製薬会社の営業職としてMRが存在します。MRを目指す人は多く、年収も高いのでMRとしてずっと活躍し続ける人はたくさんいるのです。

ただ、同じようにMRをするにしても営業成績の悪い人がいれば、トップMRとして成果を残し続けている人もいます。それでは、どのようにすれば成績の悪い状態からトップを目指すことができるのでしょうか。

営業成績を上げるときのコツとしては「既に大きな成果を出している人にそのやり方を教わる」ことがあげられます。ビジネスでは既に大成功している先輩がいるため、その人たちに方法を聞くのは自分の営業能力を手軽に上げる方法として優れています。

今回、大手外資系製薬会社のMRとして勤務し、2500人ほどの同僚MRがいる中、年間達成率で社内1位になった35歳のMRへ取材しました。そこから、どのようにしてMRとして活躍すればいいのかのヒントになればと思います。

※便宜上、取材したMRを「Yさん」とし、インタビュアー(私)は「管理人」と表記します。

トップMRとして活躍するための秘訣

・管理人

それでは、取材を始めたいと思います。まず、どのような営業成績を残したのか教えてもらってもいいでしょうか。

・Yさん

私が社内でトップになったのは年間の達成率での1位です。

担当の製品はいくつかあり、それぞれに対して目標が課せられていきます。一ヵ月ごとや数ヵ月ごとの達成率が設定されるようになりますが、一つの月だけ商品が売れていても意味がありません。毎月、きちんと数字を達成させる必要があります。

私の場合、例えば「一番重視されている製品」の1年間の予算額は1500万円でした。ただ、この商品の1年の販売額が3400万円ほどだったので、この商品に関していえば達成率227%程度です。

また、他の商品の売上も好調だったので、結局のところ年間の予算額を大きく上回って社内1位になってしまいました。

・管理人

それはすごいですね。元々、営業成績は良かったと伺っていますが、過去の話から順に話してもらってもいいでしょうか。

特に最初はMRではなく、他の営業職として働いていたのですよね。

・Yさん

そうです。新卒のときは一般用医薬品や置き薬などを販売する会社の営業職でした。その中で私は置き薬部門を担当することになりました。ノルマは「1日10件、新規で置き薬を置いてもらう」ことです。

要は、訪問営業としてピンポンを押しまくり、そこから薬を置いてもらうように交渉するわけです。「まったく費用はかからないので、まずは置かせてもらえないか」などのように主婦の奥さんを口説き落とすのが仕事でした。

これを全国各地で行い、ずっとビジネスホテル暮らしを続けていました。

・管理人

それは強烈な仕事をしていましたね。そこから、なぜMRを目指すようになったのですか。

・Yさん

単純に給料が低かったため、高年収を実現するためにMRへ転職しました。新卒で入社した置き薬の会社は給料体形が特殊であり、毎月20万円の給料のうち、「固定給が10万円、営業成績に応じた成果が10万円」という内容でした。

つまり、固定給が非常に低いです。営業成績に応じた成果とはいっても、大きな成果を出してもそこまで給料は高くありません。さらに、ボーナスは20万円ほどしかありませんでした。

そうしたとき、知り合いに医薬品卸の営業(MS)がたまたまいて、某外資系製薬会社がMRの求人を出していることを教えてくれました。そこで、躊躇なく履歴書を提出して、求人へ応募することにしました。

当時はコントラクトMRという概念がほとんどなく、製薬会社のMRとして直接面接を受けにいくことになったわけです。

このときは北海道の函館にいたのですが、面接のために「札幌のチサンホテルへ来てほしい」と応募した製薬会社から連絡が入りました。そこで、昼間から面接を受けに行きました。

