医師にとって、学会は身近な存在です。開業医の高齢医師にとって学会は関係ないかもしれませんが、病院の勤務医であったり、開業医であっても比較的意欲のある若い医師であったりすると学会へ参加して最新の知見を得ようとします。
学会は論文でも発表されていない最新の医療情報を得るチャンスであり、他の医師と交流する場でもあります。そのため、医師が学会に参加することは珍しくありません。
そして医師がたくさん集まることから、営業成績の優れているMRであるほど学会を利用します。ただ、やみくもに参加しても得られるものが少ないため、ここではどのようにMRが学会を活用すべきなのかについて確認していきます。
もくじ
MRは学会に参加するべき
どのようなMRであっても行うべきことの一つに学会参加があります。「MRは学会へ参加してはいけない」などのルールはないため、誰であっても問題なく参加できます。会社から費用を負担してもらえなくても、自分で参加費を払えば問題ありません。
なぜ、MRは学会を利用するべきなのでしょうか。それは、学会へ行けば多くの情報を入手することができ、医師と人脈を築くことができるからです。
MRの仕事は「情報提供によって医師の仕事を助ける」ことですが、学会へ行けば最新のエビデンスを知ることができ、製品や疾患に関する学術知識の向上につながります。
例えば、学会では「なかなか治療できなかった患者さんに医薬品Aを活用したことろ、著効して改善した」などの情報を得ることができます。そうしたとき、「そのようなケースがあるのだ」という事例をたくさん学べば、担当エリアに帰ったときに医師の役に立てるかもしれません。同じ症例にあったとき、学会発表で聞いたことを医師に話せばいいのです。
製薬会社(自分が所属する会社)から仕入れる情報だけで勝負してもいいですが、それではいつまで経っても自社にとって有利な情報しか入手できません。それではMRとして活動するときの情報提供能力が低いままであるため、学術知識を仕入れて医師に貢献できるようにする必要があります。
また、学会では自社製品に限らず、競合品の発表もたくさん行われています。そうした話を聞くことで、ライバル製品のメリットやデメリットを仕入れることができます。
学会で医師と人脈を築く
さらに、学会へ参加すれば医師と人脈を構築することも可能です。さすがに一人だけで学会に乗り込む場合は難しいですが、大きい学会へ参加する場合は必ず一人は知り合いの医師が学会に参加しているはずです。
学会は全国から人が集まります。どれだけ田舎のエリアを担当していたとしても、病院医師(勤務医)や開業医を含め誰か知り合いの医師が参加しているものです。そうしたとき、知り合いの医師を伝って人脈を築くようにしましょう。
学会というのは、飲み会もメインの一つです。中には飲み会だけを楽しみに学会へ参加している医師もいます。
前述の通り、学会には全国から医師が集まります。そこには昔の同級生やお世話になった先生などがいるため、そうした人と夜は飲み会をするのです。この場にあなたがいれば、これまで知らなかった医師と一気に人脈を作れるようになります。
一見すると無関係な医師であったとしても、あなたの担当エリアの医師と知り合いであることはよくあります。そのため、そうした医師と知り合いになることで知識を授けてくれるだけでなく、担当エリアに帰ったときの話題にすることもできます。
学会へ参加していない医師へ情報提供する
また、学会へ参加していない医師がたくさんいるのも事実です。そこで、「この発表はあの医師に役立つはずだ」「今回の発表内容をあの先生に伝えると喜ばれるかもしれない」という視点で学会発表を聞くようにしてみてください。
学会で学んだことをまとめ、担当エリアの「どの先生に、どの情報を提供するのか」を考えるのです。MRが学会へ参加する意義は「自ら知識を得ることで医療へ貢献すること」であるため、医師への情報提供が大前提です。
また、例えば開業医のおじいちゃん医師であるため、最新の知見を得ることをまったく考えていない場合であっても、学会参加は話題作りに適切です。学会では普段では会えない高名な先生も参加しているため、そうした医師の発表を聞いておくのです。
