これからMRとして転職しようとするとき、「内資系製薬会社と外資系製薬会社とでは、どのような違いがあるのか」を理解する必要があります。会社ごとに差異があるものの、内資系と外資系のメーカーではそれぞれ考え方が異なるのです。
こうしたことを理解したうえで転職活動を進めれば、どのメーカーを目指すべきなのか明確になります。そこで、内資系製薬会社と外資系製薬会社の違いや共通点を含めて解説していきます。
もくじ
内資系製薬会社と外資系製薬会社の違い
まず、内資系製薬会社と外資系製薬会社ではどのような違いがあるのでしょうか。もちろん、会社ごとに取り扱う製品は変わりますし、その規模も異なります。ただ、内資系と外資系の違いとしては以下のようなものがあります。
- 外資系の方が制約は厳しい
- 内資系よりも、外資系製薬会社の方がリストラは多い
- 内資系製薬会社であっても早期退職は存在する
- 外資系であると職場環境が変わりやすい
- 内資系は中堅製薬会社が存在する
それぞれについて解説していきます。
外資系の方が制約は厳しい
かつての日本では医師に対する過度の接待が行われていました。それが現在では、MRによる接待が禁止になったため、基本的には本来の「情報提供活動」だけがMRの業務になりました。もちろん、医師に対して手土産を持参するのも禁止されています。
内資系であっても外資系であっても、接待がほぼ行われていないことについては変わりがありません。
ただ、外資系製薬会社の中には医師への過度な接待が禁止されている前から、自社ルールとして最初から接待を禁止していたメーカーが何社もありました。そのため、製薬会社の中で接待が禁止されたとはいっても、外資系製薬会社で働くMRにとっては当たり前のことでした。
このように、外資系であるほど医師や薬剤師に対する情報提供活動上での制約が厳しくなります。たとえ医療機関での忘年会があったとしても、外資系MRは社内ルールのために出席できないなどの制約があるのです。
中には「医師にお願いしての講演会」を依頼できない外資系製薬会社も存在します。こうした会社で働くMRの場合、純粋に情報提供だけを業務として活動をしていく必要があります。
ただ、接待を含めた「情報提供活動以外の禁止」を掲げている会社であれば、それだけ公正な情報提供を行えるようになります。「講演会のために、医師の付き人のようなことをして休日をつぶしてしまう」こともなくなるため、よりMRとしての本業に専念できるといえます。
外資系に対して、内資系製薬会社の方が規制は緩くなります。もちろん業界ルールを守る必要はありますが、外資系ほどの制約の中に身を置くこともありません。
内資系よりも、外資系製薬会社の方がリストラは多い
他の違いとして、内資系よりも外資系製薬会社の方がリストラに遭う確率が高いということが挙げられます。
日本では法律によって正社員を解雇できないとされています。つまり、内資系製薬会社は正社員としてMRを雇っている限り、会社都合によって正社員をリストラすることはできません。
それでは、外資系のメーカーではどうかというとリストラが存在します。仕事ができなかったり、思うような成果を出せなかったりするMRに対しては、「猶予期間」を設けることがあります。この猶予期間の経過後でも結果を出せない場合、契約更新なしでそのままリストラされてしまうのです。
例えば、かつて私と同じエリア担当だった「ライバル関係にある外資系製薬会社に勤めていた50代のベテランMR」がいました。噂によるとこの人は仕事ができないらしく、結局のところ会社からMRとしての仕事を与えられずに窓際族となり、結果として退職していったのです。
MRの場合、外資系MRの方が純粋な情報提供活動を行えますが、成果を出せない場合は内資系製薬会社に比べて厳しい現実が待っています。
内資系製薬会社であっても早期退職は存在する
それでは、外資系に比べて内資系のメーカーは正社員を大切にするのかというと、必ずしもそうではありません。当然ながら、内資系製薬会社であっても人員整理(早期退職)を実施することはよく起こります。
このとき、20代や30代のMRは早期退職の対象外になり、40代や50代のMRがその対象になります。早期退職は「勧告」であり、必ずしもそれに従う必要はありません。リストラのように強制的にクビになるのとは異なります。
例えば、以下は大正製薬での早期退職募集です。「勤続10年以上であり、40歳以上の社員」が対象になっています。
それでは、早期退職が必ずしも悪いのかというとそうではありません。早期退職では通常よりも多くの退職金を受け取ることができるため、普通に働き続けるよりも多額のお金を受け取った後に他の会社へ転職する人は多いです。
もちろん、MRとして何も考えずに過ごしていた人では高齢での転職は難しいです。ただ、管理職などマネジメント経験のある人であれば他会社の求人へ応募することで転職できます。
また、そうした管理職経験がない場合はコントラクトMRとして、CSOで働くという手段も残っています。いずれにしても、早期退職を有効活用する人は多いです。
外資系であると職場環境が変わりやすい
他には、内資系よりも外資系のメーカーのほうが、職場環境が変わりやすいです。
例えば、成績が悪いとすぐに他の土地に転勤させられることがあります。また、たとえ自分が転勤をしなかったとしても、自分の上司が何度も変わることは珍しくありません。
