これから転職活動を行うとき、必ず必要になる提出書類として履歴書の他に職務経歴書があります。それでは、職務経歴書とは何なのでしょうか。特に転職が初めての人の場合、職務経歴書を作成したことがないので、これが何なのかよく分からないと思います。
新卒での就職活動に存在しないものが職務経歴書です。そのため、キャリア採用での転職のときに初めて職務経歴書の存在を知る人がほとんどです。
実は職務経歴書を作りこむことによって、求人先に対して適切な自己PRを行えるようになるのです。そこで、書類選考に通過するために必要な職務経歴書の書き方やその意味について解説していきます。
もくじ
職務経歴書の役割
そもそも、なぜ職務経歴書が必要になるのでしょうか。これは、履歴書だけではあなたが保有しているスキルや経験が分からないからです。
実際のところ、履歴書に「東京営業所でMRとして勤務」と書かれていたとしても、「達成率はどれくらいなのか」「どのようなプロセスで成果を出したのか」が分かりません。そこで、職務経歴書を用いることによって「どのような仕事を行い、経験を積んできたのか」を詳細に記すのです。
要は、履歴書だけでは不十分なため、職務経歴書が必要になるのです。
新卒採用の場合、学生時代のことを履歴書などで述べるだけで十分です。ただ中途採用となると、社会人としてそれまでのスキルや経験が重視されるため、詳細な仕事内容を把握する書類が必要になります。そのための職務経歴書なのです。
もちろん、仕事内容について面接ですべてを伝えることができれば問題ありません。ただ、現実的には面接だけで話すのは難しいですし、面接官に事前知識を与えていない状態で完璧な自己PRを行うのは無理です。
そこで、どのような成果を出し、求人先の会社に対して貢献できるのかを職務経歴書で伝えるようにしましょう。
職務経歴書の書き方を見本・サンプルから学ぶ
それでは、どのようにして職務経歴書を書けばいいのでしょうか。以下で職務経歴書の見本・サンプルを提示するため、それを参考にして自分オリジナルの職務経歴書を作るようにしてください。
特にMRを含め営業職の場合、必ず数字(どれだけの成果を出したのか)がチェックされます。そのため、達成率や予算などの実績だけでなく、営業所内での成績を含め具体的に提示できる場合は積極的に記すようにしましょう。
さらに、担当エリアや在籍期間、取り扱った医薬品などを記すとより具体的な職務経歴書になります。以下に職務経歴書の見本を提示します。
職務経歴書 ○○年○月○日 氏名:○○○○ ○○○○ 職務概要 大学卒業後に株式会社□□薬品へ入社した後、東京第三営業所に所属し、江戸川区エリアのMRとして開業医を広く担当。3つの新薬上市に関わる。その後、免疫領域専門MRとして株式会社△△製薬にて大阪第二営業所に所属し、大学病院・基幹病院をメインに活動する。 職務経歴
保有資格 ○○年○○月 普通自動車免許 自己PR 大阪では大学病院や基幹病院の医師に対して、いち早く最新の知見を得られるように自ら英語で情報収集し、治療法などを情報提供するようにしました。自社製品の紹介を後回しにして、そうして医師の求める情報だけを届ける営業法を実施していました。 また、取り扱いの難しいリウマチ治療薬がメイン商品であったため、リウマチ専門医だけの月1回の勉強会を発足。結果的に自らの担当エリアではなく、口コミだけで毎回15人以上の医師が集まる垣根を超えた会の構築に成功しています。 東京で開業医を担当していたときも同様であり、「自社製品の適応がないため、他社製品を活用した方が良い」と判断した方が患者さんにメリットがある場合、そちらを紹介することがあります。 ただ、それが結果として信頼されるMRにつながり、常に達成率を上回ることができました。私の営業スタイルは「顧客(医師・薬剤師など)が何を求めているのかを考え、その先にいる患者さんへ貢献するにはどうすればいいのか」を最優先させることです。時間はかかりますし最初は結果が出にくいものの、そうすれば必ず成果が後でついてくるようになります。 |
このようにして、職務経歴書を仕上げていきます。今回の職務経歴書の例文(見本)については、以下からダウンロードできるようにしています。職務経歴書の資料サンプルについて、自分用にアレンジしてみてください。
・職務経歴書の見本(テンプレート)をダウンロードする:Wordファイル
なお、職務経歴書を作るときは事前に考えなければいけないことがあります。それは、自分自身の経験についてです。
スキル・経験を深く振り返るべき理由
いくら職務経歴書の書き方を理解し、見本・サンプルから例文を学んだとしても、当然ながらそれを自分オリジナルの内容に仕上げなければいけません。そのためには、過去の自分が経験してきた内容から、どのようなスキルがあり、成果を出してきたのかを振り返らなければいけません。