後日、担当エリアに帰ったときに「学会へ参加したのですが、高名な○○先生の話を聞きましたよ」といえば医師は興味をもって聞いてくれるようになります。
もちろん「高名な○○先生」というのは、その医師が尊敬している先生である必要があります。そのため事前に調査しておいたうえで学会へ参加する必要があります。
医師と同じレベルの内容を学ぶことができ、さらには人脈まで構築できることを考えると、MRが学会へ参加することのメリットは非常に大きいです。
実際に学会へ参加するときの準備
それでは、学会へ参加するときはどのような手順を踏めばいいのでしょうか。これについては、最初にどの学会へ参加するのかを決めましょう。
MRが参加する学会を決める基準として「担当エリアの医師の中で、仲良くしている先生が学会へ参加するかどうか」を第一に考えるようにしましょう。
MR一人だけで学会へ乗り込んでもいいですが、実際のところ得られるものは半減します。確かに高度な学術知識を入手できるチャンスではあるものの、それ以上でもそれ以下でもありません。
前述の通り、学会は「夜の飲み会」も重要なイベントです。飲み会へ参加し、医師と人間関係を構築することも大きな目的の一つなので、仲良くしてもらっている医師に付いて行って飲み会に参加するようにしましょう。
学会では、「学会が主催する懇親会」があるものの、MRであるあなたがこれに参加するメリットはありません。高いお金を払って無駄金を捨てるだけです。そうではなく、知り合いが開催する「学会後の個人的な飲み会」への参加が最重要になります。
こうしたことを理解したうえで、担当エリアの医師が毎年どの学会へ参加しているのかを把握するようにしましょう。これを調査しなければ、参加すべき学会を決めることはできません。
また、競合品のない場合は他社のMR同士で仲良くすることがよくあります。そこで、仲の良い他社MRに「どの先生がどの学会へ参加しているのか」などを聞き出すのも有効です。仲の良い他社MRが実際に学会にまで参加している場合、同行させてもらっても問題ありません。
学会へエントリーして、聞くべき講演をチェックする
参加する学会が決まった後は、早めに学会へ参加できるように手続きを済ませましょう。学会によっては早めに締め切られることがあり、可能な限りすぐに参加表明するといいです。
学会名をネットで検索すれば、サイトに「申し込み方法」などが書かれているはずです。そこから申し込み手続きを行い、参加費を支払えばエントリーできます。
学会の日にちが近くなってきたら、演題(学会会場のどの場所でどのような発表が行われるのか)が記載された媒体(本やDVDなど)が送られてきます。これについては、必ずチェックするようにしましょう。
大きな学会になるほど、会場は巨大になります。演題の数も膨大になるため、あらかじめどの発表内容を聞くべきなのかチェックしていなかったら、会場の中で右往左往するだけで時間が過ぎてしまいます。
こうした事態を避けるため、事前に発表内容のチェックが必要です。あらかじめ興味のありそうな演題(情報を持ち帰ることで、担当エリアの先生に喜んでもらえそうな演題)をメモしておき、学会の会場内でもメモした演題を見返せることができるようにしておくのです。
学会での発表はあらゆる場所で分単位で進んでいきます。そのため、次にどの場所へ行けば目的の発表を聞くことができるのかを事前に把握し、スムーズに移動できるように準備すると効率的です。
ポスターセッションでは生の意見を聞ける
学会発表では、主に2つの発表スタイルがあります。一つはオーラルセッションと呼ばれ、受講スタイルによる一般的な発表です。演者(発表する人)が前に立ち、何人もの聴衆がイスに座って発表を聞くことで進行していきます。
そしてもう一つがポスターセッションです。ポスターセッションでは、ポスター(研究内容を書いた大きな紙)を壁に貼り付け、ポスターの前に立って発表するというものです。発表とはいっても、聴衆はポスターの内容を読んで興味のあることを質問し、それに答えるという形式になります。
一方通行の発表とは異なり、会話をしながらその人の発表内容を掘り下げていくスタイルがポスターセッションです。
ポスター発表の良いところは、演者とざっくばらんな会話ができることにあります。
