患者数が少ないものの、医薬品としての必要性が高い薬としてオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)があります。MRとして転職するとき、オーファンドラッグMRとして活躍することも視野にいれるといいです。実際、オーファンドラッグのMR求人は存在します。

オーファンドラッグはオンコロジー(抗がん剤領域)と同様に高い専門性を必要とします。担当は大学病院や基幹病院になり、MRとしてキャリアを積むことができます。

そこで、「どのようにしてオーファンドラッグメーカーの求人に応募すればいいのか」について、希少疾病医薬品の役割と共に確認していきます。

オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の有効性

まず、オーファンドラッグとは何なのでしょうか。別名で希少疾病医薬品とも呼ばれますが、一般的には治療が困難な難病患者のための医薬品を指します。

こうした難病では、患者さんの数が少なく治療ニーズが高いです。ただ、たとえニーズが高くても患者数が少ないという理由から、かつては大手製薬会社が参入することがほとんどなかった領域でもあります。

オーファンドラッグの定義としては、以下のようなものがあります。

  • 対象患者数が5万人未満
  • 医療上の必要性が高い
  • 代替する適切な医薬品や治療方法がない

糖尿病や高血圧などの生活習慣病の場合、非常に多くの患者さんが存在します。そのため、一つの医薬品を開発できれば莫大な利益を生み出すことができます。そのため、大手製薬会社はこうした大きな利益を生み出す薬の開発に積極的です。

一方で難病患者は対象者数が少ないため、どれだけ医薬品を開発したとしても生み出す利益額は少ないです。そのため、医療上の必要性が高かかったとしても積極的には薬が開発されてきませんでした。

しかし、現在では中堅製薬会社に限らず、大手製薬会社であってもオーファンドラッグの開発を積極的に行っています。

オーファンドラッグは承認されやすい

糖尿病を含め、既に多くの治療薬が存在する分野で医薬品開発を行おうとするとき、非常に多くの労力を必要とします。臨床試験のために数多くの治験患者を集めなければいけませんし、副作用の疑いがあれば治験がストップしてしまいます。また、何年もの時間をかけて臨床試験を行わなければいけません。

創薬に成功すると利益は大きいものの、新薬を市場に出すのは非常に難しいのです。

一方でオーファンドラッグであれば、そもそも薬が少なく患者さんは医薬品が世の中に出てくることを強く望んでいます。そのため、生活習慣病の薬を開発するときに比べると、開発期間や難易度、承認申請のスピードを含めオーファンドラッグはかなり優遇されます。

要は、オーファンドラッグでは新薬の開発に成功しやすいのです。

儲かるようになったオーファンドラッグ

それでは、オーファンドラッグはまったく儲からないのかといういと、必ずしもそうではありません。オーファンドラッグではあるものの、大きな利益をもたらしている薬は存在します。

例えば、慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬としてグリベック(一般名:イマチニブ)が知られています。

慢性骨髄性白血病の新規患者は毎年1,000人ほどであり、10年後の死亡率は100%といわれていました。そのため、慢性骨髄性白血病は非常に治療ニーズの高い分野だったといえます。

そこで、グリベック(一般名:イマチニブ)が登場しました。グリベックは慢性骨髄性白血病の治療法を一変させ、それまで死の病気だと考えられてきた白血病を寛解へと導くことに成功しました。

グリベックは非常に高価な薬であり、発売された当初は薬価だけで月37万円以上する薬でした。これを一生の飲み続けることを考えると、たとえ患者数が少なかったとしてもかなりの利益を生み出す薬へと成長したのです。

このように、たとえオーファンドラッグであったとしても製薬会社に大きな利益をもたらすケースは存在します。

例えば、オーファンドラッグを開発して月の薬剤費が20万円だとします。このとき、患者数が1万人であれば「月20万円×12ヵ月×1万人=年間240億円」の売上になります。これが世界中で発売されるとなると、莫大な利益になるのです。

オーファンドラッグとして開発し、他の適用を取得する

さらに、オーファンドラッグとして開発することは大きなメリットがあります。前述の通り、政府の援助を受けることができたり治験での承認が優遇されたりするなど、新薬開発に成功しやすいのです。

そこで、最初はオーファンドラッグとして開発を行い、他の病気へと適用拡大させることで売上を伸ばすという戦略も頻繁に取られます。

例えば、生物学的製剤として知られるレミケード(一般名:インフリキシマブ)は当初、クローン病の治療薬として開発されました。クローン病は全身の消化管で炎症を生じる難病であり、クローン病の治療薬はオーファンドラッグです。

ただ、その後にレミケードは関節リウマチの治療薬として適用拡大を行いました。

関節リウマチは患者数が多く、治療薬も多く存在する儲かる領域です。最初はオーファンドラッグとして開発された薬であるため、レミケードの薬価は非常に高いです。高価な薬価のまま、関節リウマチの治療薬として活用されたことからレミケード(一般名:インフリキシマブ)も大きな利益を生み出す薬として成長しました。

その後、レミケードはクローン病や関節リウマチ以外にも、ベーチェット病、尋常性乾癬、乾癬、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎と多くの病気に活用されるように適用拡大されています。

オーファンドラッグのMRを目指すには

大手製薬会社であってもオーファンドラッグの開発に積極的になっているのは、新薬を開発しにくくなったことに加えて、上記のような裏事情があるためです。

そこで、オーファンドラッグを専門に扱うMRが重宝されます。プライマリー・ケア領域(生活習慣病など、開業医が扱う領域)のMRに比べて、難病の薬であるためオーファンドラッグMRは狭い領域での専門性が求められます。少数の医薬品ではあるものの、医師に対して高度な説明を行うのです。

