かつて製薬会社のMRは男性がほとんどでした。しかし、いまでは女性MRは珍しくありません。もちろん男性MRの割合が高いことには変わりありませんが、女性がMRとしてキャリアを積むことは普通になっています。

ただ、男性と違って女性では人生のライフステージが大きく変わるときが存在します。それは、結婚や妊娠・出産です。MRは営業職であり、就業時間は長く全国転勤があります。そのため、結婚や出産によって退職してしまう女性がたくさんいるのです。

しかし、それと同時にMRとして仕事を続けていきたいと考える女性もいます。そこで、女性が自らのキャリアを考えるうえでどのように活動すればいいのかについて考えていきます。

結婚後や妊娠・出産後はキャリアを考えるべき

どの営業職にも共通しますが、特にMRは就業時間が長く夜になっても働く必要があります。薬の説明をするとき、医師のスケジュールに合わせなければいけません。夜しか会えない医師に対しては、その時間に訪問するのが基本です。

結婚していたり、出産によって子供がいたりする場合、家事をする必要があります。また、子供の年齢が小さいときでは面倒を見なければいけません。ただ、MRをしているとこうした家事や育児がほとんどできなくなってしまいます。フルタイムでMRとして働く必要があるからです。

さらに、全国転勤があるのでどの都道府県で働くようになるのか分かりません。まさか旦那や子供を残して一人、女性MRとして単身赴任するわけにはいきません。

こうした事情があるため、結婚や妊娠・出産によって人生のライフステージが変わる場面では、女性MRは全員が自分のキャリアについて見つめなおします。

それでは、女性MRが結婚後であっても活躍するためにはどのような職場がふさわしいのでしょうか。これについて確認していきます。

新薬メーカー、ジェネリックメーカー(製薬会社)へ転職する

新薬メーカーやジェネリックメーカーなど、製薬会社のMRとして働くことを希望する人は多いです。この中でも、男性MRであれば「多くのパイプラインをもつ大企業で働きたい」「オンコロジー(抗がん剤領域)やオーファンドラッグなど、高い専門性を求められるMRとして頑張りたい」と考える人がいます。

ただ、女性の場合はそのようなMRを目指す人は少数です。独身女性と同じように、フルタイムで夜遅くまで働くことになるからです。

さらに多くのパイプラインをもつ会社であると、それだけ新薬を取り扱うことになります。主力製品は変わっていきますし、産休・育休から復帰したときに学びなおすことが非常に多くなります。

これはオンコロジーやオーファンドラッグなど高い専門性を必要とする領域であっても同様です。医療の進め方や薬の使い方が日々変わっているため、こうした領域への復帰は非常に難しいといえます。

そこで、このような場合「皮膚科・点眼薬など薬がほとんど変化しない分野に特化した会社」「昔からある少数の薬で勝負している中堅製薬企業」「特許切れの医薬品だけを取り扱うジェネリックメーカー」へ転職するといいです。

例えば、以下は東京・千葉での勤務地限定であり、大手製薬メーカーのジェネリック医薬品会社から出た求人募集です。

こうした製薬会社の中途採用であれば薬がほとんど変わらないため、結婚後や出産後などで復帰した後であっても問題なく仕事に戻ることができます。そのため、製薬会社の中では女性MRに人気です。

女性が一般の会社で勤務するとき、MRと同程度の年収を確保するのは難しいです。ただ、製薬会社で女性MRを継続する場合は高年収を維持できます。

経験者MRであれば、新薬メーカーであっても「初任地を限定させて働くことができる求人」が出されています。その後、転勤命令の可能性はあるものの、転職によって最初の勤務地限定を実現できます。

コントラクトMR(CSO)で転勤なしを実現する

女性の場合、新薬メーカーからコントラクトMR(CSO)へ転職する人も多いです。製薬会社に比べると、コントラクトMRではどうしても年収や福利厚生の面で劣ってしまいます。それにも関わらず、多くの女性MRがCSOの求人をみて転職するのです。

コントラクトMRの場合、勤務地限定で働くことができます。特定の地域だけで、転勤なしのMRとして活躍することができるのです。

製薬会社の場合、勤務地の希望は基本的に無視されますし、転勤なしを実現することは非常に難しいです。ただ、CSOのコントラクトMRであれば可能になります。

結婚や出産の後、一つの地域でずっと働けることは女性MRにとって非常に優れた勤務条件です。持ち家をもつことができるなど、たとえ年収は下がったとしても新薬メーカーでは実現できないことが可能になるのがコントラクトMRです。

さらに、CSOでは内部昇進が比較的早く、さらには内勤へ早めに異動することもできます。最初、転職後に女性MRとして活躍することは必須ですが、製薬会社勤務では実現が難しい、本社スタッフや内勤を早めに叶えられることが魅力的です。