この過程がなければ、当然ながら良い職務経歴書を作成できません。また、その後の面接で深く突っ込まれたとき、返答に困ってしまいます。
そこで過去の実績や成果については、予算・売上・達成率について詳細に記すようにしましょう。また、過去の受賞歴やどのようなプロセスで成果を出してきたのかを考えるのです。
履歴書・職務経歴書による書類選考だけでなく、面接にも共通しますが、面接官はこれまで出してきた実績に対して「自分の会社に採用されたとしても、同じように成果を出せるか」という再現性について確認します。そのため、成果を出すまでのプロセスも重視されるのです。
これは、MRとして未経験分野(医療機器メーカーやCRAなど)へ挑戦するときであっても同様です。MRとしての経験をどのように活用できるのか、求人先の面接官にイメージが伝わる内容に仕上げることを意識しましょう。
自己PRは非常に重要な項目になる
そういう意味では、自己PRの欄はとても大切です。それまでの実績を職務経歴書で述べますが、それらをどのように達成したのかを解説するのが自己PRです。
自己PRでは、「求人先の会社へ転職しても問題なく同じように成果を出せる」ことを述べましょう。
そのためには、自分の強みや営業スタイルを理解する必要があります。例えば学術分野に強い人であれば、大学病院や基幹病院が得意です。一方、自分の人間性を売り込むのが得意な場合、大病院よりも開業医担当の方が成果を出せます。
こうした自分独自の強みや営業方法から、どのようにして成果につながったのかを分析するのです。そうすれば、職務経歴書で再現性を述べることができるだけなく、面接で聞かれたときであってもスムーズに回答できるようになります。
このとき、できるだけ詳細な自己PRにしましょう。抽象的なことを述べるのではなく、実際に行ったことを詳しく提示するのです。例えば、以下のようになります。
担当領域がリウマチ領域であったため、実際にリウマチ患者が集まる会へ出席して話を聞き、医師や患者さんが困っていることを把握した上で医師に情報提供するようにしました。 現場から吸い上げた声を拾ったうえでの提案だったため、医師との会話はスムーズですぐに新規処方へつなげることができました。 |
SOV(シェアオブボイス)を広げるため、協力的な医薬品卸MSと積極的に打ち合わせを行い、どのように製品説明をすれば良い提案につなげることができるかをレクチャーすることにしました。このときは製品の特徴や優位点について説明し、医師の先生ごとに気を付けるべきポイントまで解説していきます。 そうすることによって、私が営業しなくてもMSから開業医の先生へ効果的に製品をアピールできるようになりました。結果として、この手法で開業医については常に達成率前年比110%を上回ることができました。 |
明らかな成果がある場合、「前年比138%を達成」「社長賞を受賞」などまで自己PRに入れれば問題ありません。
ただ、そうした輝かしい実績がない場合であっても、先に示した「リウマチ患者が集まる会に出席し、患者さんの声という現場目線で情報提供した」などのように、その人独自の視点で行った手法を具体的に記せば問題ありません。
具体的なエピソードを記載するほど、再現性の高い方法だと認識してくれます。いくら良い数字を並べても、内容が抽象的では「再現性があるのかどうか」を採用担当者は判断できません。そこで、例文のようにできるだけ詳細に記入するといいです。
職務経歴書を書くときのポイント
それでは、実際に職務経歴書を書くときはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。
職務経歴書の書き方について、特に決まったルールがあるわけではありません。ただ、以下のポイントについて注意しておくといいです。
A4用紙2~3枚で簡潔にまとめる
職歴の長い人の場合、書こうと思えばいくらでも職務経歴書に記載することができます。ただ、職務経歴書は簡潔にまとめるようにしましょう。
可能ならA4用紙2枚が理想です。職歴が長かったり、何度も転職していたりする人はどうしても長くなりますが、その場合でもA4用紙3枚以内におさえましょう。
面接官にとって「どのような職歴があり、成果を出しているのかをすぐに把握できる書類」が好印象です。職務経歴書が何枚も続き、何がいいたいのかよく分からない書類では当然ながら印象が悪いです。そうではなく、「言いたいことだけが少ない枚数でまとまっている書類」のほうが選考に通過します。
このとき、手書きではなくパソコンを用いて職務経歴書を完成させましょう。履歴書は手書きの方が好印象です。一方で職務経歴書では文字量が多くなるため、見やすさの方が重視されます。
当然、文字の大きさやフォントを含めた見やすさまで書類選考の対象になります。MRでは相手に分かりやすく伝えるプレゼン技術が必須であるため、「どれだけ相手が理解しやすい書類に仕上げることができるか」が重要になるのです。
