MRとして製薬会社の営業マンで働くとき、当然ながら良い成績を残すために頑張ります。ただ、どれだけ努力したとしても営業成績に結びつかない人は多いです。

こうした人に共通する特徴の一つとして、「どの医師に対しても同じように接している」ことがあります。ただ、これでは新規採用や処方増につながることで営業成績が向上することはありません。本来、医師ごとにアプローチ法を変える必要があります。

それでは、どのように考えてMRは営業活動をすればいいのでしょうか。やみくもにコール数(医師への訪問回数)を増やしても意味がないため、ここではMRとして効果的に結果を残す思考法について解説していきます。

人によってアプローチを変えるべき

まず、なぜ同じ手法で薬を宣伝するのでは営業成績が向上しないのでしょうか。これは、他の分野での営業を考えてみれば理解しやすいです。

例えば、あなたが新車販売を行う車のディーラーだとします。このとき、お客様が望んでいることや求めていることに応じて接客しなければ車は売れません。

家族連れの人であれば、「休日に外へ出るなら、子供が乗り降りしやすいように設計され、後ろに荷物をたくさん載せられる車がいいです。さらに、燃費まで考慮されたこの車をお勧めします」と紹介するといいかもしれません。

これが車のデザインにこだわる独身男性であれば、「車高が低く、非常にスタイリッシュな車です。デザインは5色から選ぶことができるので、ここにない色であっても後日に見学可能です」といえば響きます。

人によって求めているものが異なるため、これを無視して「この車は燃費が低く、車高は高く設定されており、さらには台数限定のプレミア製品です」と宣伝されても、誰も買いたいとは思ってくれません。

このように、人によって営業方法を変えなければいけないのはどの分野であっても同じであり、当然ながらMRにも当てはまります。会社から提供される資料を持参して一方的に宣伝しても効果がないのは、単純に営業の方法が悪いからです。

人にはタイプがある

それでは、相手が医師であればどのように考えて営業していけばいいのでしょうか。まず、医師はザックリと2タイプに分けることができます。

これには、「エビデンス重視」の先生と、「経験重視」の先生があります。

エビデンス重視の先生へのアプローチ法

エビデンス重視の先生では、最新の医学情報を集め、学会や講演会へ積極的に参加するなど活発です。患者さんに良い医療を提供するため、常に「他の治療法はないか」と探しています。

そのため、MRとしては薬の説明を含め営業活動しやすいです。どちらかというと、MRの訪問を受け入れてくれやすい先生だといえます。

ただ、MRが勘違いしやすいこととして、「アポイントを受け入れてくれた=薬を採用してくれる」と考えることがあります。しかし、実際のところ新規採用にならないことが多いです。

あなたを受け入れてくれるということは、当然ながら他MRに対してもオープンだということです。あなた以外にも多くのMRの話を聞き、そのうえで薬を採用するかどうかを判断します。そのため、医師の反応が良かったからといって処方につながるとは限りません。

エビデンス重視の医師に対しては、質の高い医療情報を提供する必要があるため、会社から渡されるパンフレットだけで頑張っても効果が薄いです。学会や講演会、学術論文など常に最新の知見に対してアンテナをはっておき、医師に情報提供できるようにしておく必要があります。

良い情報を提供してくれるMRに対して、エビデンス重視の医師は関心を示します。会社パンフレット以上の情報提供によって医師の診療を助ければ、重宝されるMRになります。

また、たとえ新規採用になったとしてもそれで終わりではありません。エビデンス重視の先生では必ずフォローが必要です。どれだけフォローするのかによって、その後の処方増や他剤への切り替えが違ってきます。

新規採用した時点でMRの訪問回数やフォローが少なくなった場合、医師は「他の良さそうな薬を採用しよう」と考えはじめます。他社に対しても比較的オープンに受け入れていることを考えれば、あなたは医師に対して常に情報提供し続けることが求められます。

