MRは転職が盛んな業界の一つですが、これは未経験者からMRになる人だけではありません。MR経験者であっても他の新薬メーカーへ転職したり、CSOへの就職を目指したりするからです。
このときは年収アップのために転職活動をしたり、これまで経験したことのない領域へチャレンジしたりなど、人によって目的が異なります。ただ、いずれにしてもMRとしてはたらいている人が転職するのは普通です。
それでは、経験者MRが退職して他の製薬メーカーへ転職するとき、どのようなことに注意して求人を探せばいいのでしょうか。
経験者MRでの採用は、新卒や未経験での採用とは大きく異なります。そこで、経験者MRが考えるべき転職方法について解説していきます。
もくじ
MRの経験者採用で理解すべきこと
製薬会社はMR未経験の人をほとんど採用せず、経験者採用での募集が大多数です。そのため、新薬メーカーを目指すときは「他の会社で既にMRを経験している」という条件が必要です。
このとき、MR経験さえあればだれでも無条件で転職できるわけではありません。MRの経験者採用とはいっても、求人へ応募して内定が出るためには条件があります。
製薬会社(新薬メーカーやCSO、ジェネリックメーカー)へ転職するときの条件について、以下に記します。
2年以上のMR経験が必要になる
まず、必ず2年以上のMR経験がなければ転職することができません。1年ほどのMR経験で書類選考に通過することはほぼありません。1年の経験ではMRとして実績を出すことはできませんし、仕事内容もほぼ理解できていない新人の状態だからです。どれだけ年齢が若くて活気にあふれていたとしても、1年の経験では少なすぎます。
MRの転職では、「MR経験が2年ある人」「MR経験3年以上が必須」などのような条件が出されています。1年以上の経験でも問題ないと求人募集を出す製薬会社は存在しません。
例えば、以下のバイオ・免疫領域のMR求人では新薬MRの経験が3年以上の人が中途採用に応募できる条件になっています。
もちろん、「MR経験3年以上が必須」を求人に書かれている場合、経験2年であっても書類通過は難しいです。新卒MRであれ中途採用のMRであれ、「MR経験3年以上」と書かれた求人では必ずこの要件を満たした経験年数が必要です。
仕事で3年というのは、ある程度の目安になります。3年経てば仕事に慣れ、医師への説明や勉強会の設定、講演会の主催などあらゆる経験をしているはずです。
そうして成果を出していくため、3年ほどの経験がある場合は「どれだけの年数、MRを経験しているのか」はそれほど重要ではなくなります。ビジネスではすべて実績で見られるため、経験年数よりもそれまでの成果やスキルが重要視されます。あなたの実績が製薬会社の目にとまるのであれば、問題なく転職できます。
転職前、先に退職してはいけない
転職活動を行うとき、「先に会社を辞めて転職活動を行う方法」と「いまの会社に在籍しながら転職活動する方法」の2つがあります。このとき、必ず後者の「いまの会社に在籍しながら転職活動する方法」を選ぶようにしてください。
あなたが薬剤師や看護師などの資格をもっているなど、「どの会社でも受け入れてくれる資格」をもっているのであれば先に退職してしまっても問題ありません。
ただ、MR認定資格をもっていることが経験者採用のMR転職に対して有利に働くことはありません。MRにとってMR認定資格を有していることは当たり前なので、むしろMR認定資格がなければ経験者枠の募集に応募することすらできなくなります。
基本的に既に会社を辞めてしまった人に対して、社会は非常に厳しい目で見ます。転職においても、先に会社を退職してしまうと面接官は「この人はなぜ会社に勤務せず、先に辞めてしまったのだろう」という疑問を抱きます。
退職をすれば、必然的にMRとしてのキャリアにブランクを作ることになります。どのような理由があったとしても、ブランクありの人は現役MRに比べて転職が難しくなります。
しかも、ブランクありの人は「なぜいまMRをしていないのか」という理由を履歴書や面接などで明確に述べなければいけません。先に会社を退職すると、それだけで転職が難しくなってしまうため、必ずいまの会社に所属しながら転職活動をするようにしましょう。
「転職活動に専念する」という理由で退職すると、結果として希望する会社へ転職できなくなってしまいます。
