MRは営業職であるため、医療機関や医薬品卸を回ることで外回りの営業活動をします。このとき、日々の営業時間内の空いた時間に内勤作業をすることはありますが、基本的にはずっと外回りをしているため長い時間働くことになります。

また、MRは年収が高くて休みを取りやすい職業ではあるものの、上記のようなフルタイムでの労働があります。残業は当然ながらありますし、それに加えて医師を含めた得意先との人間関係などメンタル面のストレスが大きいという特徴があります。

さらに、MRは全国転勤ありなので辞令が出ればどこであっても転勤しなければいけません。

こうした事情から、外勤ではなく内勤・事務職への転職を検討する人がいます。それでは、MRがどのようにして内勤・事務職への転職を目指せばいいのかについて確認していきます。

内勤・事務職への異動や転職をMRが考える理由

なぜMRとして活躍している人が内勤や事務職への異動・転職を考えるのでしょうか。その理由は人によってさまざまですが、将来のことを考えて早めに転職することがあれば、会社命令によって内勤へ異動になることもあります。

例えば、以下のような理由で異動や転職による内勤・事務職を目指す人が多いです。

キャリアアップの一環として内勤への転勤を目指す

MRから内勤へ異動するといっても、花形と呼ばれる部署へ栄転することはよくあります。例えば、MRであれば本社に営業統括部が存在します。支店での営業所長ではなく、本社勤務することで営業をバックアップするのです。

現場でMRを管理し、指示を出すのが営業所長や営業マネージャーです。それに対して、営業統括部では本社に籍を置くことで「どのように販売戦略を立てるのか」「重点をおくべき商品は何か」などを考えるのです。

内資系であっても外資系であっても、営業統括部は存在します。営業統括部の部長がすべてのMRの頂点に立つ存在となります。

また、内資系製薬会社の場合は海外事業部が存在します。海外事業部では、どのようにビジネスを海外展開させていけばいいのかについて考えます。海外で医薬品を市場開拓したり、どの企業を買収すればいいのかを話し合ったりするのです。

これら営業統括部や海外事業部は「どのようにして自社製品の売上を拡大させるのか」について考えるため、マーケティングを行う部署だともいえます。

こうしたマーケティングはMRとして現場を知らなければ行うことができません。机上の空論ではなく、実学に基づいた戦略を立てるためにMRの経験が必須になるのです。

ただ、本社勤務を目指すとき、当然ながら営業成績の悪い人が勤務することはできません。成果を出せない人が本社勤務をしても、良い成績を出すことはできないからです。そのため、マーケティング実践部隊として転勤・転職を目指す場合、まずはMRとして頑張ることが必須条件です。

勤務地限定・転勤なしを目指す

また、中にはキャリアアップを目指したいという目的ではなく、勤務地限定・転勤なしを実現させたいために内勤への転職を考える人もいます。

MRは全国転勤ありの職業であるため、いつどの段階で見知らぬ土地へ転勤するようになるか分かりません。独身であれば問題ありませんが、結婚している男性であれば単身赴任をしたり、家族と一緒に引っ越しをしたりしなければいけません。

女性であれば一人だけ家族をおいて転勤するのは難しいため、転勤が決まった時点で退職願を出し、そのまま辞めることもあります。

そこで、勤務地限定の仕事を目指して早めに内勤・事務職を検討するのです。

ただ、MRは非常に年収が高い職業であり、営業統括部など以外で内勤を目指すとなると、高確率で年収が下がります。そのため、転勤なしを実現するために転職を希望する人は女性MRが多いです。

MRは医師を相手にする職種であるため、人への接し方を含め高度な対人スキルをもっています。そこで、学術やコールセンターなど対人技術を活かせる内勤へ転職するのです。

MRとして働くストレスから解放されるために内勤になる

また、場合によっては後ろ向きな理由によって内勤・事務職へ移りたいと考えることがあります。

MRはストレスが多いです。内部からは数字(ノルマ)を常に求められ、外回りでも医師・薬剤師・医薬品卸MSと接しなければいけません。このとき、良好な人間関係を構築できなければ仕事が大きなストレスに繋がります。

そうしたストレスによって、うつ病を発症する一歩手前までなってしまったり、実際にうつ病に罹ってしまったりすることがあります。

体調を崩してしまったり、MRで働くことによるストレスでうつ症状が表れたりした結果、内勤チームへ異動になるのです。このとき、書類や資材をまとめる営業アシタントをしたり、領収書の整理を行う経費関係の処理を行ったりするようになります。