ただ逆にいえば、最新の知見を含め医師に質の高い情報さえ提供し続けていれば良い関係を築けるため、非常に営業しやすい先生だといえます。MRは情報提供によって医療へ貢献するために存在するため、こうした先生であればMR本来の業務を行うことができます。

経験重視の先生へのアプローチ法

エビデンス重視の先生に対して、どちらかというと自らの臨床経験に重きを置いて薬を処方する先生がいます。いわゆる、経験重視の先生です。

経験重視とはいっても、最新の医療情報に必ずしも興味がないわけではありません。ただ、新しい治療法というよりも「これまで経験から自分が良いと思える診療」をメインで行います。

実際のところ、添付文書通りに薬を使用しても治療できないことは多いです。そこで、これまでの経験からどのように薬を活用すればいいのか自ら考え、実践してきた先生です。そのため、自分が抱えている患者さんの顔や背景などをすべて把握しており、そこから個人に合わせた処方をしていきます。

また、MRから提供される情報は製薬会社にとって都合の良い内容ばかりであるため、基本的にMRの言うことを信用しません。なかなか会ってくれることがなく、会うことができたとしても信頼関係を築けていない場合は冷たく接されてしまいます。

副作用情報にも敏感です。薬を使用して悪い結果が出たとき、すぐに他の薬に切り替えられてしまいます。そのため副作用情報だけでなく、副作用への対処法も含めて情報提供し、デメリットまで含めて伝えるなど慎重に営業活動をしなければいけません。

経験重視の医師というのは、いわゆる「難しい先生」に入ります。少なくとも、信頼してもらえるまでには時間がかかります。

ただ、これはあなただけでなく他社のライバルMRにとっても同様です。時間はかかるものの、中立的な立場で情報提供していき、医師に貢献することだけを考えましょう。そうすれば信頼してもらえるようになり、結果として大きな成果を出せるようになります。

年齢によって対処法が大きく異なる

・若い先生への営業活動

人によって性格は異なりますが、若い医師であるほどエビデンス重視になります。臨床経験が豊富というわけではないため、これについては当然のことだといえます。

若い医師であるほど貪欲に知識を求めます。薬の作用機序や副作用情報、薬物動態など細かい話を含め知りたがる傾向にあります。そのため若い医師に対しては、世間話をするよりも薬の作用を含め最新情報の提供によって貢献することだけを考えましょう。

・30代後半以降の先生への営業活動

ただ、年齢を重ねるごとに医師は経験重視になってきます。30代後半や40代などの医師であると、それなりの臨床経験があり、知識も豊富です。そのため最新のエビデンスや治療情報を重視するものの、自らの治療経験も大切にします。

また、この年齢になると管理職の役職に就く人も多いです。そのため多忙を極めるため、長々と話すのではなく端的に話をまとめて伝える必要があります。

・高齢医師への営業活動

60代などさらに高齢の医師になると、最新の治療情報などエビデンスを求める医師は非常に少なくなります。良い意味でも悪い意味でも、自分の治療経験を重視します。

いわゆる高齢の町医者を想像すれば分かりますが、そうした高齢医師が「最新の医療情報を精力的にかき集めて患者さんのために努力する」ことはほぼありません。もちろん、中には素晴らしい志をもった高齢医師がいるかもしれません。ただ、実際のところこうした先生に最新の学術情報や学会情報を提供しても無駄に終わります。

そこで、医師が行っている日々の診察や治療方針を尊重するようにしましょう。そうした上で、「先生の治療方針であれば、この薬を追加することでさらに患者さんに貢献できる」というスタンスで臨むようにしましょう。

経験重視の先生に対して、「この新薬のエビデンスは非常に優れているので採用してください」などのようにアピールしてはいけません。反発されるだけなので、必ず医師の治療方針を把握した上で営業活動を進めるようにしましょう。