ライバル企業の求人募集に応募しても問題ないのか
中には、それまでライバル関係にあった新薬メーカーの求人募集へ応募し、転職したいと考える人がいます。この場合、実現することは可能なのでしょうか。
あなたがMRとして大きな成果を出している場合、問題なく転職することができます。例えば、以下は中枢神経に関する領域に特化したMR求人の募集です。
ただ、募集には「その他の領域」とあることから分かる通り、中枢神経がメインであるものの他の領域も担当になります。そのため、必要条件に中枢神経以外に呼吸器や感染症、がん領域が記されています。
このとき、必須要件に担当領域が記されていることから、この求人へ応募する場合は確実にライバル企業へ転職し、違う商品を売ることになります。
ただ、ライバル企業への転職では注意点があります。それは、「同じエリアでのMR活動を避ける」ということです。
競合他社へ転職完了した後、同じエリアに留まって得意先の医療機関を引き継いで薬の説明をするとなると、既に医師や薬剤師との信頼関係があって仕事を行いやすいように感じるかもしれません。しかし、実際は逆です。ほとんどの場合で「同じエリアでMR活動を行い、それまで他社だった製品を説明するのは考えられない」と思われ、元同僚からも医師からも信用を失います。
ライバル関係にあたる製薬会社に転職するとき、元同僚MRとは会わないエリアで働くようにしましょう。転勤先についても、そのように調節してもらうといいです。
例えば、私が在籍していた会社では「慶応義塾大学病院などを担当し、東京で活躍していたMR」の人が他社から転職してきたことがあります。循環器などいくつかバッティングする分野が存在しましたが、その人は東京から福岡へ転勤して働くことになったため、何も問題なくMR活動を進めていました。
過去にチャレンジした企業の募集へ応募できるのか
経験者MRが転職するとき、他に考える疑問として「過去に応募したことのある製薬会社の求人に再チャレンジできるのか」ということです。
新卒のときに応募して落ちた会社であれば、問題なく求人へ応募できます。新卒採用と中途採用では判断基準が全く異なるからです。このときはどのような製薬会社であっても問題なくエントリー可能です。
一方、「中途採用で過去に応募した製薬会社やCSO」へ再応募するときは注意が必要です。社風に合わなかったり、経験が足りていなかったりするために書類選考に通らなかったり、面接で不採用になってしまったりした場合、1年程度で再び応募しても受け入れてもらえない可能性が高いです。
ただし、不採用になって2~3年以上が経過した後であれば、再チャレンジして転職に成功する可能性があります。それだけの年数が経過していれば、MRとしての経験や実績も増えています。
医療業界は日々進歩していくため、製薬会社側も考え方を変えている可能性があります。ただ、過去に応募した会社にもう一度チャレンジするときはある程度の年数が必要といえます。
CSOから新薬メーカーへの転職は多い
経験者MRが転職するのは、コントラクトMR(CSO)の経験しかない人が新薬メーカーへの転職を目指すケースも多いです。新薬メーカーの方が年収や福利厚生を含め、好待遇であることが多いからです。
それでは、コントラクトMRから新薬メーカーへの転職を行えるのかというと、問題なく転職できます。
例えば、以下は新薬メーカーから出された呼吸器専門のMRであり、CSO在籍者でも問題ないと記されています。
CSOのコントラクトMRとはいっても、実際の仕事内容は製薬会社に所属するMRと同じです。そのため、新薬メーカーのMRかコントラクトMRかは関係なく、採用面接のときは実績と経験が重視されます。実際、コントラクトMRから新薬メーカーへ転職する人は多いです。
ジェネリックMRや漢方MRは新薬メーカーへ転職できるのか
また、MRとして活躍している人の中にはジェネリックメーカーMRであったり、漢方MRであったりする人がいます。こうした人の場合、新薬メーカーへ転職することはできるのでしょうか。
実際のところ、ジェネリック医薬品や漢方薬を売るときというのは、新薬とは大幅に異なります。少なくとも、新薬発売に伴って医薬品卸MSと協力したり、新たな副作用情報を届けたりすることはほとんどありません。