職務経歴書の内容を応募企業ごとに変える
また、実際に転職活動を行うときは何社もの会社の求人へ応募するのが一般的です。このとき、職務経歴書がすべて同じ内容になっている人は多いです。
ただ、「どの会社であっても通じる内容」の書類になってしまうと、採用担当者としては「なぜ自社に応募したのか分からない」と考え、書類選考に通過しない可能性が高くなります。そこで、職務経歴書の内容を応募企業ごとに変えましょう。
もちろん、「職務経歴」の部分についてはどれも同じです。そこで、「自己PR」の内容を求人先の会社によって変更するのです。
例えば、プライマリー・ケア領域のMR求人を出している会社であれば、「医薬品卸MSとの協力」「講演会の主催」などを自己PRとして記載するといいかもしれません。」
一方でオンコロジー(抗がん剤領域)や生物学的製剤などの医薬品を取り扱う求人であれば、大学病院や基幹病院が相手になります。この場合、「症例ベースでのプロモーション」「研究会の発足」「最新論文の知見を用いた情報提供」による成果を自己PRとして記載するといいです。
同様に「MRとしての経験を活かし、CRAなど未経験分野へチャレンジするとき」「MR未経験者がMRを目指すとき」であっても同じように、「相手が何を求めているのか」を考えながら職務経歴書に記載していきます。
MRとして活動するとき、「医師が何を求めているのか」などを考慮しながら営業を進めていきます。これと同じことを転職活動でも実施すれば問題ありません。
転職回数が多い人の対処法
なお、中には転職回数の多い人がいます。この場合、職務経歴書はどのように記載すればいいのでしょうか。また、転職回数が多くなることによって転職が不利になることはないのでしょうか。
結論をいえば、転職回数が増えるほど転職で不利になります。一般的には、20代であれば転職2回(合計3社)を経験している人は転職が難しくなります。30代であっても、転職回数が3回(合計4社)以上の人は厳しくなります。
この場合、中には「いくつか転職履歴を省き、転職回数を少なく見せても問題ないのか」と考える人がいます。ただ、そうしたことはせずに正確な情報を必ず載せるようにしましょう。
虚偽の履歴書や職務経歴書を作成し、結果として採用になったとしても、後でウソが公になったときにはどのような処罰を受けても文句をいえません。職場での信用を失い、最悪の場合は解雇される恐れがあります。
そこで、転職回数の多い人はそのことを長所にして述べるようにしましょう。転職回数が多いということは、それだけ多くの現場を経験していることを意味します。会社ごとの営業スタイルや評価制度を含め、どのような方法が自分に合っており、成果を出しやすいのかを他のMRよりも把握しているはずです。
こうしたことを武器にして志望動機や転職理由(退職理由)として述べ、自分独自の強みとして自己PRにつなげるのです。伝え方によっては、転職回数の多さがアピールポイントになります。
ちなみに、たとえ転職回数が少なかったとしても、「6ヵ月前に転職したばかりであり、短期での転職を目指す人」など、会社への在籍期間が短い人も転職では不利になります。このときも同様に転職理由をしっかりと考えるようにしましょう。
書類選考に通過する職務経歴書を作成する
求人先の会社(製薬会社、CSO、その他メーカーなど)から内定をもらうためには、履歴書や職務経歴書を含めた書類選考に通過することが第一です。
また、面接では履歴書や職務経歴書の内容をもとに話が進んでいきます。そこで、あなたにどのような強みがあり、それを求人先の会社でどのように活かせるのかを面接で示すためにも、しっかりと自分自身のスキルや経歴を振り返るようにしましょう。
そのためには、ここで記した見本・サンプルなども活用しながら、自分オリジナルの職務経歴書に仕上げてください。
履歴書と同じように、職務経歴書はあなたを売り込むために必要なツールの一つです。さらに、内定を勝ち取れるかどうかに大きく響くだけでなく、職務経歴書は「どれくらいの年収を引き出せるか」などの条件交渉にも関わってきます。
こうした事実を認識すれば、職務経歴書の内容を洗練させることの重要性を理解できるようになります。
具体的なエピソードを盛り込み、「他のMRが行っていない自分オリジナルの営業方法として何を行ったのか」を考えてみてください。このとき、求人先の会社が求めていることに照らし合わせて職務経歴書を仕上げると、より採用確率が上がるようになります。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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