専門医と非専門医でアプローチ法を変える

また、医師の性格や年齢に限らず、必ず意識すべきことがあります。それは、医師の専門性です。

医師には必ず専門性があります。多くの患者さんを診る町医者であっても専門性があります。例えば、内科は風邪を含め比較的多様な患者さんが受診します。ただ、皮膚疾患をもっている人が内科を受診すると医師は困ってしまいます。じんましんやニキビを含め、皮膚領域は皮膚科が専門だからです。

医師というのは、専門外になると急に知識がなくなってしまうことはよくあります。これが病院の勤務医であるとより顕著であり、特定の分野について深く詳しいものの、その他の分野はほとんど知らないのが一般的です。

そのため、医師の知識レベルに応じて話し方を変えなければいけません。例えば、内科の先生に対して「2型糖尿病患者に対する薬の使い方」を説明したとしても、既に知っています。そのため、MRによる情報提供によって医師の診療を助けるためには、より高度な知識を提供しなければいけません。

一方でこれが小児科になると、2型糖尿病や高血圧など「生活習慣病に関する治療薬の使い方」を熟知している医師は非常に少なくなります。

ただ、子供でも2型糖尿病を発症するケースが稀にあるため、そうした子供に対してどのように薬を活用すればいいのか情報提供してみると、意外と良い反応を見せてくれることがあります。

また、子供の高血圧では二次性高血圧(腎臓の異常など、原因がはっきりしている高血圧)などがあり、この場合は降圧剤を活用します。小児科医にとって高血圧治療薬は不慣れなため、MRからの情報提供が新鮮に映ります。

できるMRほど関係ない医師にアプローチする

病院であれば、自分の専門外の先生に対してもアプローチすることが必須です。営業成績の上がらないMRであるほど、関係のある医師にしかアプローチしません。ただ、病院での新薬採用では「関係ない診療科の先生」の評価も大きく関わるため、病院を担当しているMRであれば、関係ない医師へのアプローチは非常に有効です。

病院の勤務医というのは、特定の患者さんばかりを診ているので知識が偏りがちです。ただ、いつ開業してゼネラリストになるか分かりませんし、他の知識を含めて取りいれたいと考える医師は多いため、直接関係ない医師まで視野に入れるのは非常に優れた営業方法だといえます。

また、自分の担当とはまったく関係ない科目の医師であったとしても、「あなたが担当を受けもっている医師の奥さんや娘」など非常に親密な関係にある医師であれば、そこにアプローチすることで結果として担当を受けもっている医師と信頼関係を構築できるようになります。

営業成績の優れているMRであるほど、専門外の医師に対しても積極的に営業活動をしています。一見すると成績に関係なさそうであっても、大きな成果を出せることを知っているのです。

医師ごとにアプローチ法を変える

ただ、専門医師に営業するときであっても、細かく専門分野を分けることを考えるようにしましょう。例えば消化器内科の先生であったとしても、肝臓が専門の先生がいれば、ホルモン分泌を専門にする医師もいます。

人によって専門領域は大きく異なるため、医師の専門レベルに応じて話し方を変えるのは当然です。

また、これに加えて「エビデンス重視、経験重視のどちらのタイプか」「医師の立場・役職はどうか」「うまく治療できていない患者さんには、どのような人がいるのか」などの要因が加わり、それによって話の内容が異なってきます。

医師が違えば、当然ながら情報提供するべきことが変わってきます。これを無視して、会社から提供されるパンフレットだけで営業活動しようとしても成績が上がらないのは当然だといえます。

医師の心に響く営業を実践するためには、相手の立場や医師が考えていること、さらには何を望んでいるのかを必死で考えるようにしましょう。営業成績を上げるコツは「先生のことを知る」ことです。相手に興味関心をもち、望んでいることを引き出す必要があります。

重要なのは、「医師によってアプローチ方法を変える」ということです。相手の望みを必死で考え、それを助ける手伝いをすれば、自然と医師によって営業方法が変わってくるようになります。そうすれば、勝手に業績評価が上がってきます。


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