イギリス・ケンブリッジに本社がある外資系製薬会社としてアストラゼネカがあります。世界的な大手製薬会社がアストラゼネカであり、日本法人を有しています。

当然、多くのMRを保有しておりMRとして中途採用へ応募するときは転職先候補となる会社の一つです。そこで、アストラゼネカの特徴や強みを理解したうえで求人へ応募しなければいけません。そのために必要な情報について確認していきます。

アストラゼネカの歴史

会社の歴史をみれば、強みとする領域を含め会社が考えていることがみえてきます。これはアストラゼネカも同様であり、まずは歴史からみていきます。

アストラゼネカはイギリスの大手化学メーカーICI(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)の製薬部門が独立してできたゼネカ(ICIファーマ)と、スウェーデンに本社があった北欧最大のアストラが合併してできた会社です。

ゼネカの歴史

ICI(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ)は1926年に設立されました。4つの会社が1926年に合併してできた会社であり、当時から巨大企業でした。

会社名を日本語訳すると「帝国化学産業」になります。日本にも古くからある大会社であれば、そのような社名の会社が存在します。これのイギリス版だったわけです。

爆薬・肥料・殺虫剤・染料・化学品・印刷用品などの製品を取り扱い、医薬品もビジネスとして行うようになります。

例えば1963年には乳がん治療薬ノルバデックスを自社創薬します。また、1964年には高血圧や不整脈の治療で活用されるβ遮断薬インデラルを開発しました。世界的に広く活用されている医薬品開発を行っていた製薬会社だったのです。

これが1993年にICIから分社化し、ゼネカが誕生しました。ノルバデックスやインデラルを創出していることから、オンコロジー(抗がん剤領域)や循環器領域に強みをもつ会社でした。

アストラの歴史

一方でアストラは1913年にスウェーデンで創業されました。ゼネカと同様、アストラも多くの新薬を創出しています。

例えば、局所麻酔薬として現在でも医療現場で多用されるキシロカインはアストラによって創出されました。有効成分のリドカインが1943年に合成され、1948年にはアストラから販売されるようになったのです。

他にも、消化性潰瘍治療薬オメプラールを開発するなど、画期的な新薬を世の中に送り出しています。消化器や呼吸器、麻酔などの分野に強みをもつ製薬会社でした。

日本では1975年に藤沢薬品(現:アステラス製薬)と提携し、藤沢アストラ株式会社を設立します。ここから、日本での本格的な活動を行うようになりました。

アストラゼネカの誕生

そうして1999年にゼネカとアストラが合併します。これにより、アストラゼネカが誕生しました。

日本ではゼネカが自社創薬した閉経後乳がん治療薬アリミデックスや統合失調症治療薬セロクエルなどが2001年に発売されるなど、アストラゼネカは多数の新薬を保有するようになります。

また、良い意味でも悪い意味でもアストラゼネカが自社創薬した薬の中で有名なものとしてイレッサがあります。イレッサは非小細胞肺がん治療薬ですが、イレッサ訴訟として薬害をもたらし当時は社会現象にまでなりました。

その後も自社で創出した乳がん治療薬カソデックス、消化性潰瘍治療薬ネキシウムなどが発売されています。

イレッサ訴訟の問題

かつてのイレッサ訴訟について、MRである以上は必ず知らなければいけない問題です。

それまでの抗がん剤は「細胞増殖の速い細胞をターゲットにして毒性を示す」というものが一般的でした。そうした中、「がん細胞に特徴的な機構を狙い撃ちする」という分子標的薬が登場するようになりました。イレッサは分子標的薬の一つであり、当時は抗がん剤であるにも関わらず副作用が少ない「夢の薬」と考えられていました。

そうした期待されている中で薬の臨床試験が終わり、薬が発売されるようになったのですが、実際のところイレッサを投与した患者さんで多くの副作用がみられるようになりました。

特にイレッサの重篤な副作用として間質性肺炎が知られています。呼吸困難に陥るなど、かなり重い副作用です。そしてイレッサの発売後、間質性肺炎や急性肺障害による副作用が相次いで報告されるようになりました。

発売された2002年7月から2006年3月末まで、間質性肺炎や急性肺障害の副作用を起こした人は1631人にのぼり、そのうち634人の死亡が確認されました。

世界に先駆けて日本で発売された薬がイレッサです。イレッサは遺伝子の関係で東洋人に効果を示しやすい薬だったため、日本で最初に発売されました。ただ、世界での使用事例がないということは、それだけ「どのような副作用を生じるのか分からない」ことだといえます。