担当エリア内での医師とMRであると、どうしても利害関係が発生します。ただ、担当エリアではなく住んでいる県まで異なる医師であると、利害関係はほとんどありません。もちろん、自社内の誰かが担当している医師なので多少は利害関係があるものの、少なくともあなたの営業成績には関係ありません。
そのため、ポスターセッションで医師が発表をしており、あなたが少しでも興味をもてる内容だった場合は積極的に質問するようにしましょう。
そこからさらに内容を発展させ、発表内容とは関係ない話になってしまっても問題ありません。「どのような基準で新薬を採用するのか」「MRに何をされるとうれしいか」など、発表内容とは異なる情報まで引き出せるようになります。
MR活動をするうえで重要な情報を利害関係のない医師から聞ければ、非常に参考になるはずです。
発表者に対して質問をする
最初からは難しいかもしれませんが、2~3回目など学会へ参加することに慣れてきたらオーラルセッションで発表者に対して質問をするようにしましょう。発表が終わった後、必ず質疑応答の時間があります。このときに質問するのです。
あなたがMR活動をするなかで、医師の悩みを聞くようになるはずです。自社製品のアピールばかりではなく、医師の悩みを解決しようと努力しているMRであれば、医師が日々診察をする上で困っていることに対して「情報提供によってサポートする」ことを意識しているはずです。
素人質問でまったく問題ないので、そうした活動を通して学んだ中で演者へ質問するのです。例えば、「私の担当しているドクターで○○の症例に悩んでいる先生がいるのですが、先生(演者の医師)はどのように治療していくでしょうか」など、思ったことを聞けば問題ありません。
学会は医師だけが参加する場ではなく、学生やマスコミを含めあらゆる人が参加しています。その中でMRの視点で質問すると、非常に喜ばれます。
また、すべての発表が終わった後に発表が終わった医師のもとへかけつけて「先ほど質問させてもらった○○製薬の△△と申します」などのようにあいさつをすると、笑顔で受け入れてくれます。演者に質問をすれば、その後の関係性まで作れてしまうのです。
このように考えると、参加した学会でのオーラルセッションで質問をすることはメリットしかないといえます。多くの日本人は質問を控えますが、その中で質問するだけで一歩先のMRとして人脈を広げることができます。
学会へ参加するときの準備
それでは、実際に学会へ参加するときに自分のことだけを考えていればいいのかというと、当然ながらそのようなことはありません。前述の通り、自分の担当エリアの医師が参加する学会へあなたもエントリーする必要があります。
このとき、同席する医師の準備もあなたが行うようにしましょう。具体的には、以下のような準備を実施します。
交通や宿の手配
参加人数の多くない学会であるなら、日程が近くなってから交通や宿の手配をすれば問題ありません。ただ、大きな学会となると遅くても3ヵ月以上前から宿の手配をするのが基本です。
例えば日本糖尿病学会などになると、参加人数が3000人以上になります。医師だけでなく、管理栄養士など他の職種の人も参加するのでこれだけの大人数になります。
当然、参加する人の多くは他の都道府県に住んでいる人たちです。一つの会場に3000人が押し寄せるため、その周辺の宿はほぼ埋まります。少し郊外の宿であっても、大きな学会が開催される日はあらゆるホテルが満席であることが多いです。
こうしたことを考えると、早めに自分と医師のホテルを手配するようにしましょう。学会では同席する医師の人脈を活用させてもらうので、これくらいの手配は当然だといえます。
居酒屋の手配
交通やホテルだけでなく、学会の後に開催される飲み会のために居酒屋の手配も行うようにしましょう。MRである以上、居酒屋の手配くらいは難しい作業ではないはずなので、これで医師が満足してくれるのであれば積極的に行うべきです。
また、医師と同席して「飲み会に参加してくれた他の医師を紹介してもらう」という目的もあるため、あなたが代わりに居酒屋を予約するのは当たり前です。
現在は医師への接待が禁止されているとはいっても、おいしい店のリストは存在するはずです。「質の高い居酒屋」について、学会が開催されるエリアの同僚に聞いて良さそうな居酒屋リストを事前に入手しておくようにしましょう。