オーファンドラッグMRの現状

通常であると、非常に患者数の少ない領域の疾患に対して、MRを割くのは非効率のように思えます。

ただ、たとえオーファンドラッグであったとしても、方法によっては非常に儲かることから必ずしもオーファンドラッグMRを配置することは無意味ではありません。むしろ、ブロックバスター(巨大な利益を生み出す薬)に化けたとき、その医薬品を担当していたオーファンドラッグMRは大きな力を発揮するようになります。

先ほどのグリベック(一般名:イマチニブ)やレミケード(一般名:インフリキシマブ)もオーファンドラッグから開発され、巨額の利益を生み出す薬へと成長したため、大手製薬会社であってもオーファンドラッグMRを配置するのです。

オーファンドラッグMRの使命を理解する

ただ、プライマリー・ケア領域のMRとオーファンドラッグMRでは行うことが異なってきます。プライマリー・ケア領域の場合、何とかして薬を売ってくるように努力しなければいけません。

一方でオーファンドラッグとなると、症例数が少ないです。これはつまり、どのような副作用が起こるのか予測しにくいことを意味しています。そのため、MRから医師に対して慎重投与を促さなければいけません。

また、社内の学術部門を活用しながら副作用の回避方法を医師と一緒に模索したり、海外の使用状況を情報提供したりして薬をうまく活用できるように支援します。

さらに、オーファンドラッグは症例数が少ないことから、市販後調査(PMS)も重要になります。実際に市場に薬が出た後、市販後調査をMRが実施することで副作用情報を集めていくのです。

オーファンドラッグは患者さんのニーズが明確であり、競合がほとんどいないので薬の販売や説明を含めて営業を行いやすいです。そうした有利な点はあるものの、副作用情報を含めて高い専門性を有している必要があり、さらには医師への迅速な情報提供が求められます。

オーファンドラッグMRになるための条件

ただ、オーファンドラッグMRの求人に誰でも応募できるわけではありません。高度な専門領域を取り扱うため、MRとしてのスキルと経験を兼ね備えた人が求人募集に対して応募することができます。

まず、オーファンドラッグを取り扱うのは開業医ではなく、主に大病院になります。そのため、大学病院や基幹病院でのMR経験は必須になります。もちろん、このときは新薬メーカーのMRとしての経験です。

これに加えて、KOL(キーオピニオンリーダー:医薬品販売に大きな影響力をもつ医師)に対応した経験があったり、研究会や病院同士の連携を実施したりする経験があると転職時に有利に働きます。

それでは、実際に出されたオーファンドラッグMRの求人を確認します。

・循環器領域のオーファンドラッグMR求人

例えば以下の中途採用募集は、循環器領域を専門とするオーファンドラッグMRの募集です。

循環器でのオーファンドラッグであれば、「肺動脈性肺高血圧の治療薬」や「家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の薬」などがあります。

循環器は高血圧、狭心症などの血管が関わる疾患を取り扱い、患者数が多い領域だと考えられがちですが、こうした希少疾病も存在するのです。

必須条件としては「新薬MR経験2年以上」であり、循環器領域やオーファンドラッグの経験者、市販後調査(PMS)活動の経験者を優遇するという緩やかな条件になっています。ただ、求人票には書かれていなくても大学病院や基幹病院の経験があると有利になります。

・大学病院や基幹病院の経験が必須のオーファンドラッグMR求人

以下の求人では「スペシャリティ(希少疾病)領域での募集」とありますが、要はオーファンドラッグMRのことを指します。このような内容でもオーファンドラッグMRの求人が出されます。

応募条件を見てみると「MR経験5年以上」「大学病院、基幹病院の担当経験」が必須になっています。その他、「KOL担当経験や病診連携・病病連携などの企画実行経験があるとなお良い」とされています。

ベテランMRにとってオーファンドラッグは重要な分野となる

また、こうしたオーファンドラッグMRの特徴として、「年齢が高めの人であっても応募可能である」ことがあげられます。実際、上記の求人では40歳くらいまで応募可能になっています。

一般的には、35歳を超えたMRを新薬メーカーが採用することは稀です。35歳を境にして、MRは急に転職が難しくなると考えてください。

ただ、オーファンドラッグなどでは大病院の経験や高い専門性を必要とするため、若い人の中でそうしたスキルのある人は少数です。そこで、ベテランMRであっても応募可能にしているのです。

そのため求人によっては、40歳や45歳など40代のベテランMRであっても問題なく内定を出されるケースがあります。

オーファンドラッグMRの求人としては、新薬メーカーだけでなくCSO(コントラクトMR)も保有しています。そのため、オーファンドラッグMRを目指す場合は製薬会社だけでなく、CSOのコントラクトMRまで求人を広げてみてください。

オーファンドラッグMRで専門性を磨く

高度な学術知識によって医師を支援するMRとしては、オンコロジーMRを思い浮かべやすいです。

抗がん剤は副作用が多く、副作用の回避方法を含めて他社製品まで学び、そこから医師に対して情報提供を行っていく必要があります。副作用によって投与中止になることが多いため、プライマリー・ケア領域の薬とは売り方が異なってきます。

ただ、これと同じことはオーファンドラッグでもいえます。患者数の少ない希少疾病であるため、症例数が少なくどのような副作用を生じるか分からないのです。

製薬会社やCSO(コントラクトMR)にとって、オーファンドラッグMRも重宝される存在です。そこでオンコロジーMRばかりに目を向けるのではなく、オーファンドラッグの領域で活躍することも視野にいれながら転職活動を進めてみてください。

もちろん、プライマリー・ケア領域のMRやオンコロジーMRに比べると、オーファンドラッグMRの求人数は少なくなります。ただ、求人が出たときにあなたの専門性を履歴書や面接で述べることによって、採用を勝ち取れるようになります。


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