そうした中、「副作用が少ない薬だ」とMRが宣伝して薬が活用されると、結果として医療に貢献するどころか「副作用によって患者さんに不幸をもたらす」ことがあるのです。こうした事例があったことを理解し、慎重投与を含め適切な情報提供をMRは心掛けなければいけません。

アストラゼネカでのMRの営業評価

次に、実際にアストラゼネカで働くときのMRとしての営業評価について確認していきます。

アストラゼネカの場合、年収は業界平均ほどです。外資系の大手製薬会社ではあるものの、他社に比べて年収がかなり高いというわけではありません。MRで支給されるボーナスに「業績ボーナス(成果に応じて出されるボーナス)」があり、アストラゼネカの場合、成績が悪ければ数万円しか支給されなかったり、支給額ゼロだったりします。

MRとして成果を出すことはもちろん、上司に気に入られるかどうかも給料に響いてきます。なお、アストラゼネカの大きなデメリットとして給料が上がりにくいことがあります。

日当については、他の会社に比べて3600円と高めです。日当は非課税であり、月20日働くとなる7万2000円にもなります。年間80万円を超える非課税のお金が手元に入ってくるため、非常に大きなメリットといえます。

住宅手当などの家賃補助も手厚く、年収は平均であっても福利厚生は充実しています。

ただ、アストラゼネカの場合は評価制度を含め、会社の方向性は頻繁に変わります。そのため、社内制度が変わったとしても臨機応変に対応しなければいけません。当然、その分だけ現場は振り回されることになります。

アストラゼネカの特色・評判

女性への特別な優遇は少ないものの、管理職女性については増やそうと努力しています。土日は休むことができますし、上司によりますが有給休暇も取得しやすいです。

なお、アストラゼネカでは外資系であることもあり、リストラなどを含めた社員整理を行うことがあります。組合がないため、リストラは普通に行われる可能性があるのです。

その代わり、成果を出せば若いときから重要なポストに就くことができたり、MR以外の職へ異動できたりとチャンスは大きいです。成果主義であるため、MRとして成績を残せる人であるほど活躍できる組織です。良くも悪くも外資系としての特色が濃い製薬会社です。

アストラゼネカの主要製品

アストラゼネカが扱う製品では臨床データが多く存在し、またエビデンスがしっかりしていることが多いので自信をもって製品を勧めることができます。

それでは、アストラゼネカはどのような製品を取り扱っているのでしょうか。主要製品を確認することによって、アストラゼネカの強みや特徴を理解できるようになります。

代謝・循環器

糖尿病を含め、代謝・循環器領域でアストラゼネカは新薬を有しています。プライマリー・ケア領域のMRとして転職する場合、こうした薬を取り扱うことになる可能性があります。

・糖尿病治療薬:フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)

糖尿病では血液中の糖濃度が異常に高くなっています。そこで、尿中から糖がたくさん排出されるようになれば、それだけ血糖値を下げることができます。

腎臓で尿が作られるとき、尿には多量の糖が含まれています。ただ、このときの尿は管を通って膀胱へ移動する間に血液中へと移行します。このとき、「糖を血液中へ移動させる担体」としてSGLT2が知られています。ファシーガはSGLT2阻害薬であり、原尿に含まれる糖が血液中へ移行する過程を阻害します。

・糖尿病治療薬:バイエッタ、ビデュリオン(一般名:エキセナチド)

糖尿病の治療で重要な物質としてインスリンがあり、インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。インスリンの作用を強めることができれば、血糖値を下げることができます。

インスリン分泌に関わる物質としてGLP-1が知られています。そこで、GLP-1を外から補うことができれば結果として血糖値を改善できるようになります。バイエッタは1日2回投与の薬ですが、ビデュリオンは1週間1回投与の薬です。

・抗血小板薬:ブリリンタ(一般名:チカグレロル)

動脈などで血栓ができると、狭心症を発症したり心筋梗塞に至ったりします。血液がドロドロの状態であり、動脈硬化が進むと血栓生成のリスクが高まります。

そこで、血小板が固まる過程を阻害することで血栓の生成を防止する薬がブリリンタです。血栓が作られないようにすることで、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを予防します。

消化器疾患

オメプラール(一般名:オメプラゾール)を自社創薬したことから、アストラゼネカは消化器疾患の薬も保有しています。

・消化性潰瘍治療薬:ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)

