MRへ転職しようと考えるとき、未経験の状態であっても問題なく転職できます。MRの中途採用では、「それまでMR未経験であり、異業種から転職する」という人が非常に多いです。
このとき、新薬メーカー(製薬会社)のMRとして転職するのは非常に狭き門で難しいです。そこで、ほとんどの人はコントラクトMRを目指します。製薬会社からの要請に応じて、MRを派遣する会社をCSOといいます。CSOに所属しているMRがコントラクトMRです。
新薬メーカーよりは劣るものの、コントラクトMRであっても他の営業職よりは遥かに高い年収を実現でき、福利厚生もしっかりしています。研修制度はどの会社も整っており、MR認定資格を取るために支援してくれます。さらに、コントラクトMRから新薬メーカーのMRとして転職することも可能です。
ただ、コントラクトMRへ転職するときに「それまで営業未経験の状態だが問題ないか」という人がいます。要は、それまで他業種でも営業職を行ったことがないのです。こうした人の場合、別の戦略を考えなければいけません。そのために必要な考え方について述べてきます。
もくじ
MRへ転職するときの絶対条件
これからMRとして活躍したいと考えたとき、絶対条件が存在します。まず一つ目は、普通自動車免許を保有しているということです。過去に飲酒運転で逮捕されたなどの罪を犯していない限り、これについては多くの人は問題なくパスしていると思います。
また、二つ目に大卒以上の学歴があることです。残念ながら、高卒や専門卒の方はどれだけ素晴らしい営業成績を上げていたとしてもMRになることはできません。もちろん、他の分野で医療業界に携わることはできるものの、少なくともMRとして医師に医薬品情報を届ける仕事はできないと考えるといいです。
そして三つ目に年齢があります。既にMRとして多くの経験を積んでいる場合、高齢であっても問題なく転職できます。ただ、未経験の状態でMRへ転職するとなると、35歳以上では厳しいです。
MRへ転職する人のうち、約8割は20代までです。30~34歳が残りの約2割であり、35歳以上でのMR転職を果たした人は1%ほどしかありません。そのため、30歳前半までの年齢である必要があります。
逆にいえば、「普通自動車免許をもっている」「大卒以上である」「30歳前半までの年齢」という条件を満たしていれば、だれでもMRとして活躍できるチャンスがあります。
MR転職では営業経験が重視される
ただ、MRへ転職するときは問題があります。それは、「これまでに営業経験があるか」ということです。MRは医師に医薬品情報を提供する営業職です。自社製品を説明し、薬を使ってもらうようにしなければいけません。
そのため、当然ながらこれまでの営業経験が問われます。営業を通してどのような工夫を行い、お客様に提案したのかについて履歴書や面接で語れなければいけません。
CSO(コントラクトMR)の募集条件をみても「営業経験2年以上」としていることが多いです。異業種からの人は広く受け入れているものの、営業経験を有していることが重視されるのです。
・営業職の定義は広い
ただ、営業職とはいってもその定義は広いです。一般的に営業職というと、外回りをしてお客様のもとへ出向いて提案し、商品を売っている人のように思ってしまいます。ただ、MRを中途採用するときの営業職はもっと幅広い意味で活用されています。
例えば、小売店(アパレル、家電量販店など)は店を構え、お客様が入ってくるのを待つ業態です。こうした店で店長を経験している場合であっても、問題なくMRとして採用されます。
店に入ってきたお客様に対して、プレゼンテーションをしたり商品配置を考えたりしなければ商品は売れません。また、その場でお客様の悩みや要望を聞き出し、それに合う商品を提案することでようやく売れるようになるのです。
そういう意味では、こうした小売店で働いている人も営業職に属します。外回りをしている人に限らず、店舗型のビジネスであってもお客様へ提案する職業の場合はMRへ転職できる可能性があります。
また、会社では営業という位置づけではなかったとしても、「得意先へ出向いて取材・提案業務をしている」「セールスエンジニアとして、技術面の提案をしている」など何かしら営業に関わっている人がいます。このような仕事に従事している人であっても、コントラクトMRの求人へ応募できます。
世の中に存在する職業の半分以上が営業職であり、何らかの形で営業に携わっています。実際、私の知り合いには「職業訓練所の相談員だった人が30歳にしてMRへ転職した」というケースがあります。その人は私にとってライバル会社のMRだったのですが、仕事でもプライベートでも仲良くさせてもらいました。
営業未経験の場合はどうすればいいのか
それでは、経理や総務を含め本当の意味で事務をしていたり、プログラマーで顧客とは合わず会社内に引きこもっていたりするなど、営業とは関係ない仕事に従事している場合はどのようにすればいいのでしょうか。営業経験なしであると、残念ながらMRとして転職するのは難しいです。
中途採用では、ある程度の経験を求められます。これらの経験がなければ、当然ながら求人先の会社は評価してくれません。