後ろ向きな理由による異動であるため、マーケティングを含め重要な部署を任されることはありません。転職するときであっても、花形と呼ばれる部署で活躍することは難しいです。ただ、こうした簡単な作業を行う事務職として頑張ることにより、ストレスから解放されて仕事を遂行できることは大きな意味があります。

MRが内勤・事務で活躍できる部署や職業を知る

先ほど、MRとして頑張っていた人が活躍できる部署として営業統括部や海外事業部を紹介しました。これらは営業色の強い内勤・事務職であり、マーケティング実践部隊(部署)として会社の中枢を支えます。

ただ、そのほかにも内勤としての側面をもつ本社機能が存在します。また、完全なる内勤ではなくても、転勤なしなどMRとしてのスキルを活かして長く働ける部署が存在します。営業統括部と海外事業部については既に解説したため、それ以外について確認していきます。

学術

製薬会社で医師や薬剤師からの問い合わせに対して答えたり、MRの教育を担当したりする職種として学術があります。また、海外の文献を和訳してMRに伝えたり、学会資料を作成したりするなどの仕事も担当します。

特に営業学術であると、電話で医師と交渉を行うことになります。こうしたとき、MR経験のある人が担当する方が圧倒的に交渉をスムーズに運ぶことができます。

基本的に内勤作業を行うことになりますが、学術では英語力が要求されます。外国人と対等に話す能力までは必要ないものの、海外の英語論文を読解しなければいけないため、医療英語を扱える必要があります。

コールセンター

MR経験者に対して、コールセンターの求人が出されることがあります。コールセンターとはいっても、相手は一般顧客ではなく医師・薬剤師からの問い合わせになります。こうした質問に対しては、当然ながら医薬品知識のある人でなければ回答できません。

このとき、MR経験のある人は重宝されます。医薬品知識だけでなく、現場での経験があるので適切な回答ができるのです。

会社によっては「予約制のコールセンター」の求人を出していることがあります。こうしたコールセンターであれば、理不尽なクレームはありません。そのため、問題なく働けるようになります。

新人教育・広報・人事・総務・経理などの本社部門

女性であれば、コールセンターの他に本社部門に移ることを考える人もいます。新人MRの教育担当を行ったり、全国規模の講演会のサポートを担当したりするのです。

MR経験があれば、こうしたサポート部門で働くことができます。コールセンターと同じように転勤や残業などもなく、本社であればずっと同じ場所で働き続けることができます。

MRから準内勤職を目指す

内勤というよりも、出張や訪問を含め営業的な要素のある職種へ転職・異動するという方法もあります。

ただ、MRのように数字(ノルマ)を課せられることはありません。プロモーションを行うというわけではなく、その他の分野で医療に貢献する職種が存在します。

MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)

大学病院や基幹病院などKOL(キーオピニオンリーダー:医薬品販売に大きな影響力をもつ医師)に対して、エビデンスや高度な専門知識などを提供したり、臨床研究を支援したりする職種としてMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)があります。

MSLでは実際にKOLと会い、論文や学会などから得た最新の医学・薬学情報を提供したり、最新の治療法について議論したりします。そのため、「医師と会って情報提供する」という点ではMRと同じです。

ただ、MRでは自社製品を売らないといけないのに対して、MSLではプロモーション活動に関与せず純粋にKOLの活動を支援することに専念します。

特に新薬発売の段階では、1年以上前からKOLに対して情報提供し、新薬の有効性を伝えたり議論を交わしたりしていきます。そうしておけば、実際に新薬上市のときに商品が売れていくようになるのです。学術寄りの営業がMSLだといえます。

CRA(臨床開発モニター)

治験業務に関わることで、これから医薬品を世の中に出すように支援する職業としてCRA(臨床開発モニター)があります。治験のモニタリングを行うことによって、治験を支援します。MRからCRAを目指して転職する人も多いです。

CRAでは事務作業が多くなるものの、出張によって全国を飛び回ります。ずっと社内にいて仕事をするわけではないですし、医師・薬剤師などの医療関係者に説明・交渉して仕事を進めなければいけません。

そのため、CRAであっても営業的な感覚が必要です。ただ、MRほどの営業を展開するわけではないため、MR経験者であればCRAでの交渉事は問題なく進めることができます。

PMS(市販後調査・安全性)