当然、その日の営業成績はゼロになったので会社からはいろいろ言われたが、「天気が悪かったから仕方なかったです」のように適当なことを言って切り抜けました。

そうすると一次面接に受かってしまい、次は最終面接になります。このときの面接にも受かり、内定をもらって6月に外資系製薬会社のMRとして働くことになりました。

置き薬の会社に在籍していたのは3年ちょっとになります。

MRとして頑張るも、MR認定試験に落ちてボーナスカット

・管理人

では、社会人4年目のときに転職したというわけですね。

・Yさん

そうです。異業種からMRへ入社した人では全員共通しますが、最初は研修を受けることになります。私の場合、入社して3ヵ月間は缶詰めの状態でMR認定試験のために研修を受けていました。

その後、最初の配属として埼玉県さいたま市に1年半くらいいて、その後に1年半くらい埼玉県所沢市で営業活動をしていました。

ただ、1年目のMR試験に1教科を残して落ちてしまいました。その結果、ボーナスカットになってしまい、7ヵ月分のボーナスがゼロになりました。MR認定資格がなくても実務に支障はありませんが、年収の面では大きな打撃を受けました。

・管理人

それは悲惨でしたね。ただ、営業成績ではここでも大きな成果を出したと聞いていますが何をしたのでしょうか。

・Yさん

MR試験自体は2年目で受かったのですが、MR2年目ではある程度の成績も残すことができたと思います。

このときは社内で子宮頸がんワクチンを新たに発売することになったのですが、子宮頸がんワクチンを売るためのターゲットは産婦人科です。そこで、発売の1年前から産婦人科に通い詰めるようにしました。

新薬が出るとき、実際に発売になって一生懸命営業するMRがほとんどです。ただ、それでは遅いです。新薬が出ることは前から分かっているため、先手を打って準備する必要があります。

また、意識したのは「キーとなる医師へアプローチする」ことです。キーとなる医師を口説き落として商品を気に入ってもらえれば、その後は頑張って営業しなくても口コミなどで勝手に商品の存在が広まってくれるようになるからです。

そのキーとなる医師は病院勤務ですが、本来は水曜日の16:00からしか会えません。そこで私は、病院内をウロウロと歩くことにしました。病院内を歩いていると意外といろんな医師と会うことができます。実際、キーとなる医師の先生とも廊下で何度かすれ違い、その場での会話を何度も実現することができました。

産婦人科の病院で女性しかいない中、男性が病院内を歩き回っていた姿は、周りから見たらかなり怪しかったと思います。ただ、漠然と病院内で突っ立っているMRよりも、実際のところ病院内を歩き回っているMRの方が多くの医師と会話でき、はるかに良い成果を出すことができるといえます。

当然、医師との話を進めると共に薬局長とも仲良くなって、製品が採用されるようにプロモーションを実施してきました。

そうした活動を1年かけて行い、発売と同時にキーとなる医師が勝手に口コミをしてくれて、周囲のクリニックを含めて子宮頸がんワクチンが自動で広がっていきました。その結果、子宮頸がんワクチンの販売実績で全国一位を取ることができました。

成果を残すも、年収の低さから転職を決意

・管理人

なるほど。戦略的に考えて事前にアプローチしていき、結果として新薬販売でトップ成績を残すことができたのですね。

ただ、それだけ大きな成果を残しているにも関わらず、なぜ他の製薬会社へ転職したのでしょうか。

・Yさん

他の同僚MRと比べて、明らかに待遇が悪かったからです。

前に話した通り、新卒で入社した会社は毎月20万円の給料でした。ボーナスは20万円ほどです。そうしたとき、MRとして製薬会社へ入社するとき、年収395万円を提示され、このときは単純に前の会社よりかなりの高年収だったので喜びました。

ただ、実際にMRとして働き始めて数ヵ月ほど経ったとき、「自分の年収は新入社員のMRよりも低い」ことに気が付きました。そこで改めて給料計算をしてみたのですが「どれだけ大きな成果を残したとしても、同世代で平凡な成果を残している人よりも高い年収にならない」ことが分かったわけです。

たしかに転職で年収は上がりましたが、それはMR業界全体で考えるとかなり低い年収でした。どれだけ頑張っても普通の成果を出している同世代の年収を上回ることができないのであれば、この会社に残る意味はないと考えたわけです。