営業職はお客様の悩みを解決するのが仕事です。これと同じように、MRは医師の悩みを解決することが仕事であり、薬の説明が本来の仕事ではありません。こうしたことを理解し、クライアントの悩みを解決できた実績がなければMRとして活躍することができないのです。
20代の転職では「企画職」「マーケティング職」が人気職種ですが、営業職が本当の意味での企画職やマーケティング職に当たります。お客様の要望を注意深く聞き出し、その解決策を自社製品の採用によって提示するのです。その結果、商品が売れていくというわけです。
会社内で営業職を経験させてもらう
それでは、営業経験がない場合はどのようにすればいいのでしょうか。この解決方法として、最も単純な方法は異動です。要は、営業職への異動を人事へ要請するのです。営業職という部門でなかったとしても、何らかの形でお客様へ企画・提案できる部署で活躍させてもらうように異動を要請する必要があります。
もちろん、世間一般的な企画職やマーケティング職のように机上の空論だけで仕事を進める職業ではダメです。営業として実際にお客様に接し、そこから何を悩んでいるのかを聞き出し、提案できる職業である必要があります。
ビジネスでは実学から学ぶ必要があるため、お客様からの生の声を聞きながらビジネスが実践できる職場へ身を置きましょう。
例えば、私の知り合いに医薬品卸の営業(MS)がいます。この人は最初、新卒で医薬品卸の管理薬剤師をしており、いわゆる内勤仕事でした。ただ、営業職をやりたいということを人事に言い続け、25歳から医薬品卸の営業職としてルート営業を担当するようになりました。薬剤師採用で入社したものの、同じ会社内で営業職へと転向したのです。
MRは医薬品卸へ出向いて、そこの営業さん(MS)と一緒に仕事をすることがよくあります。私はこの薬剤師(医薬品卸の営業:MS)と一緒に何度も仕事をしており、非常に優秀な方だと実感しました。
営業を経験できる職場へ転職する
ただ、実際のところ社内での人員調整があったり、異動の要望を聞いてもらえなかったりして、結局のところ営業職を経験できないケースが多いです。
転職市場では年齢が若いほど価値は高いです。前述の通り、35歳を過ぎてMRへの転職を成功させている人はわずかしかいません。こうした事実を考えると、MRとして活躍することを考えたとき、早めに営業職を経験しなければいけません。
そこで、他の会社の営業職として転職するという方法があります。営業というスキルはどの会社でも役立つため、早めに営業を経験することにメリットはあってもデメリットはありません。
どの会社の営業職がお勧めなのか
営業未経験の人がMRを目指すとき、このように「他の会社の営業職を2~3年経験した後、MRへ応募する」という2段階の方法をとるのは有効です。
それでは、第1段階としてどのような会社の営業職へ応募すればいいのでしょうか。MRはもちろん、医薬品知識が要求されます。そのため、将来MRとして活躍することを考えているのであれば、医療業界での営業職を第1段階として見据えるといいです。。
医療業界というと、多くの人は製薬会社を思い浮かべます。そのため、MRを志願しているのだと思います。ただ、医療業界は製薬会社だけではありません。他にも多くの職種が存在するため、それらを理解したうえで求人へ応募するといいです。
・医療機器の営業職
最もオススメなのは医療機器メーカーの営業職です。医療機器メーカーによっては「営業経験が必須」「大卒以上の学歴」としていることはあるものの、営業経験なしであっても受け入れてくれるケースがあります。
医薬品が医療機器になっただけであり、「自社製品を医療機関へ納入するために営業する」というスタイルは変わりません。このときは医師へ説明し、提案することになります。
例えば、医療機器メーカーが取り扱う製品としてはMRIやCTなどの大型機器があれば、内視鏡やカテーテルなど手術に欠かせない機器、人工心肺装置やペースメーカーなど患者さんの生命維持に欠かせない装置などが存在します。
また、会社の業務内容によっては医療機器の提案先が調剤薬局になることがあれば、歯科医院になることもあります。いずれにしても、医療関係者へ提案することが仕事です。医療機器業界も年収は高めのであり、福利厚生はしっかりしています。
さらに、医療機器では「電子カルテ」「電子薬歴」などの機器類も含みます。こうした製品を取り扱う会社では、「IT業界で活躍していた人を歓迎」のように書かれていることがあり、営業未経験であっても転職できる可能性が高いです。
例えば、以下は東京や埼玉などに営業所をもつ医療機器メーカーの中途採用の求人です。
30歳までという条件はありますが、資格などは特に必要なく営業未経験者であっても問題なく応募できる求人になっています。
なお、医療機器とはいっても実際のところかなり幅広いです。例えば、以下も医療機器です。
そのため、医療機器とはいっても実はかなり幅広いのです。
・医薬品卸の営業(MS)
製薬会社の営業職をMRと呼ぶのに対して、医薬品卸の営業職をMSと呼びます。MSは医療機関(クリニックや薬局など)をルート営業することで、医薬品の物流を支える仕事です。