また、あなたが男性MRで一緒に参加する医師も男性である場合、キャバクラなど夜のお店についてもきちんと把握しておくようにしましょう。
発表する医師への支援
単に学会へ参加して講演を聞くだけの場合、MRにとっても医師にとって学会への参加は気楽です。他人の発表を聞き、夜は飲めばいいだけです。
ただ、あなたが担当している医師の中に学会で発表する先生がいる場合、その先生を支援するためにあなたが動くようにしましょう。
学会での発表を控えている医師は非常に忙しいです。日常診療に加え、発表スライド(またはポスター)の見直しや発表練習など行うべきことが多いです。学会での発表をどれだけ成功させるのかが重要であるため、MRとして医師を支援することで大きく信頼してもらえるチャンスだといえます。
例えば、医療は日々進歩していくので最新の知見は変わってきます。そうしたとき、MRとして医師の代わりに論文など最新の知見を提供すれば非常に喜ばれます。
医師のために頑張れば、学会での発表が終わったときには医師の口から感謝の言葉が出るはずです。そうなれば、後で新薬採用や処方増加などの形であなたの営業成績にとっても大きなプラスになります。
MRは学会への参加を投資だと考えるべき
学会をうまく活用すれば、MRとして営業成績をさらに拡大させることができます。学会参加はMRにとってメリットしかありません。
そのため積極的に学会へ足を運ぶべきですが、社内に認められて会社のお金で参加できるようになった場合、非常にラッキーだといえます。
ただ、会社が学会参加費や交通費を出してくれないことが分かった場合、あなたは学会へ参加するでしょうか。このとき、「自分は地方に住んでいるし、時間だけでなくお金もかかるから学会への参加はやめておこう」と考えた場合、厳しめにいうといつまで経っても営業成績は二流のままです。
MRであるなら、大きな成績を残せばボーナスなどに反映してくれる会社が多いです。製薬会社によっては、業績評価によって400万円以上もボーナスで開きのあることがあります。
そうしたとき、学会へ参加したことによって仕入れた情報や人脈をもとにして営業活動をすれば、学会参加費や交通費くらいは簡単に元を取ることができます。この事実を考えたとき、学会へ参加しないという決断をしたMRは「将来は何倍にもなって返ってくる貴重な情報収集の場」を無視しているといえます。
実際のところ、学会にはお金のない貧乏学生であっても参加しています。私も理系の大学出ていますが、大学四年生のときは自腹で学会参加費や交通費を出して発表したものです。
こうしたお金のない人でも学会へ参加しているにも関わらず、高い給料をもらっているMRが参加しないのは考えられないといえます。医師との信頼関係を築くなど、新たな人脈を構築できることを考えると、MRが学会へ参加しない理由はありません。
ここまでを理解したうえで、MRとしてさらなる営業成績を残したい場合は学会への参加を検討してみてください。
もちろん、ただ参加するだけでなく、ここで述べてきたことを実践することで、自分の業績評価にプラスとなるように行動するようにしましょう。そうすれば、さらにトップMRとして活躍できるようになります。
MRが転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人で求人活動を進めた場合、頑張っても1~2社へのアプローチに終わってしまいます。さらに、自分だけで労働条件や年収、勤務地の交渉まで行わなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに依頼すれば、これまでの企業とのつながりから最適の求人を選択できるだけでなく、あなたに代わって年収や福利厚生を含めてすべての交渉を行ってくれます。
特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。
ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。
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