胃潰瘍や十二指腸潰瘍を生じる原因として胃酸が知られています。胃酸が分泌されなければ潰瘍を生じることがないため、どれだけ胃酸を抑制できるのかが重要になります。

胃酸分泌に関わる器官としてプロトンポンプが知られています。ネキシウムはプロトンポンプを阻害することで強力に胃酸分泌を抑制します。こうした作用から、ネキシウムはプロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれます。

呼吸器

ぜんそくやCOPDなど肺・気管支が関わる疾患に悩まされる人は多いです。こうした病気に対して、吸入薬などを活用した治療を提供します。

・喘息治療薬:シムビコート(一般名:ブデソニド、ホルモテロール)

気管支喘息などの症状では、気管支に炎症が起こることで気道が狭くなっています。そこで気道を広げ、気管支で生じている炎症を取り除くことができれば、ぜんそくやCOPDの症状を改善できるようになります。

ブデソニドはステロイド剤であり、強力に炎症を抑制します。また、ホルモテロールはβ2刺激薬と呼ばれ、気管支を拡張させる働きがあります。吸入薬であるため、肺や気管支だけに作用して副作用はほとんどありません。この2剤を吸入薬として同時に服用できる薬がシムビコートです。

疼痛

痛みの分野についてもアストラゼネカは薬をもっています。

・片頭痛治療薬:ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)

片頭痛の発生機序は詳しく分かっていないものの、脳血管の拡張によって神経に痛みが伝わり、激しい頭痛を生じるようになると考えられています。

ゾーミッグは脳血管を縮小させることによって、片頭痛による痛みを強力に取り去ることができます。トリプタン製剤と呼ばれる種類の薬になります。

オンコロジー(抗がん剤領域)

アストラゼネカが強みをもつ領域にオンコロジーがあります。オンコロジーMRとして活躍したい場合、アストラゼネカへの転職が一つの選択肢になります。

・乳がん治療薬:ゾラデックス(一般名:ゴセレリン)

・乳がん治療薬:アリミデックス(一般名:アナストロゾール)

・乳がん治療薬:フェソロデックス(一般名:フルベストラント)

性ホルモン(エストロゲン)の働きによって活性化するがんとして乳がんが知られています。乳がんは女性に特有のがんです。そこで、エストロゲンの働きを弱めることができれば、結果として乳がんを治療できるようになります。

ゾラデックス、アリミデックス、フェソロデックスはエストロゲンの働きを弱めることで作用を示します。それぞれ作用機序は異なりますが、いずれにしても女性ホルモンに働きかけます。ちなみに、ゾラデックスは前立腺がんの治療にも活用されます。

・前立腺がん治療薬:カソデックス(一般名:ビカルタミド)

・前立腺がん治療薬:ザイティガ(一般名:アビラテロン)

乳がんと同じように性ホルモンが関わるがんとして前立腺がんが知られています。前立腺がんは男性で多いがんです。前立腺がんでは男性ホルモン(アンドロゲン)によって前立腺がんが大きくなるといわれています。

そこで男性ホルモンの働きを抑えることによって前立腺がんを治療する薬がカソデックスやザイティガです。それぞれ作用機序が異なるものの、いずれもアンドロゲンの作用を抑制させるメカニズムによって前立腺がんを治療します。

・肺がん治療薬:イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)

分子標的薬と呼ばれ、世界に先駆けて日本で発売された非小細胞肺がん治療薬がイレッサです。チロシンキナーゼと呼ばれる「細胞増殖に関わるシグナル」を阻害することで抗がん作用を示します。

遺伝子の中でも「EGFR(上皮細胞成長因子受容体)に変異がある人」はイレッサが効きやすく、こうした人は東アジアに多いです。そのため日本で発売されたのですが、前述の通り薬害を引き起こして社会問題になりました。

アストラゼネカのMRへ転職し、活躍するための準備をする

他にもキシロカインを自社創薬した会社であるため、製薬会社では珍しく麻酔の分野に強みをもっています。ただ、MRとして転職したときに活躍する場合、主にプライマリー・ケア領域やオンコロジー領域のMRとして活動することになります。

アストラゼネカは良い意味でも悪い意味でも外資系であり、評価制度や会社の方針を含め頻繁に変わっていきます。そうした環境に対応しなければいけません。

ただ、保有している製品自体は非常に優れたものが多いです。特にオンコロジーでは有力な新薬をたくさん有しているため、オンコロジーMRとして活躍するときはMR活動を行いやすいです。

中途採用として求人へ応募するとき、その会社の歴史や保有している薬を知ることは必須です。そこから会社の強みや特徴を探し、志望動機につなげる必要があるからです。アストラゼネカでどのような活躍ができるのかについて、考えたうえで自己PRしてみてください。


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