もちろん、時短勤務を含めて柔軟な働き方が可能なのがコントラクトMRです。例えば、以下はCSOから出された中途採用の求人です。

「新薬・ジェネリックメーカーでのMR活動」との記載がある通り、コントラクトMRであることが分かります。また求人票にある通り、時短MRやコールセンター、学術サポートなど多くのキャリアパスが用意されているのがCSOの特徴です。

なお、中には結婚や出産によって会社を退職したため、ブランクのある女性MRがいます。こうしたブランクを生じた女性が復帰したい場合、コントラクトMRとして再び活躍することは多いです。

女性の割合が多いCRA(臨床開発モニター)で活躍する

MRが活躍できる業種としては、実はMRだけではありません。MRの経験を活かし、CRA(臨床開発モニター)へ転職する人もいます。臨床開発を行うとき、治験が適切に実施されているかどうかを確認する職業がCRAです。担当施設を訪問することで医師と面会したり、症例を集めたりします。

CRAは出張の多い職種です。ただ、MRと違って全国転勤はありません。土日は休みであり、こうした点を考慮してCRAを目指す女性MRも多いです。

製薬会社MRやコントラクトMRに比べると、どうしても年収は下がります。ただ、MRのように就業時間が長かったり全国転勤があったりすることはありません。転勤なしの土日休みを実現でき、仕事をしながら問題なく育児まで行えるのがCRAです。

・女性比率の高いCRA

MRであっても、問題なく産休・育休を取得できます。ただ、それだけブランクを生じるのでMR復帰後は猛勉強しなければいけません。このとき、復帰後に時短勤務などパートタイムで働くことが認められるケースはやはり少ないです。転職すれば可能ですが、同じ会社では厳しいのです。

一方、CRAであればMRのように営業活動をするわけではないため、問題なく産休・育休を取得できたり、時短勤務を実現できたりします。そうしたことも女性MRがCRAを目指す理由であり、実際にCRAは女性比率が高いことからも、女性にとって働きやすい職業であることが分かります。

CRAを目指すとき、CRO(受託臨床試験実施機関:製薬企業に代わって治験を代行する会社)の求人へ応募することになります。もちろん製薬会社であっても、CRAの求人を出すことがあります。ただ、その数は少ないです。求人が出されたとしても多くの人が殺到するため、非常に倍率が高いです。

そこで、多くの人はCROのCRA(治験開発モニター)として転職します。MRとは違って、無理な働き方をしなくても問題ないのがCRAです。

このときMR経験があればCRAへ転職できます。例えば、以下のような求人です。

女性MRの場合、どうしても離職率が高くなります。そこでこのような、女性の割合が高いCRAへ早めに転職しておくのは有効です。

ただ、未経験でCRAへ転職することになるため、「経験者MRが他会社のMRとして転職する」ときに比べるとハードルは高くなります。そのため、女性MRがCRAを目指す場合は早めに準備しなければいけません。

また、年齢が若いほど転職しやすいため、転職に成功するには早めに転職サイトへ登録して行動する必要があります。

その他の職業で働く

また、中にはその他の職業へ転職する女性MRもいます。これは、MRとしての経験を活かして内勤業務を任されるからです。

MRで培った経験は他の職種で活きてきます。例えば学術やマーケティング、経営企画などそれぞれMR経験者が活躍できる場が用意されているのです。MRの道を極め、営業マネージャーなどに上り詰めることだけがMRのキャリアではありません。つまり、本社など管理部門の求人へ応募し、転職を果たすのです。

例えば、以下はDI・学術担当の求人募集です。

募集条件にMR認定資格とあり、さらにはDI業務の未経験者でも問題ないことから、女性MRであれば問題なくこうした内勤業務へ転職できることが分かります。

また、MRの経験を活かして結婚後は医療機器メーカーへ転職する人もいます。医療機器メーカーの中には勤務地限定で働くことができ、高年収の求人が多く存在します。

女性MRであるなら、「新薬メーカーのMRとして働く」などのように狭い視点で捉えるのではなく、異業種を含めたあらゆる職業を念頭に置きながら、自分の希望を叶えられる求人を探るといいです。

製薬会社の女性MRが覚悟しなければいけないこと

女性MRであるとこのようにキャリアを考えなければいけない場面が訪れるため、将来に不安や悩みを抱くことがあります。このとき、先に覚悟しておかなければいけない現実が存在します。

これには、以下のようなものです。

  • 時短勤務(パートタイムMR)は実のところ少ない
  • 転職は年齢が若いほど有利になる
  • 離職率は高く、辞めたい女性MRは多い

それぞれについて解説していきます。

時短勤務(パートタイムMR)は実のところ少ない

パートタイムMRという言葉があり、これは名前の通り時短勤務で働くMRのことを指します。一部の製薬会社やCSOでは導入されており、そうした求人は稀に存在します。ただ、実際のところMRが時短勤務で働ける確率は少ないと考えてください。

先ほど、CSOで時短MRの求人を提示しました。ただ、そもそも時短勤務で働いたところで成果を出せるとは考えられません。夜にしか会えない医師はたくさんいますし、短い時間で医師の要望に回答しなければいけません。