その代わり、実力次第では大学病院や基幹病院の担当となったり、マネジメントを経験できたりなど、年齢に関係なく上のポストに就くことができます。
一方で内資系であると、企業にもよりますが落ち着いた雰囲気のなかで仕事をすることが多いです。外資系のように転勤が激しいわけではありません。ただ、成果に応じて給料は上がるものの、営業成績が良いことによる給料への反映は外資系に比べると少ないです。
内資系は中堅製薬会社が存在する
外資系製薬会社として日本で営業活動を行うためには、それだけ母体が大きくなければいけません。そのため外資系のメーカーはどれも大企業ばかりです。多くのMRを保有し、日本で営業活動を行います。
一方、内資系であっても同様に大企業は多数存在します。ただ、外資系とは違って中堅製薬会社もたくさんあります。
日本で研究開発を行い、自社製品の販売を行う中堅製薬会社は外資系企業に比べると非常に規模は小さいものの、日本国内では問題なく活動を展開することができます。
メガファーマと呼ばれる大企業であると、あらゆる分野の医薬品を手掛けるようになります。一方、中堅の製薬会社ではそれぞれ特徴があります。「血液がんに強い」「特定の抗がん剤技術がある」「皮膚科領域に特化している」などです。
こうした会社の場合、新薬は少ないかもしれません。ただ、大手製薬会社とは違って「この分野に特化している」という強みが明らかであるため、どのような医療機関へ営業活動を行えばいいかなどを含め、MR活動が明確になりやすいです。
内資系と外資系で大きな違いがない分野もある
なお、中には内資系と外資系でそこまで大きな違いがないものもあります。そうしたものとして、英語力や年収があります。
外資系であっても英語力は必要ない
一般的に外資系企業といえば、英語力を必要とするイメージがあります。ただMRに関しては、英語力はまったく必要ありません。私の知り合いにも外資系で働いているMRはたくさん存在しますが、英語能力に優れていることはありません。
医師に薬を説明するとき英語を使うわけではありません。MRである以上、英語力よりも営業力の方が重視されるのです。
もちろん、オンコロジー(抗がん剤領域)を担当するなど、高度な情報提供をするときに英語論文を解読する必要はあるかもしれません。ただ、そうした作業であっても社内の学術部門を活用すれば英語を理解できなくても解決できます。
MRは働くときの環境が整っているため、社内の仕組みをうまく活用すれば、たとえ大学病院や基幹病院の担当者であっても英語力を活用せずに営業成績を伸ばすことが可能です。
年収について、内資系と外資系に区別はない
また、年収についても「外資系だから年収が高い」などのような区別はありません。メーカーごとに年収はバラバラです。年収については、転職時に内資系や外資系の求人を特に区別する必要はありません。
もちろん、大手製薬会社ではなく中堅製薬会社になると、年収は低くなりやすい傾向があります。
外資系で中堅製薬会社はほぼ存在せず、どれも大企業なので年収は高く福利厚生は良いです。これについては、内資系の大企業も同様です。ただ、中堅製薬会社のMRになるとどうしても大企業に比べると年収が低くなってしまうということです。
緩い考え方での転職ではいけない
このように、内資系製薬会社と外資系製薬会社では特徴が異なります。すべてのメーカーがこれに当てはまるわけではありませんが、このような傾向があることは理解しておくといいです。
転職を検討しているMRの中には、内資系の求人ばかりを探す人がいます。この裏には「外資系はリストラがあるものの、内資系は終身雇用制なので安心」という心理があるのだと思います。
ただ、このように「緩い考え方によって転職先を決めようとしている人がいる」のも事実です。緩い考え方をしている人の場合、内資系のメーカーであっても、比較的忙しく働く必要のある会社は拒否するのです。
「土日も働いていて大変そう」「給料は高いが、求められるレベルが高そう」などのように考えます。ただ、こうした緩い考え方によって転職先しようとしても、なかなか面接に通過しません。運よく転職できたとしても、MRとして成果を出すのは難しいです。
そのため、内資系や外資系に限らず「どのように行動すればMRとして活躍できるか」を考えるようにしましょう。外資系の方がリストラの可能性が高いとはいっても、平均以上の成果を出せば問題ないだけです。何もトップクラスを目指さなくても、適切にMR活動ができれば戦力として見てくれます。
MRの良いところは、「それまでの学歴が関係ない」ことです。
もちろん、MRは「4年生大学を卒業していること」を必須条件としているため、大学を卒業している必要はありますが、英語は必要なく営業力だけで判断されます。学歴ではなく、社会に出た後のスキルや経験が重視されるのです。
内資系であっても外資系であっても、関係なく成果を出せるMRを目指しましょう。ただ、「外資系では、内資系よりも接待を含めたMR活動上の制限が厳しい」などの特徴があるため、これについては自分が目指したいMRの求人を見定めたうえで応募してみてください。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれ転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができるようになります。
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