会社の先輩にも相談しましたが、事情を知っているためか同僚にも関わらず「他の製薬会社へ転職した方がいい」というアドバイスをもらいました。

・管理人

そういう理由があるなら、確かに転職して他の製薬会社のMRとして働いた方がいいですね。ちなみに最初の転職のときは、前のお話から転職エージェント(転職サイト)などは活用されていないようですね。

・Yさん

はい、最初の転職では転職エージェントは使いませんでした。あまり転職について分かっておらず、いまでは転職エージェント(転職サイト)を利用しておけばよかったと考えています。

2回目の転職では転職エージェントを活用したのですが、このときは年収の交渉や勤務条件を含め、求人候補のピックアップを含めてすべてセッティングしてくれました。

もしかしたら、1回目の転職から転職サイトを活用しておけば、「新人MRよりも低い年収での転職を防ぐことができた」のかもしれません。ただ、2回目の転職ではMRとしての実績もあり、転職サイトのコンサルタントに頼ったことでかなりスムーズに他の外資系製薬会社(いまの会社)へ転職することができました。

戦略的に医師へ商品プロモーションを行う

・管理人

では、求人選定を含め転職自体はうまくいったため、いまの会社でMRとして働き続けているわけですね。

それでは、新たな会社ではどのようにして製品を売っていったのでしょうか。

・Yさん

まず、自社商品の関連性に注目ました。例えば、新たに入った会社では神経痛の治療薬が発売になり、これを何とかして売ってくる必要がありました。

そこで調べてみると、入社した会社は感染症領域に強く、有力な帯状疱疹の治療薬を保有していました。帯状疱疹の薬を処方するのは主に皮膚科であるため、皮膚科であればプロモーションやすいすいです。帯状疱疹によって神経痛を訴える患者さんは多いため、神経痛治療薬を売るためにまずは皮膚科へ通うようにしました。

このとき、皮膚科医の中でもキーとなる先生へアプローチします。子宮頸がんワクチンで全国一位になったときと同じように、キードクターを見極めたわけです。

私の場合はたまたま、入社1年目から大学病院の皮膚科キーオピニオンリーダー(KOL:医薬品販売に大きな影響力をもつ医師)を担当することができたため、病院へ何度も通うことで信頼を得ることができました。そうすると、その先生が勝手に薬の口コミをしてくれて販売成績は好調を維持することができました。

・管理人

やはり、キーオピニオンリーダーを攻めることが重要なのですね。

それでは、営業成績(販売実績)が全国1位になったときはどのようなことを実践したのでしょうか。何か特別な営業方法があったのでしょうか。

・Yさん

特別なことは行っていませんが、あるとすれば「できるだけ裏から攻める」ことだと思います。現在、MR活動は規制が厳しいため正攻法で攻めてもうまくいきません。そこで、何とかして正攻法ではない方法で医師と連絡を取ったり会ったりするのです。

例えば私が全国1位になった大きな理由として「大病院で主力製品の薬が採用になった」ことがあげられます。このとき、特殊な経緯で新薬が採用になりました。仮に、この病院をA病院とします。

まず、A病院ではMRの立ち入り自体が禁止です。私はA病院の担当ですが、これまで一度も敷地内に入ったことがありません。

しかも、新薬が病院で採用になるためには、どの病院でも院長先生を口説き落とす必要があります。ただ、A病院の院長先生は放射線科なので、どれだけ新薬の話をしたとしても響きません。例えば、病院外であれば医師と会うのは問題ないため、講演会などで院長先生に新薬の重要性や優位性を説明するのですが、まったく効果がないのです。

そうしたとき、他の病院からA病院の副院長として新たに医師が転籍するという話をキャッチすることができました。このとき、同僚MRがその医師のメールアドレスを知っていたため、教えてもらうことにしました。

さっそく、A病院に副院長として転籍予定の先生にメールを送ったところ、非常に感触のいい先生ですぐにメールの返信がありました。そこからメールを交わすようになったのですが、私たちの会社が力を入れている主力製品を高く評価してくれました。