新薬発売後の副作用情報に関わる部隊として、MR経験者が携わることもあります。臨床試験では実際に患者さんに薬を投与しますし、このときは副作用情報も集めます。ただ、治験では少数の限られた患者さんにしか投与されないため、わずかな発生率の副作用は無視されてしまいます。

ただ、実際に新薬上市になると何万人もの患者さんに処方されるようになります。このとき、見えなかった副作用が表れるようになることがあります。

そこで市販後調査として、新薬発売の後に薬の有効性や安全性(副作用)に関する情報収集を行い、薬が適正に使用されるようにするのがPMSです。

MRであってもPMSを実施することがあります。ただ、それを専門で行うPMS部隊として活躍することもできるのです。

MRから内勤・事務職へ転職するメリット・デメリット

特に女性であれば、内勤・事務職への転職を考える人が多いです。このとき、メリットとデメリットを考慮しながら転職活動を進めるようにしなければいけません。

内勤・事務職のメリット

前にも述べましたが、内勤・事務職では勤務地限定や転勤なしを実現できます。MRが転職を決意するとき、「全国転勤があること」は常に退職理由の上位です。そのため、内勤・事務所を目指すことで転勤なしで同じ仕事を続けられることのメリットは大きいです。

転勤なしであれば、家族に迷惑をかけなくてすみます。持ち家をもつことも可能です。MRでは不可能だったことであっても、勤務地限定であれば可能になるのです。

また、コールセンターや新人教育など、職種によっては残業なしを実現できます。こうした部門へ転職することによって、女性は家庭との両立を行いやすくなるのです。

MRの場合、結婚後や妊娠・出産後に退職したり転職したりする人が非常に多いです。ただ、あらかじめこうした職種に転職しておけば、子供が生まれた後であっても問題なく仕事復帰できます。

内勤・事務職のデメリット

MRは非常に高年収であるため、内勤・事務職に転職することによってほぼ確実に年収が下がることは覚悟しなければいけません。このとき、人によっては300~400万円以上もの年収ダウンになることもあります。

これはつまり、給料面ではそれだけMRが優遇されていたということでもあります。MRと同じ給与水準で考えては、いつまで経っても内勤・事務職の求人へ応募し、転職することはできません。MRと同じ水準で高年収を提示する内勤・事務職の求人は存在しないからです。

そのため、「勤務地限定や残業なしを実現する」ことを優先させるのか、「高い年収を維持する」ことに重きをおくのかについて、じっくりと考える必要があります。

もちろん、営業本部などへ移るときは年収を維持できる可能性があります。ただ、このときであっても営業手当などは支給されませんし、営業成績に応じたボーナス支給もないため、一時的に年収ダウンすることには変わりません。

MR経験を活かし、内勤・事務職へ転職する

現場でMRとして活躍していると、本社へ異動したり他の職種へ転職したりすることを考える人は多いです。ずっとMRを続けるよりも、MR経験を活かして他で活躍することを考えるのです。

その理由はキャリアアップや転勤なしの実現など、人によってさまざまです。

このとき、意識しなければいけないのは英語力です。コールセンターや新人教育のように、英語が関係ない部署はあるものの、海外事業部や学術、MSL、CRAなど英語力を必要とする職種はたくさんあります。

MRであれば英語を活用することはほとんどありません。ただ、自分のキャリアを形成し、MR以外の職業への転職・異動を実現するためにいまから英語を学んでおいて損はないです。

MRを経験している以上、営業的な感覚は問題ありません。ただ、会社としては当然ながら「MRとして成果を出せない人は、他の部署でも成果を出せない」と考えます。

そのため転職であれ社内異動であれ、まずはMRとして成果を出すことを考えましょう。これにプラスして英語力を磨けば、さらに自分の望みを叶えた転職を実現できるようになります。

ただ、場合によっては前述の通り、「ストレスが原因で内勤へ異動になる」など、ネガティブな理由で内勤・事務職を命じられることもあります。これについては、人によって事情が異なります。しかし、たとえストレスによって体調を崩した場合であっても、本来はそうなる前に転職して問題なく働ける職業を探すのが適切です。

キャリアアップを含めて自分が目指すべき未来を見定め、「将来必要な勉強をしておく」「年齢の若いうちに転職し、早めにMR以外の職種につく」など戦略を練ってキャリア形成を考えてみてください。そうすれば、MR経験を活かしながら自分の能力を最大限に活かせるようになります。