現在、インターネットを活用すれば多くの情報を手にすることができます。医療情報についても同様であり、ネットからの情報だけで質の高い医療を提供するには十分すぎるくらいの情報を得ることができます。

そうなると、「製薬会社の営業職であるMRに存在価値はあるのか」という疑問が出てきます。自ら情報提供を受けなくても、医師は自分の力で調べて情報収集することができるともいえるからです。

それどころか、医師はただでさえ忙しいのに何人ものMRを相手にしなければいけないとなると、MRが訪問することによって日常診療に支障が出てきます。そのため、訪問規制が厳しくなっています。

しかし、質の高い医療を提供するうえでMRの存在は不可欠です。なぜMRが必要なのかについて、ここではMRの存在意義を確認していきます。

MRの存在意義を知る

製薬会社のMRは「医師に薬の説明をする人」だと一般的にいわれています。ただ、本当の意味で薬の説明だけを行うMRに存在価値はありません。医師にとって、そのようなMRは迷惑な存在でしかないからです。

例えば、車のセールスマンと話をしていて「この車は最新のエンジンを搭載しており、○馬力の力を出すことができます。運転の加速もスムーズで、さらにはエコカーとして1Lあたり○kmを走行できます」などのように、性能の話ばかりをされたらどうでしょうか。興味のない話を聞かされるため、うんざりするはずです。

多くのMRが行っていることは、これと同じように単に薬の特徴や利点だけを並べて医師に説明することです。こうしたMRが多いため、「MRに存在意義はあるのか?」という疑問が出てくるのでしょう。

しかし、前述の通り薬の説明ばかりをするMRは価値がないです。そうではなく、「医師ができないものを調べたり、代行したりすることにMRの価値がある」といえます。

医師ができないものとは何か

人間である以上、医師は何でも知っている神様というわけではありません。また、規模の大きい病院であったとしても、世間一般的に見れば中小企業と規模が同じです。そうしたとき、中堅製薬会社であっても世間一般的には大企業ばかりであるため、大企業に属しているMRだからこそ行えることがあります。

例えば、医療経営を補助するのはMRの役割です。日本は保険診療によって成り立っているため、窓口で3割の負担分を支払いますが、残りの7割は保険者(健康保険事業の運営側)へ請求することになります。このときの請求書をレセプトといいますが、レセプトが通らないことがあります。

「レセプトが切られる」と呼ばれますが、レセプトが通らなければ医療機関側は7割分のお金を損することになります。

レセプトが通るかどうかは都道府県など地域によって事情が大きく異なります。そこで、どのようにすればレセプトが通るのかについてはMRが詳しいです。そうしたことを医療機関に助言することで、医療経営を助けるのです。

また、医師は多忙を極めます。限られた時間の中で日々の診療や調べもの、学会準備、医局、経営など多くの業務をこなさなければいけません。そうしたとき、例えば医師に代わって論文を調べて情報提供したり、最新の知見を調べて教えたりすれば非常に喜ばれます。

医師がすべて自分で調べるのは、現実的ではないのです。

薬の説明だけに注力しているMRは医師にとって邪魔な存在でしかありません。ただ、医師が欲しているものを見抜き、医師の手助けができるMRはそれだけ医師に重宝されます。

そして実際のところ、薬の説明はほとんどせず、医師の手助けを行って感謝されることだけを考えているMRであるほど、その他のMRに比べて非常に優れた営業成績を残しています。

リアルでしか伝わらないものがある

どれだけインターネットが発達しているにしても、すべての情報がネットにとって代わることはまずありません。これは、リアルでしか分からない情報がたくさんあるからです。

実際のところ、現在でも医療に関するセミナーや学会などは頻繁に行われています。

ただ、ネット上にすべての最新情報があるため、極端な話をすればこれらのセミナーや学会はすべて不要のはずです。論文をみれば最新の知見が載っているし、セミナーで話される内容の多くは本やネット上に既に掲載されていることばかりです。

しかし、それでもセミナーや学会は必要とされています。こうしたリアルの場が必要なのは、小学校のときを思い返すと分かりやすいです。

小学校は義務教育であるため、必ず教科書を渡されます。そのため、学校に行かなくても教科書を読んで勉強すれば、問題なく試験で点数を取るすることができます。

ただ、実際は多くの人が学校へ通います。この理由は、教科書だけを読んでも理解できないからです。先生が前に立って「重要なポイント」「効率よく理解するための考え方」などを要約して説明してくれるから、ようやく内容を理解できるわけです。