そのためか、A病院の副院長として転籍した後、その先生(副院長)が院長先生に対して会社の主力製品をアピールしてくれたおかげで、大病院で新薬が新規採用となりました。その結果、私の販売実績がある月から2~3倍になったわけです。

制限の厳しい得意先を攻略する方法

・管理人

それはすごいですね。それでは、A病院に勤める副院長の先生とは実際に何度も会っていたということなのでしょうか。

・Yさん

いえ、副院長の先生とはメールのやり取りだけでした。制約の厳しい病院だったので、実際にお会いできたのは病院で新薬が採用された半年後でした。

このときは私の会社が主催する講演会に招待して、講演会で私は受付をしていました。受付では名簿(所属病院と名前)を書いてもらうため、このときにようやく「A病院の副院長の先生がどの人か」が判明できたのです。それまでは顔も知らなかったのですが、ようやく講演会で初めて会ってあいさつをすることができました。

実は副院長の先生を講演会へ招待するときにも工夫が必要でした。病院へ招待状を送ることができなかったのです。

A病院では事務がすべての書類の封をあけて中身をチェックするため、私が副院長の先生へ講演会の招待状を送ると、「副院長の先生と私が裏でやり取りしている」ことがバレてしまいます。そこで、副院長の先生の自宅に案内状を送るようにしました。

・管理人

MRは規制があって医師となかなか会えないため、その中で商品のプロモーションを実施していく必要があるので大変ですよね。

ただ、そうした会えない中でも何とかしてアプローチできる手段がないかを考えることが成果を出す秘訣なわけですね。

・Yさん

その通りです。表だって会えないことが多いため、裏で接点をもつしかありません。

ただ、「裏で接点をもつ」とはいっても悪いことをしているわけではありません。現在のMRは接待やゴルフを含めてすべて禁止であり、私はそれをしていません。また、今回の新規採用はメールだけのやり取りだけなので裏で会ってはいません。

しかし、何とかしてアプローチできる手段がないかを考えるのは必須です。

子宮頸がんワクチンで全国1位の実績を出したときであっても、アポイント可能な時間は「水曜日の16:00」と決まっていましたが、病院内を歩き回れば多くの医師と会うことができます。表で会うのではなく、このように正攻法ではない方法で医師と会えないかをMRは考えるべきです。

出入りしやすい病院やクリニックの場合、MRは営業活動をしやすいように思えます。ただ、それはどの会社のMRでも同じ条件であり、ライバル会社が医師に対して製品のアピールをしているわけです。

ただ、制限の厳しい病院やクリニックであれば、裏で接点をもてるルートを見つけ出すことができれば一人だけ抜き出ることができます。

手間をかけられるMRほど営業成績が高い

・管理人

どれだけ医師と会って信頼関係を構築できるかが重要になると思いますが、他にはどのようなことを意識して実践しているでしょうか。

・Yさん

一見すると関係ない人であっても、訪問したり貢献したりすることを意識しています。

例えば医者の場合、家族も医師である可能性が高いので家族へアプローチするのは一つの手段です。私の場合は会社が循環器や疼痛の薬を扱っているのですが、「あまりMRを信用せず、普段は話をしてくれない医師会長」と仲良くなるため、奥さんへアプローチしたことがあります。

奥さんは小児科の医師であるため、循環器や疼痛などの薬とはほぼ無縁です。ただ、奥さんのいる小児科病院へ通っているうちに奥さんに信頼され、医師会長からも「いつも妻がお世話になっている」と感謝の言葉を言われるようになり、結果として医師会長とも信頼関係を作ることができました。

他のMRは医師会長にプロモーションできない中、私の場合は例外的にまったく問題なく話を聞いてくれます。

今回の「循環器や疼痛などの薬」の場合、多くの人は「小児科だから」「担当施設でないから」という理由だけで訪問しません。ただ、一見すると遠回りに思えることであっても、戦略的に考えれば最短で営業成績を伸ばす方法であることはよくあります。

