな問題です。

ワクチンMRの場合、小児科や産婦人科の病院・クリニックを回るのが基本ですが、製造が不安定であると結果的に患者さんに迷惑をかけてしまいます。そのため、MSと協力することで安定供給に努めることも重要な仕事です。

育児経験を活かし、ワクチンMRとして活躍する

女性MRにとって出産や育児は、MRを続けるうえで大きなハンデになります。ただ、例外的にワクチンMRだけは女性MRの方が優遇されます。実際の育児経験がMR活動に対して大いに役立つからです。

このとき、例えば時短勤務MRを行う場合、既にお世話になった病院やクリニックへ出向いてMR活動をする可能性もあります。そのため、育児中にお世話になった小児科や産婦人科であれば、医師の顔もわかり営業活動しやすいです。

また、子供は頻繁に病気に罹るため、病院やクリニックへの受診をキッカケにして医師の先生と信頼関係を築いても問題ありません。赤ちゃんや小児へのワクチン接種を積極的に行う医療機関は限られているため、担当する多くの医療機関のお客様(患者さん)になることも可能です。

いずれにしても、育児経験のある女性であるほどワクチンMRに向いています。ブランクあけのMR復帰を含め、ワクチンMRの求人募集を探し、転職することも頭の中に入れておくといいです。


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