こうした現状を考えると、本やネット上にある内容だけを読んで理解するのは無理です。そこで、リアルな場での説明が必要なのです。

薬を処方する場面も同様であり、医師がネット上だけの情報だけで薬を使えるようになるのは不可能に近いです。

特に薬の場合は「副作用が表れたときの対処法」「特殊な患者さんへの薬の使い方」など、ネット上にはなく製薬会社の社内だけで共有されている情報もあり、そうした情報をMRが提供することでようやく薬を扱えるようになるのです。

医師のニーズを探った上で情報提供する

製薬会社に所属しているMRは「社内データを含め、医薬品情報へ簡単にアクセスできる」という強みがあります。これを活用すれば、医療に貢献できます。

MRとして医師の話を聞いていると、その中で医師の悩みが浮かんできます。人によって悩みの内容は異なり、「これまでの方法では治療できない患者さんがいて、何とかしたい」「専門外の薬を処方してみたいが、その薬の使い方が分からない」などです。

薬の情報は膨大であるため、これらすべてを医師一人だけの力で調べるのは現実的ではありません。ただ、こうした医師のニーズ(=悩み)を引き出した後、大企業という強みや社内ネットワークを駆使して医師の代わりに調べ、情報提供すれば非常に喜んでくれます。

これはつまり、医師を介して患者さんに貢献しているといえます。自社製品の説明ばかりするのではなく、医師の手助けに注力しているMRは存在価値が高いといえます。

MRだからこそ実践できることを行う

このように考えると、MRの存在意義というのは「MRでしか行えないことを実施することで間接的に医療へ貢献する」ことだといえます。

特に副作用情報については、正直にすべて報告しなければいけません。副作用を含め、最新の薬の情報は製薬会社に集められるため、ネットなどどこにも載っていない情報を素早く提供するのはMRの仕事です。

薬の副作用が出たときに医師へその情報を届けなかったとき、どこかの時点で「この薬にはこういう副作用がある」という情報が出まわるため、情報提供をしていないことは必ずバレてしまいます。そうなると、医師からの信用を一気に失ってしまうため、長期的に見るとすべて正直に話し、素早く医師へ周知させた方が良いのです。

医師にしてみれば、どのような副作用が起こるのか分かれば日々の診察に活かすことができます。ネガティブな情報であるほど、優秀なMRは必ず報告するようにしています。自社にとって不利だからといって、報告しないことはありません。

また、医師から副作用情報を得た場合は必ず会社に報告する義務があります。報告しなければ後で大きな罰を受けるため、どの製薬会社であっても副作用報告は絶対だといえます。

どのように薬を活用すればいいのかに関する情報提供を行い、副作用情報を届けることで適正な医薬品使用を促すことはMRにしかできません。新薬が市場に出た後、薬が効果的に活用されるように「育薬」するのはMRの役割の一つだといえます。

信頼している人から勧められるからこそ薬が広がる

育薬において、MRの存在意義は大きいです。MRがいるからこそ新薬が広まっていき、これによって医師は新たな治療法を患者さんに提供できるようになるのです。

その反対にMRが存在しなければ、新薬が広まることはほぼありません。

例えば、痛風治療薬としてウリアデック・トピロリック(一般名:トピロキソスタット)という薬があります。おそらく、医師や薬剤師などであってもこの薬の存在を知らない人がほとんどです。

この薬自体は画期的な薬であり、尿酸値を大幅に減らすことで痛風を治療することができます。薬が優れているにも関わらず、なぜほとんどの医療関係者がその存在を知らないほど忘れ去られているのでしょうか。

実は、この一番大きな理由はMRにあります。この新薬を販売した会社は製薬会社の中でも非常に小さい会社であり、MRの数が非常に少ないです。そのため、薬が広まらなかったのです。

例えば、あなたが医者だったとき、どのような副作用が表れるか分からない得体の知れない新薬を患者さんに処方したいと思うでしょうか。真っ当な考え方をもっている医師であれば、そのようなことはしません。

医師が新薬を使用するとき、MRから副作用や薬の活用法、保険請求の方法などを教えてもらうだけでなく、新薬に関する講演会などへ出向いて情報収集をします。

その後、少数の患者さんに薬を試してみて反応をみます。このときは薬の効果が表れて良い結果が得られるだけでなく、思わぬ副作用を生じて薬の減量や中止が必要など不測の事態が発生することもあります。