今回はたまたま奥さんでしたが、息子や娘がキーになるかもしれません。医師のお父さんを攻略することで、信頼されるようになるかもしれません。

相手に対して貢献することだけを考え、医師から感謝されるようになれば信頼されるMRとして話を聞いてくれるようになります。やはり、仕事をするときは感謝されないと意味がありません。ただ、私の場合は貢献すべき人の対象が他のMRに比べて少し異なるというだけです。

・管理人

医師に感謝してもらうことが重要なわけですね。

・Yさん

そうです。「感謝してもらう」ということは、悪い言い方をすれば「恩を売る」ことになります。そうしなければ、新薬が採用になることはありません。

医師に恩を売り、「ありがとう」と言われることがMR活動を行う上で一番重要です。医師から「そこまでしてくれなくても大丈夫」と思われることが私の使命です。

キーとなる人に対して貢献すれば、結果として営業成績は勝手に上がっていきます。

私の場合、他にも「在宅の先生」にキーとなる医師がいます。この先生に対しても積極的に貢献をしています。在宅では患者さんが来院するための建物は存在せず、医師から患者さんの家に訪問する形態です。そのため、医師は事務所にいるのですが、いまでは電話をしてアポを取ればすぐに訪問できるほどの関係を構築できています。

仕事を楽しめるかどうかがMRでは重要

・管理人

ただ、医師と信頼関係を築くとはいっても、中には医師の雑用係になることを嫌ったり、プライベートの充実を優先したりするMRもいます。

それについてはどのように考えるでしょうか。

・Yさん

確かにそういうことはありますが、私の場合はどれも楽しみながら行っています。最近であれば、医師に誘われてマラソンを始めることになりました。以前の勤務地では、医師とバンドを組んでいたこともあります。

営業成績の高い人であるほど、仕事をあまり仕事と考えていません。趣味の一環として、楽しみながら行っています。

例えば、医師に誘われて休日に一緒に学会へ行くことになったとき、どのように思うでしょうか。このとき、「休みの日なのに仕事か!」と考える人は正直MRに向いていません。もっといえば、MRに限らずあらゆる営業職に向いていません。

ただ、医師と一緒に学会に参加する場合は多くの知識を吸収できます。分からないことがあれば、同行してくれる医師に質問すれば喜んで教えてくれます。また、学会では夜の飲み会がメインになるため、医師を介して他の医師を何人も紹介してくれます。知識が増えるだけでなく、人脈まで紹介してくれます。

医師の人脈があればその後の仕事を行いやすくなりますし、営業成績も伸びやすくなります。営業成績が上がっていくようになれば、結果として仕事が楽しくなります。目に見えて数字が上がっていくからです。

そのため、私の場合は医師に誘われたときはチャンスだと考えています。そもそも、信用されていなければ医師から誘われることはありません。

・管理人

確かに、どうせなら楽しめた方がいいです。私の周りでも、営業成績の高い人であるほど医師からの誘いをチャンスととらえています。

・Yさん

例えば、休日に医師と一緒にマラソンをすることを「仕事」と思うのか、「趣味の一つとして楽しく過ごせる」のかによって営業成績は大きく違ってきます。

また、MRの本質は「医師ができないことを補う」ことにあります。そこで、患者さんの治療を行うために必要な文献があれば、それを取り寄せます。パソコン操作で分からないことがあれば、その場でやり方を教えることもあります。

医師であっても人間である以上、完ぺきではありません。そこで、医師の能力を補うことで120%の力を発揮させることのできるMRが感謝され、信頼されるようになります。

こうしたことに対して面倒だと感じているMRであるほど、営業成績が伸びることはありません。

・管理人

医師に情報提供をするというよりも、「医師が欲しているものを探った上でそれを提供する」ことが重要になるわけですね。

ちなみに、「新薬採用のアピール」や「他剤から自社商品に切り替えてほしいというアクション」をすることはあるのですか。

・Yさん

他のMRは分かりませんが、私の場合はそのようなアクションをすることはほぼありません。

そもそも、自社商品の売込みばかりするMRの話を聞きたいと思う医師はいるでしょうか。そのような医師の先生はほぼいないため、自分から売込みをしないようにしています。

ただ、医師に「ありがとう」と感謝の言葉を述べられるようになれば結果として新規採用になるし、その採用によって当然処方数も増えていきます。労務提供(棚卸や受付の手伝いなど、労働力として貢献すること)は製薬業界でのルール違反になりますが、そのような労務提供にならないように医師に対して貢献するのであれば何の問題もありません。