急な対応を取らなければいけない場面は何度も出るため、そのつど「いまは時短勤務で対応できない」などの回答をしていると信頼は一気に失われます。

こうした実情があるため、実際のところ製薬会社であれCSOであれ、MRとして活躍するためにはフルタイムで仕事をする必要があります。パートタイムMRでは行えることが少なすぎるのです。

転職は年齢が若いほど有利になる

女性に限らず、転職は年齢が若いほど有利になります。未経験でのMR転職に年齢制限があるのと同じように、「MRから他のMRへ転職する」「MRから異職種へ転職する」などのとき、「何歳までなら転職可能」という年齢制限が存在するのです。

例えば、MRからCRA(臨床開発モニター)へ転職する場合は未経験での転職になります。少なくとも、CRAを経験したことのあるMRはほとんどいないと思います。

こうしたとき、若い人であるほど仕事を覚えるスピードが早く、不必要なプライドもありません。そのため、CRAへの転職を希望する場合は20代後半までが最も転職できる可能性が高く、遅くても30代まで(その中でも35歳まで)が適切です。40代以降であれば、未経験でのCRAは諦めた方がいいです。

これは、他の製薬会社やCSO(コントラクトMR)へ転職するときであっても同様です。早めに転職活動を進めるほど、内定を獲得しやすくなるのです。

転職では若いときほど有利であるため、結婚後や妊娠・出産して子供のいる女性は早めに「問題なく育児を行うことができ、家庭にも支障が出ない職場」へ転職する人が多いです。「女性MRとして、どの会社に就職するべきか」「MRを離れ、別の道に進んだ方がいいのか」などを考えることも、キャリアを練るうえで重要です。

もちろん結婚後に限らず、独身のうちから将来を見据えてこうした転職活動をする女性MRはたくさんいます。

離職率は高く、辞めたい女性MRは多い

MRは医療機関などへの接待が禁止され、無駄に宴会を開催しなければいけない業界ではなくなりました。そのため、接待のときにセクハラをされるなどの悩みは少ないです。ただ、フルタイムで働く必要があったり全国転勤があったりすることには変わりがないため、自分の将来を見つめなおす女性MRがほとんどです。

もちろん、製薬会社によっては女性MRに対して特別に支援制度を設けていることがあります。例えば、MR活動で大きな成果を出しているという条件は必要になりますが、勤務地の希望を聞くようにしている新薬メーカーが存在します。

また、産休・育休後に2人でチームを組むことによって、時短勤務を実現している製薬会社もあります。しかしながら、こうした支援制度があっても多くの女性が新薬メーカーのMRを辞めていくのが現状です。

結婚後にMRを続けていたとしても、結局のところ妊娠・出産によってMRを退職していくケースは多いです。女性MRは圧倒的に離職率が高く、ある段階で辞めたいと考えるようになるのです。

例えば産休を取得して1年の休みをもらうとすると、今までの仕事は他の人の担当になります。このとき、1年が経過して元のエリアに戻ってくるようになった場合、代打だった人は既に得意先と信頼関係を築いており、成果も出しているので困った状況に陥ります。

また、会社によっては人員補充をせず、欠員の分を同じ会社の他のMRに任せることがあります。要は、同僚の負担を増やすことになります。産休の間、ずっと同僚に迷惑をかけることになります。

こうしたとき、再び2人目の子供が生まれるとなると周囲は混乱します。

MRという職業柄、朝早くに医薬品卸を訪問することはありますし、夜遅くに講演会を開催することもあります。こうした通常業務を行わない育児中の女性MRはいるものの、周囲からみれば仕事を十分こなしていないので迷惑に思われてしまいます。

このような事情があるため、女性MRは年収が高くて有給休暇を取得しやすいものの、結果的にMRを一生続けていく人は非常に稀なのです。辞めたいと考え、離職率が高いのが女性MRの実態です。

独身や結婚に関係なく、早めにキャリアを見直すべき

そこで、早めに女性MRとしてのキャリアを見つめ直し、年収や家族とのバランスを考えながら問題なく働ける求人を探し、転職まで視野に入れて検討する女性MRは非常に多いです。

将来は内勤に就くことを想定して、コントラクトMRとして活躍しても問題ありません。CSOの場合、製薬会社のように薬の事業に限らずさまざまな分野を手がしています。そのため、将来は内勤へ異動することが可能です。

また、CRAや医療機器メーカーなど他の職種や業界を目指しても問題ありません。全国転勤が基本の製薬会社MRとは異なり、こうした会社なら女性の復帰率が高いです。

ライフステージが変わる場面では将来のことまで考え、キャリアプランを見つめ直す必要があります。当然、独身の頃から将来のキャリアプランを練っても問題ありません。

いずれにしても、年齢が若いほど転職に有利です。そのため、女性MRとしていまの仕事を続けられるかどうかを視野にいれながら、それが無理な場合は早めに最適な求人へ応募するのが適しています。


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MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。

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特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。

ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。

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