MRほどではないですが、MSも医薬品知識が要求されます。また、MRが勉強会を開催するのを手伝ったり、MSから医師や薬剤師に対して医薬品の説明をおこなったりすることもあります。MRほど高度な情報提供を行うわけではないものの、MRでは届かない範囲の部分をカバーするのがMSです。
MSの場合、営業経験なしでも応募できます。例えば、以下は国内トップクラスの規模を誇るアルフレッサの中途採用でのMS求人です。
ここにある通り、大卒以上であれば30歳未満の営業未経験者であっても問題なく応募できることが分かります。
コントラクトMRではMS経験の人を優遇しています。私の知り合いにも、MSからコントラクトMRになった人が何人もいます。そのため、まずはMSを経験して医療業界のことを知るのも問題ありません。
中には、MSとして働きながらMR認定資格を取得する人もいます。そうした人の場合、よりMRへの転職がスムーズになります。
・歯科医院・動物病院への営業
医療機器の営業と少し重なりますが、歯科医院や動物業院へ営業する会社も数多く存在します。このとき販売するのはシステムかもしれませんし、IT機器かもしれません。
いずれにしても、歯科医師や獣医師などの専門家に対して営業・提案することになります。
MRと違って扱うのは医薬品とは限りませんが、忙しい診療を行っている専門家に対して営業活動を行うという意味では同じことを実施することになります。そのため、ここで大きな成績を残すことができればMRとして十分に転職できます。
・その他の医療分野
いくつかの営業職を紹介しましたが、あなたが想像している以上に医療業界ではたくさんの仕事が存在します。そのため、MRへとステップアップするために医療業界の営業職を経験する方法はまだたくさんあります。
例えば、医療機関では必ず消毒薬を活用します。消毒薬の種類は非常に多く、消毒薬専門のメーカーはいくつも存在します。
また、治験業務を取り扱っている会社も存在します。まだ世の中に出ていない医薬品に対して、その効果や副作用を確認する作業を治験といいます。別名、臨床試験とも呼ばれます。治験業務もMRと同様に医師・薬剤師と関わりながら仕事をしなければいけません。
他には、介護・福祉の分野で営業職をしても問題ありません。介護といっても幅広く、単なる老人施設があれば、医師が診察を行う特別養護老人ホーム(特養)が存在します。
開業している医師が介護施設をもつのは珍しくなく、むしろそうした施設はかなりたくさんあります。介護・福祉分野の営業職であっても医師と関わり、提案する経験を積むことは可能です。当然、医療分野なので深い知識を身につけることができます。
営業経験の有無に限らず、総合転職サイトを活用する
MRや医療機器を含め、未経験者が医療分野へ挑戦するときは転職サイト(転職エージェント)を活用しましょう。何のコネもなしに自ら応募しても、採用されることはありません。
ただ、MRを対象にした転職サイトでは「MR経験があること」が基本的な利用条件になっています。そこで、営業経験の有無に限らず、MR未経験の人は「MR対象の転職サイト」ではなく、総合転職の転職エージェント(あらゆる人を受け入れてくれる転職サイト)を活用するようにしましょう。
総合転職サイトに相談し、「自分の営業スキルはMRへ転職するときに通用するか」「どのようにすればMRとして転職できるか」などを確認した上で転職活動を進めるといいです。前述の通り、職業訓練所の職員であってもMRとして活躍できていることを考えると、意外と営業職の定義は広いことが分かります。
総合転職エージェントに相談すれば、どのようにMRを目指せばいいのか見えてきます。場合によっては医療機器やその他医療関係の職業を紹介されるかもしれませんが、総合的に判断して転職を検討しましょう。
医療業界は魅力が大きい
MRは他の業界に比べて年収が非常に高く、福利厚生も充実しているので魅力的です。そのため、中途入社の転職組としてMRを目指す人は多いです。
たとえ文系であっても、異業種からの転職であっても、MRとして活躍することは可能です。ただ、営業経験なしの状態では転職は難しいです。外回りでなくても、お客様へ提案する仕事をしている場合は問題ありませんが、そうでない場合は、まず「営業そのもの」を経験する必要があります。
ただ、前述の通り年齢が若いほど転職で有利になり、年を取るほど転職できるチャンスは少なくなります。そのため、早めの決断が必要になります。
医療業界は不景気であっても売上が減らない珍しい業界です。そのため安定しており、MRでなかったとしても医療業界では高年収を実現しやすいです。そうした業界にチャレンジしたい場合、いまの職業が適切かどうかを判断しながら新たな挑戦を行ってみてください。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれ転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができるようになります。
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