MRにはスピードが求められる

・管理人

それでは、MR活動をするうえで他に気を付けていることはあるでしょうか。

・Yさん

営業マンである以上、スピードが大事です。例えば、昨日は午前中だけで得意先を5~6件ほど訪問しました。

何をしたかというと、ガイドラインが新しくなったのでそれを配って回ることをしました。一番最初に先生へ届けたかったわけです。

ガイドラインを含め、MRから医師へ資材を届けることはよくあります。こうしたとき、他のMRも当然のようにガイドラインを先生に手渡します。ただ、このとき渡すのが二番目以降であると、医師の先生としては「既に同じ資料があるので必要ない」と考えます。

二番目に意味はなく、一番最初に先生へアプローチするから意味があるわけです。最初だからこそ、医師の印象に残りやすくなります。

・管理人

それでは、医師からの問い合わせについても迅速に対応しているわけですか。

・Yさん

そうです。医師が質問するということは、それだけ困っているという意味でもあります。そのため、医師への返答は早いほどいいです。一週間後に回答したとしても、「返事が遅い!」と思われて信頼を失ってしまいます。

例えば私の場合、医師から電話で質問を受けることはよくあります。その回答を準備した上で医師のもとへ出向き、説明を行うわけですが、社内の学術を頼りつつ、できるだけその日のうちに医師を訪問して返事を出すようにしています。

場合によっては、車で移動しながら質問への回答を考えることもあります。素早く疑問を解決してくれるからこそ、医師から「ありがとう」と感謝されるわけです。

資材を届けるスピードを含めてどのような場合でも早さが求められるため、車の中は資料であふれ返っていますが、これはある意味仕方のないことでもあります。

最低限の学術知識は理解しておくべき

・管理人

それでは、素早く情報提供するために学術知識もかなり仕入れているのでしょうか。

・Yさん

もちろん、MRである以上は最低限の学術知識は必要です。病院担当でも開業医担当でも、たまに難解な質問をされることがあるため、そのことについてまったく知らない状態は避けなければいけません。

英語論文についても、私は英語がまったくできませんが医師から質問されたときに「あの論文にたしか答えが載っていたはず」などのように、ザックリとでもいいので理解しておく必要があります。完璧でなくても、ぼんやりと答えが分かっていれば質問に対してすぐに回答できるからです。

また、私の会社では週に一回ほど学術的な話があるので、そのときの内容はできるだけ把握しておくようにしています。

先に話した通り、困ったときに医師の先生はMRを頼るわけです。そのときにパフォーマンスを発揮しなければ信頼関係を作れません。

そのため、完璧な回答を用意しなくてもよく、不完全でもいいのでその日のうちに回答を用意します。学術や先輩MRに電話で聞き、質問をしてくれた先生のもとに車を走らせながらどのような回答をすればいいのかを私の場合は考えるようにしています。

もちろん、その日のうちに問題を解決できなかったことも多いです。その場合であっても、できるだけ早く回答をもっていくことにしています。

実際のところ、回答をもってこないMRは多いです。また、3日以上経過した後に先生を訪問するMRもたくさんいます。ただ、これでは遅いです。

・管理人

MRが勉強をする必要があるのは、医師に対して迅速に回答する必要があるからなのですね。

それでは、今後はどのようにキャリアを積んでいきたいのか希望はあるのでしょうか。異業種を目指すとか、MRを極めるとか人によってさまざまだと思いますが、Yさんの場合はいかがでしょうか。。

・Yさん

ひとまず大企業で社内1位は取ったものの、自分の学術知識ではまだ弱い部分がありますし、MRとしてまだ頑張れることは多いです。少なくとも、異業種への転職はありません。将来的に所長を目指すことはあるかもしれませんが、いまはまだその時期ではありません。

