製薬会社のMRやCSOのコントラクトMRが転職するとき、多くは現場で働くMRとして他会社の求人を探して転職するのが一般的です。ただ、中には管理職として求人募集へ応募し、転職を果たす人もいます。
それでは、どのようなMRであれば管理職として転職することができるのでしょうか。また、管理職の求人へ応募して転職成功できる人の特徴としては何があるのでしょうか。これらについて確認していきます。
もくじ
全員が管理職になれるわけではない
まず、会社組織である以上は当然ながら全員が管理職のポストに就くことができるわけではありません。現場MRとして働く人は多いものの、管理職としてマネジメントする立場の人では、その分だけポストの数が少なくなります。当然、チームリーダーや営業所長、支店長・エリアマネージャー、営業部長などのように階級が上がるほど狭き門になります。
そのため、MRとして活躍している人の中で「本社への異動や他企業への転職」「管理職のポストに就く」などを実現できなかった人の場合、現場のMRとして退職するまでずっと頑張り続けることになります。
これは一般企業であっても同様であり、50代や60代になっても現場で営業を担当している人はたくさんいます。これと同じことはMRにもいえるのです。
そして、少数ながら管理職のMR求人が存在します。ただ、誰でも管理職求人に応募できるわけではありません。管理職求人に申し込める人というのは、当然ながら条件があるのです。
管理職MRでは管理職経験が必須になる
これから管理職MRとして転職を検討するとき、それまでの管理職としての経験が必須になります。つまり、現場MRでしか経験のない人がいきなり管理職MRとして転職することはできないのです。
これは、考えてみると当然のことだといえます。あなたが現場でMR活動をしていたとき、いきなり外部の会社から転職してきた人が上司になった場合、どのように思うでしょうか。少なくとも、多少は警戒するはずです。
しかも、これが管理職経験のない人だと判明した場合はどうでしょうか。「自分の会社はなぜ、マネジメント経験のない人を採用したのか理解できない」と思うことでしょうか。少なくとも、「管理職経験のない人が自分の査定評価をする」ことに耐えられないはずです。
そのため、管理職経験がなければ管理職MRでの転職は諦めなければいけません。このときの管理職経験というのは、「部下の人事査定評価を行っているかどうか」ということが重要になります。
チームリーダーや営業マネージャー、プロジェクトマネージャー(PM)など数人の部下を管理する立場にあったり、職責による「名前だけマネージャー」の場合であったりする人がいます。
ただ、こうした人は単に少数の部下をマネジメントした経験があるというだけです。こうした場合、部下の人事査定評価の経験がないため、管理職MRとして他会社に転職するのは非常に難しいです。
普通に考えて、管理職では社内の人間を昇給させることで、その管理職ポストに就くことができます。よほど能力のある人は例外ですが、外部の管理職経験のない人を採用し、社内の人間を押しのけて管理職に就任させることはありません。
一方で営業所長や店長・エリアマネージャー、営業部長などの立場であれば、部下の人事査定評価を行っているはずです。また、何人もの部下をマネジメントすることで、「チーム単位でどのように実践すれば成績を上げることができるのか」を考えながら実行に移していると思います。
これらの経験を有する人が営業職MRとして転職を果たせるようになります。
管理職求人がなぜ存在するのか
社内の人間を昇進させるのが最も一般的にも関わらず、なぜ営業所長やエリアマネージャーなどの管理職を外部から中途採用で募集するのでしょうか。これには、当然ながら理由があります。
新たなカテゴリーの新薬を発売する場合、「どのように製品を販売していけばいいのか」というノウハウが会社にありません。例えば、これまで生活習慣病領域に強みをもっていた会社が新たに抗がん剤を販売する場合、そのプロモーション方法が分からないのです。
そこで、オンコロジー(抗がん剤領域)での販売経験を有する営業所長を外部から採用したほうが、より効率的に商品を販売できるようになります。新規で営業部隊を立ち上げるときなど、こうしたときに管理職MRの求人が出されます。
また、新薬発売によってMR数が足りなくなることがあります。実際、そうしたときは経験者MRを中途採用したり、CSOに頼んでコントラクトMRを派遣してもらったりします。
これと同じように、新薬販売に必要な営業所長の数が足りなくなることがあります。そうしたときも管理職MRの求人が出ます。外資系や内資系に限らず、管理職MRの求人は存在するのです。
管理職の求人はほぼ非公開求人になる
ただ、こうした管理職MRの求人を探しても自力で見つけるのは非常にハードルが高いです。製薬会社やCSOの管理職求人はほぼ非公開求人になるからです。
例えば、以下はCSOから出された中途採用のマネージャー求人ですが、CSOですら企業名は非公開になっています。当然、新薬メーカーだと表から探しても出てくることはなく、転職エージェントを利用しなければ求人は出てきません。