そのため、ジェネリックMRや漢方MRが新薬メーカーへ転職するのは非常に難しいです。
ただ、CSO(コントラクトMR)であれば、ジェネリック医薬品や漢方薬を取り扱っていたMRであっても問題なく転職できます。そこで、「ジェネリックMR(または漢方MR) → CSO(コントラクトMR) → 新薬メーカーMR」というキャリアステップであれば可能です。
MRで重要となる年収アップ
なお、経験者MRが転職時に気にすることの一つとして年収があります。このとき、転職によって年収アップを実現したいと考える人は多いです。
どのようにして転職時の年収が決まるのかというと、まずはあなたの現在の年収を考慮します。このときは源泉徴収票に書かれている額を参考にします。
さらに、転職先の会社で「同年齢や同じくらいの経験をしている人がどれだけの給料をもらっているのか」も重要になります。どれだけいまの年収が高かったとしても、転職先の会社の給与水準が低ければ当然ながら年収の提示額は少なくなってしまいます。その逆に、給与水準が高ければ年収アップを実現しやすいです。
その後、あなたの実績や経験を考慮した上で年収が決められます。あまり成果を出せてない場合、当然ながら年収アップを実現することはできません。
年収アップを考えるのであれば、なぜそれだけの年収を相手企業が出さなければいけないのかというエビデンス(証拠)を提示する必要があります。そうして、ようやく転職での年収アップを実現することができます。
このとき、担当してきた領域や専門分野、担当施設(大学病院、基幹病院など)、スキル・経験・実績を考慮した上で年収を決めていきます。
MRの募集で出される求人の見方
このとき、経験者採用のMRで出される求人としては、求人で確認すべきポイントがあります。これについて、事前に理解しておかなければいけません。
・「何歳まで」という年齢制限はあるのか
求人票には書かれていなかったとしても、基本的には「何歳まで」という年齢制限があると考えてください。新薬メーカーの求人へ応募する場合、25~35歳の求人が多いです。35歳以上であっても、経験や専門性によっては問題なく転職可能ですが40代になると非常に厳しくなります。
新卒でMRとして入社したとしても、2~3年経験すれば25歳です。そこから35歳まで(遅くても30代まで)がMRとして問題なく転職できる年齢だといえます。
CSOであれば40代や50代であっても受け入れてくれることがあります。ただ、ある程度の年齢になった後、新薬メーカーへ転職するのは難しくなると考えてください。また、やはりコントラクトMRで働く場合であっても35歳以降は非常に厳しくなります。
・エリア制か専門領域制か
MRとして働くとき、エリア制か専門領域制かによって大きく分かれます。エリア制のMRであると、幅広く製品の説明を医師に対して行います。一方、専門領域制であると特定の領域に対して深い専門知識をもった状態で薬を説明します。
製薬会社によってエリア制か専門領域制かは異なるため、どのMRが良いのか確認するようにしましょう。MRの求人には「循環器のMR募集」「免疫疾患領域MR」などのように書かれているため、特定の専門領域のMRとして応募する場合はそうした募集へ申し込むといいです。
例えば、以下は循環器専門のオーファンドラッグMRの求人です。求人票の勤務地は東京になっていますが、MRである以上は全国転勤があるため、次の勤務地はどこになるのか分からないことを覚悟する必要があります。
エリア制ではなく、最初から循環器に特化した募集になっています。また、オーファンドラッグであるため高い専門性を必要としますし、大学病院や基幹病院など専門性の高い病院で薬を説明するようになります。
循環器のオーファンドラッグであれば、「肺動脈性肺高血圧症」「家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」などの治療薬が存在します。こうした難しい病気に対してMR活動を行います。
一方でエリア制の場合、「エリア制での募集」と書かれていることがあります。
なお、中には幅広い人材を集めるために求人票には「MR募集」とだけ書かれていることがあります。この場合、エリア制の製薬会社では専門領域を指定して応募することはできません。