そうしたとき、すぐにMRと連絡を取ることができて早急に対応してもらえる場合、医師としては安心できます。

こうした現状を理解したうえで、MRの顔すら知らず、ほとんど連絡を取ったこともない会社が出した新薬を採用したいと考える医師はいません。そういう意味では、新薬が広まって医師が新たな治療法を患者に提案できるようになるためには、MRの存在が大きいといえます。育薬において、MRは欠かせない存在なのです。

世の中には、「他の薬とほとんど特徴が変わらない新薬」が存在します。そうした薬であっても、ある程度は処方されます。これは、MRによる努力が大きいです。

新薬が活用されるのは、調剤薬局にとってみれば無駄な在庫が増えるので避けたいものですが、患者さんにとってみれば薬の選択肢が増えるので喜ばしいことです。同じ作用機序の薬であっても、ある薬は副作用が出て体質に合わなかったが、他の薬に切り替えたらうまく治療できたというケースはたくさんあります。

医師同士をつなげるのもMRの価値になる

MRがメインとなって活動できることは他にもあります。その一つとして、医師同士をつなげることがあります。

病院の医師であれば、同じ病院内に多くの医師がいます。ただ、「他の病院がどのようなことを行っているか」などの実情は分からず、勤務先やアルバイト先の事情しか知らないケースは多いです。

これが開業医になればもっと深刻であり、自分のクリニック内だけで完結していることは多いです。

ただ、実際のところ医療では横のつながりが重要です。かかりつけ医として、多くの患者さんは開業医に診てもらいます。ただ、地域のクリニックでは対応が難しい場合は病院に診てもらうようになります。そうしたとき、地域連携として開業医と病院医師(勤務医)とのつながりは非常に大切です。

そこでMRが主導して研究会などを発足させれば、病院医師(勤務医)と開業医が交流する場をもてるようになります。一つの疾患に焦点を当て、病院とクリニックがどのように連携して患者さんを治療していけばいいのか、話し合いの場をもつことができるのです。

特に新薬が発売されたとき、その薬をどのように活用すればいいのか情報が少ないです。そうしたとき、このような情報交換の場は重要です。例えば、その分野で第一人者といわれる先生を呼んで講演会を開けば、そこには病院やクリニックなどさまざまな機関に属する医師が集まってきて勝手に情報交換してくれるようになります。

MRは日頃から多くの医師と接しています。また、営業マンであるためコミュニケーション能力は高いです。こうした特性を活かせば、医師同士をつなげることで医療に貢献できます。

地域連携や医療機関同士をつなげ、さらには薬局と医療機関との間に入って医療を推進できるのがMRです。

医師から感謝され、頼られるMRは存在価値がある

「医師が行えないことや忙しくて実行できないことを代行し、診療の手助けを実践すること」がMRの存在意義です。

もちろん、医師を手助けするとはいっても病院やクリニックのスタッフとして働くわけではありません。それらは労務提供と呼ばれ、明確に禁止されています。そうではなく、製薬会社に属しているからこそ行える情報提供によって、医師を手伝うのです。

自社製品の薬を一方的に宣伝するだけのMRはいつまで経っても二流です。医師の立場を考え、相手の悩みを掘り下げ、薬に限らずあらゆる解決策を提示するのがMRの役割だといえます。

そのため、MRは製品名をいうのを控え、医師に「ありがとう」と感謝されたときだけ「少し製品を説明させてもらってもいいでしょうか」と伝えるように行動を変える必要があります。むしろ、医師に貢献していると相手から「薬について説明してもらってもいいか」といってくれます。

また、研究会や講演などによって医療にとってプラスになることを実施して、地域医療に貢献していることを認識してもらうようにしましょう。こうした活動は後になって営業成績という形で大きく跳ね返ってきます。

新薬が出たときや副作用が表れたときなど、すぐに連絡を取れるMRの存在は医師にとってありがたいです。MRにお願いすれば、必要な情報を代わりに調べてくれますし、資材(病気を啓もうする掲示物)もMRがすぐに届けてくれます。

医療にとって、MRは欠かせない存在です。新薬が出たときに薬を広める役割を担い、適正使用されるように育薬し、情報提供するという重要な役割があります。

ただ、これが単に自社商品の説明だけになると迷惑なMRになります。そこで、製薬会社という立場を活かして医師を支援することで、医療に大きく貢献できるようになる必要があります。


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特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。

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