ポジションの高い管理職の求人であるほど、情報漏えいしたときのダメージが大きいです。どのような戦略で商品販売をしているのかについて他社に知られるわけにはいかないため、会社名や求人の詳細が表に出ないようにしているのです。
また、管理職を募集していることを社員に知られるわけにはいきません。求人票を見れば「募集しているポスト」「募集領域の管理職(オンコロジー、中枢神経領域など)」が分かるため、社内の人間で見る人によっては、どの会社が求人を出しているのか分かってしまいます。既存社員へ配慮するため、管理職MRの求人は非公開になるのです。
それでは、どのようにして非公開求人を手に入れればいいのかというと、その方法としては転職サイト(転職エージェント)に登録するしかありません。管理職MRとして転職したい場合、必ず転職サイトを活用するようにしましょう。
もちろん、機密情報であるため少数の転職エージェントでしか取り扱っていない求人に該当します。また、前述の通り管理職MRの求人自体が少ないです。
そこで、管理職MRとしての転職を目指す場合、必ず3社以上の転職サイトを活用し、管理職求人が出されるのを待つようにしましょう。少ない情報の中で勝負する必要があるため、複数社の転職エージェントを利用して情報の仕入れ先を増やすことが必須です。
管理職MRの年収・給料はどれくらいなのか
実際に管理職(営業部長、エリアマネージャーなど)で転職するとなると、どのような待遇になるのでしょうか。このときは年収や勤務地、福利厚生などを考慮しながら転職を検討しなければいけません。
まず収入については、製薬会社の管理職クラスになると年収は900~1000万円以上になることが多いです。大手製薬会社になるほど年収が高くなりやすく、中堅製薬会社では大手ほどの年収ではなくなります。ジェネリックメーカーの管理職であると、さらに年収は低くなります。
このとき重要なのは、給与体系をしっかりと確認した上で求人先へ応募することです。
製薬会社やCSOによって給料の計算方法が異なります。例えば、ボーナス(賞与)が業績・実績に応じて大きく変動する会社があれば、そこまで実績に関係なくほぼ固定でボーナスが支給される会社もあります。
大きな成果を出せる自信がある場合、たとえ毎月の給料が低かったとしても、大きなボーナス額によって結果として年収が大幅に高くなることはよくあります。
製薬会社によっては、MRとしての成績によってボーナスが400万円以上も異なることがあります。これと同じことが営業所長などの管理職にも適用され、業績によってボーナスが変動するのです。
ただ、そうしたボーナスの変動に不安を感じる人の場合、ある程度の給料が保障された会社へ転職することによって、安定した環境で管理職として活躍できるようになります。
また、MRでは提示される年収だけでなく、福利厚生まで着目するようにしましょう。最も分かりやすい例は住宅手当(家賃補助)であり、どれだけ会社が負担してくれるのかによって実質的な手取り額が違ってきます。
例えば家賃10万円の借り上げ社宅に住む場合、「15%の自己負担」であれば月1万5000円を支払えば済みます。一方で「80%の自己負担」であると、月8万円を支払うことになります。これが1年続けば、両者では年間78万円の違いになります。
こうしたとき、福利厚生まで考えると「結果として転職前の方が高年収を実現できた」ということはよくあります。もちろん、福利厚生には他にも種類がたくさんあるため、転職で年収アップまで視野に入れる場合はこうしたことまで考慮するといいです。
勤務地希望を管理職MRの転職で申し出てはいけない
管理職MRというポジションで転職するとき、気になるものとして勤務地があります。現場で働く経験者MRの場合、最初の勤務地(初任地)に関しては考慮してくれることがあります。これと同じことは、営業管理職でもいえるのでしょうか。
結論をいえば、管理職MRでは初任地の希望を押し通すのは諦めるようにしましょう。むしろ、全国転勤であってもまったく問題ない人でない限り、営業管理職での転職は向いていません。
管理職MRの求人は非常に少ないです。そうした中で勤務地希望を提示する人は非常に扱いにくい人間だと捉えられます。そもそも、自分のわがままを押し通す人間が部下を適切にマネジメントできるとは思えません。
現場のMRであれば、「関東エリアでの異動」など同じ地域の中で担当エリアを変えることが可能です。こうした場合、多少の転勤はあったとしても移動距離は少ないです。
ただ、営業所長やエリアマネージャーなどの立場になれば、空いているポストが少なく転勤するとなると非常に広範囲になります。東京で勤務していた営業所長が、急に大阪や福岡へ異動になることはよくあります。そのため勤務地限定の希望は出さず、最初から全国転勤ありという前提で求人に応募するようにしましょう。
どういう営業管理職が求められているのか
営業所長やエリアマネージャーなどの転職では、現場MRが転職するときとは少し様子が異なります。
現場MRの場合、どれだけ自分が成果を残すことができるのかについて語れば問題ありません。「求人先の会社に移ったとしても、問題なく成績を残せる」という再現性を提示できれば、それだけで転職成功できます。