一方、外資系製薬会社など専門領域制を採用している新薬メーカーの場合、「MR募集」と書かれているときであっても、それまでの経験やスキルに応じて専門領域別に振り分けられます。
オンコロジー(抗がん剤領域)へ申し込めるのか
専門領域制MRの中でも、特に高い専門知識が要求される分野としてオンコロジー(抗がん剤領域)があります。オンコロジーの専門MRとして活躍してきた人であれば、問題なく他会社のオンコロジーMRの求人へ応募することができます。
それでは、オンコロジーを経験してきたことのないMRはこうしたオンコロジーMRとして転職できるのでしょうか。
多くの場合、新薬メーカーはオンコロジー経験者を求めています。そのため、求人票への応募要件として「オンコロジー経験2年以上のMR」などと限定していることが多いです。
ただ、オンコロジー未経験のMRであったとしても、大学病院や基幹病院などを経験したことのある人であれば、オンコロジーMRとして転職できることがあります。例えば、以下のようにオンコロジー未経験であっても受け入れてくれる求人へ応募するのです。
ここにある通り、3年以上の新薬メーカーでのMR経験があれば問題ありません。また、基幹病院や大学病院を担当した経験があればいいため、多くのMRが当てはまります。
抗がん剤という性質上、オンコロジーMRは他のMRに比べてかなりの勉強量が必要になります。勉強会の開催や本人の人間力で商品を売るというよりも、高度な学術知識によって医師に薬を説明していく必要があります。
クリニックに対して「MSと連携しながら薬のPRをする」などのような営業方法とはまったく異なります。MSと連携するよりも、病院で薬が採用される仕組みを把握しながら、病院の医師や薬剤師に対して独自で営業活動を展開しなければいけません。そのため、オンコロジーMRへの転職では大学病院や基幹病院での成果が求められるのです。
なお、CSOによっては「未経験であってもオンコロジーを担当できる」ようになっていることがあります。製薬会社のオンコロジーMRへ応募するとき、CSOで抗がん剤経験がある場合であっても問題ないため、コントラクトMRを経て新薬メーカーのオンコロジーMRとして活躍するというキャリアパスも存在します。
転職サイトを利用して求人を探す
このとき、どのようにして経験者MRが中途採用の求人募集を探せばいいのかというと、一つはコネクションがあるものの、多くは転職エージェントの利用になります。
ここまで、いくつか実際の求人票を提示してどのようなMRの募集があるのか解説してきました。これらは、どれも転職サイトに掲載されていた求人票になります。
ただ、製薬会社が出す求人の多くは非公開求人になりやすいです。下手に求人票を表に出すと、そうした情報から「どのような製品に注力しているのか」「どのエリアが手薄なのか(求人を出している主要なエリアはどこか)」などの情報が万が一にでも漏れないようにするためです。
また、一つの転職サイトが保有する求人数はどうしても限られます。そのため、多くのMRが2~3社の転職エージェントを活用します。経験者MRが一社だけの転職サイトを利用して転職成功さえられることは稀だからです。
こうしたことを理解したうえで、複数の転職サイトを活用することでいくつもの製薬会社の求人から最適な募集へ応募するようにしましょう。
MRとして早めの経験者転職を果たす
経験者採用でのMR転職を考えるとき、人によって求めているものが異なります。オンコロジーやオーファンドラッグを含め新たな領域のMRへチャレンジしたい人がいれば、中堅製薬会社から大手へ転職したい人もいます。
新薬メーカーの求人を探し、コントラクトMRから製薬会社への転職を果たす人もいます。人が違えば、転職によって叶えたい希望が異なります。
ただ、このときは年齢が若いときであるほど転職に有利です。2~3年以上のMR経験があれば、求人募集の基準値を満たしていれば早めに転職を決断したほうがキャリアップを実現することができるのです。
そのため自分がどのようなMRを目指すのかを見据え、転職サイトを活用しながら良い求人を探すようにしましょう。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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