次に目指すとすれば、例えば東京大学病院や順天堂大学病(医)院など、誰もが認める病院担当のMRになることです。いわゆる、花形MRといわれる存在です。

MR活動の本質は変わらない

・管理人

それでは、大学病院の担当になって花形MRとして活躍するようになったとき、どのように営業活動を実践するように考えているのでしょうか。

・Yさん

もちろん、大病院なのでこれまでの営業方法とは大きく異なると思います。ただ、MRとしての本質的なやり方は同じです。それは、「どれだけに医師にありがとうと言われるか」です。

いまはMR活動の制限が厳しく、表立って会うことができません。そこで、どのようにして裏で接点をもつのかがキーになります。また、講演会の企画を含めて、医師の先生に恩を売ることは必須です。

・管理人

つまり、方法が変わるだけであり、「先生からありがとうと言われるMRになる」という原理原則は変わらないということですね。

・Yさん

そうです。MR活動での根底は揺るがないものの、大学病院の先生へどのように講演を依頼するかなど、営業活動の方法は多少変わるかもしれません。しかし、違いはそれだけだということです。

私が最初にMRとして働いた会社ではワクチン販売で全国1位になることができましたし、いまは循環器や整形外科領域の薬でトップ成績を残せるようになりました。分野はまったく違いますが、MRとして私が行ったことはすべて共通しています。これを大学病院で実施するだけで問題ありません。

・管理人

非常に参考になります。ちなみに、社内にいる他のMRはどのようなキャリアを築きたいと考えているのでしょうか。

・Yさん

人によってバラバラです。ずっとMRとして活躍したい人がいれば、本社に行きたい人もいます。本社を目指す場合、外資系製薬会社なのでTOEIC730点以上が必要であり、そのために英語の勉強をしているMRが実際にいます。また、どこかの時点で故郷に帰ることを考えているMRもいます。

ただ、多くの人はMRをずっと続けています。転職する人は非常に多いですが、そのときは異業種ではなく他の製薬会社のMRとして活躍する人がたくさんいます。

MRは高年収で待遇が良いため、異業種の営業に比べると非常に優遇されている点が大きいのだと思います。これは、私が異業種の営業を経験していたことからもいえます。

・管理人

人が違えば、目指すべきものが大きく異なるわけですね。

ちなみに、これだけ大きな成績を残したのであれば、次の年はどのようにして営業での成果を残すことを考えているのでしょうか。MRは去年の実績をもとに次の目標が決められるため、さらに営業成績を伸ばすことができるのでしょうか。

・Yさん

実は、まだ新薬採用になっていない大口の病院が1つあります。そこの医師と関係性を構築して、何とかして採用してもらうように動こうと考えています。

その病院で自社製品が新規採用になり、処方数が増えるようになれば、少なくともいまの担当エリアで私が行えるすべての仕事は終わったかなと思います。

もちろん、新薬が発売されればまた新規採用のために動く必要があります。私の会社はわりと新薬が出てくるため、そのときはまた戦略的に考えて営業活動を展開していきます。

・管理人

非常に勉強になりました。今日はありがとうございました。

・Yさん

こちらこそ、ありがとうございました。少しでも他のMRの参考になればと思います。


医師の先生に対して、薬の説明ばかり行うMRは多いです。ただ、それでは医師の心に響きません。どれだけ医師に対して貢献できるかを考えることがトップMRになるための秘訣です。

特に今回のYさんの場合、「医師にありがとうと言われるにはどうすればいいのか」だけを考えていました。そのためには裏で接点をもつことが必要ですし、医師からの誘いを前向きに考えて楽しむことも重要です。

Yさんはガツガツした雰囲気ではなく、かなり落ち着いた雰囲気です。印象としては、「本当にこの人が全国1位なのか」と疑う風貌でした。

ただ、戦略的に営業活動をすることで医師の信頼を勝ち取ることを最優先しているからこそ、トップMRとして活躍し続けることができているのだと思います。


MR転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。

特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。

ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。

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