ただ管理職では、いくらその人が営業マンとして優秀であっても意味がありません。部下を適切にマネジメントすることによって、チームで成績を残せるようにしなければいけないのです。
管理職MRとして働いている以上、当然ながら現場MR時代はある程度の成績を残していたことだと思います。ただ、管理職である以上はプレイヤーではなく、「自分と同じような成果を他の人(部下)も出せるようにマネジメントできる能力」をもつ必要があります。そのような管理職が優秀だと判断されるのです。
そのため、管理職として多くの経験を積み「管理職としての成果を残している人」のほうが、営業管理職として転職成功しやすいです。また、「チームが結果を残すための再現性の高いノウハウ」を履歴書・職務経歴書や面接などで具体的に提示できれば、それだけ面接官の印象に残りやすいです。
部下の成績向上を行うことができる
チームで成果を出すことがマネジメントで重要であることから、求人先では「営業同行やOJTなどを通じて部下を育て、全員が成果を出せるように導ける管理職MR」を望んでいます。
このとき、チーム全体で成績を残すための方法としては、単にチームみんなの営業能力を向上させるだけでは不十分です。部下が抱える悩みを取り去ることも管理職MRの役割です。
管理職である以上、当然ながら部下に数字(ノルマ)を要求することになります。そのため、どちらかというと管理職は他の一般社員から嫌われる存在になりやすいです。ただ、成果を残している管理職であるほど部下から好かれています。
「何でもいいから薬を売ってこい」「なぜ、これだけ数字が低いのか」と部下を叱咤することは簡単です。実際にこうした管理職が大多数を占めますが、このようなマネージャーは「自分には薬を売るためのアイディアは何もないが、どんな戦略でもいいので、とにかく成績を残せ」とめちゃくちゃな要求を部下に突き付けているのと同じです。
そこで、「なぜこの部下は成績に伸び悩んでいるのか」「どのような作戦であれば成果を出すことができるのか」「得意先との関係の悩みを解決するにはどうすればいいのか」「部下への数字(ノルマ)の重圧を和らげるには何をするべきか」などを本気で考え、実践できる管理職が本物だといえます。
自分本位で仕事を進めるのではなく、「部下を成功させるために自分ができることは何か」を考えられる管理職は、大きな成果を残すことができるのです。
また、営業所が各拠点に点在しているため、ほとんど営業所に顔を出さず、住んでいる場所(自宅)をオフィスにしているMRは多いです。こうした場合、ほとんど顔を合わさずに仕事を進めることになってしまいます。
そうした中、営業所長やエリアマネージャーなどの管理職として、あまり顔を合わさないからこそ部下の変化に敏感になり、サポートできるように配慮しなければいけません。
新規事業の立ち上げに積極的であると良い
他にも、ゼロの状態から新規事業を立ち上げることに対して積極的な管理職MRであると、求人先の採用担当者の反応が良く、転職で成功しやすくなります。
前述の通り、製薬会社やCSOが営業所長・エリアマネージャーなどの管理職を募集するときというのは、「これまで経験したことのない新薬を販売するとき」など、新規で営業部隊を立ち上げるときが多いです。
こうしたとき、「既存のやり方に捉われず失敗を恐れずに挑戦できる人」が重宝されます。
そのため、志望動機・転職理由などを含め、履歴書・職務経歴書や面接では「どのような新たなことに挑戦し、成果を出してきたのか」まで含めて自己PRするといいです。決まりきった仕事をこなすだけでなく、挑戦し続ける姿勢を面接の場で述べると転職で成功しやすくなります。
営業管理職の経験を積み、管理職MRの転職を果たす
現場で働くMRに比べて、営業所長など管理職MRでは果たすべき役割が大きく異なります。自分だけが成果を出せばいい現場MRに対して、管理職では統括する部下をマネジメントすることにより、自分以外の人が成果を発揮できるように管理しなければいけません。
こうしたことを理解し、部下が成功するにはどうすればいいのかを考え、管理職MRとして成果を出すことを考えましょう。
そうして業績を上げていけば、転職するときであっても問題なく求人先の製薬会社やCSOから受け入れてもらえるようになります。
管理職MRが転職を検討する理由はさまざまです。「パイプライン(新薬候補)が豊富な大企業でキャリアアップしたい」「これまでの経験を活かせる会社で活躍したい」「決定権があり、新たな事業にチャレンジできる社風の会社がいい」など、人によって転職理由は異なるのです。
こうした転職理由を大切にしつつ、転職先の会社で何をしたいのかを語れるようにしましょう。こうした上で、管理職としてそれまでの実績や経験を述べることによって、求人先の会社から採用される可能性が高くなります。
管理職での転職を検討する場合、非公開求人を探るために事前に複数の転職サイト(転職エージェント)に登録するなど、早めに対策を練りましょう。求人数がかなり少ない以上、先手を打って行動できる人だけが管理職MRとしての転職を実現できます。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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