製薬会社のMRとして働くとき、欠かせない存在として医薬品卸MSがあります。医薬品卸MSとは、医薬品卸の営業マンのことを指します。

営業成績を伸ばし、業績評価を達成するためにはMSの人に協力してもらうようにしましょう。病院担当MRであれば医薬品卸に通うことはほぼないものの、開業医担当であれば医薬品卸とどれだけ付き合えるかによって販売実績が変わってきます。

そこで、なぜMRにとってMSが重要なのかを理解し、どのようにして営業成績を伸ばしていけばいいのかについて確認していきます。

MSが存在しないと医療が成り立たない

他の業界に比べると、MRは作業として行うべきことが非常に少ないです。実際に商品を運ぶ必要はありませんし、価格交渉をする必要もありません。いってしまえば、情報を提供して自社製品が採用され、処方数が伸びるように営業活動だけをすれば問題ありません。

一般的な営業職であると、商品の納入や価格交渉はその会社に属する営業マンが行います。ただ、医薬品の場合は命に関わるものであるため、MRに価格交渉権はありません。

例えばMRが医師に対して「薬の値段をかなり安くするので、たくさん処方してもらってもいいでしょうか」とお願いすればどうでしょうか。その薬が良いかどうかは二の次になり、価格重視で患者さんに薬が処方されてしまいます。これでは、適切な医療を提供しているとはいえません。

こうした事態を防ぐため、MRではなく医薬品卸MSが医療機関に卸すときの薬の値段を決めます。また、前述の通り薬を届けるのもすべて医薬品卸です。

そのため、MRの中には自社製品パッケージの現物すら見たことのない人がいます。商品に触れる機会がないため、これについては仕方のないことです。

MRとMSでは担当範囲が大きく異なる

MRとして開業医を担当する場合、担当エリアが決められます。決定されたエリア内で受け持った得意先に対して営業活動を展開していきます。ただ、得意先を訪問するとはいっても、毎日訪問するわけではありません。頻繁に訪問するとはいっても、多くて週1~2回が限界です。

一方でMSであると、MRに比べて担当エリアが非常に狭いです。そのため、同じ得意先をルート営業として毎日訪問することになります。

MRと違って、MSは実際に医薬品を届ける役割があるので医療機関にとって欠かせない存在です。薬がなければ医療が成り立たないため、MSが存在しなければ日々の診療ができないのです。

また、毎日顔を出して医療機関に出向いているため、MRでは会えない医師であったとしても、MSであれば問題なく会える場合があります。そうしたとき、MSと一緒に協力して薬のプロモーションを実施することで自社製品の新規採用や処方拡大のチャンスを広げることができます。

MSにもノルマがある

なぜ、MSが協力してくれるのかというと、MSにも数字(ノルマ)があるからです。新薬が発売されたとき、新薬をどれだけ医療機関に卸すことができるのかに関する数字を課せられます。

医薬品卸は全種類の医薬品を取り扱います。MRであれば自社商品だけをプロモーションすればいいですが、MSにとってみればあらゆる種類の薬を売らなければいけません。そのため、MRに比べて業務範囲は広いです。

こうした事情があるため、MSと信頼関係を築くことで「他社メーカーの薬ではなく、自社商品を優先してプロモーションしてもらう」ように仕向けることができれば、非常に有利に自社商品を販売できるようになります。

そこで、いくつかある医薬品卸の中でも、どのMSと協力して新薬のプロモーションをすればいいのかを見極める必要があります。例えば、Aクリニックに新薬採用のプロモーションをしたいとき、Aクリニックを担当している複数のMSのうち、どの医薬品卸に属するMSと協力すると効果的なのかを考えるのです。

ダメなMSよりも、当然ながら医師や薬剤師から信頼を得ているMSに協力してもらった方が良いです。これについては、MSと医師との信頼関係やMSの力量などをMRが見極めるようにしましょう。

MSとしても、ノルマを達成するためにMRと協力してプロモーションすることは大きなメリットです。そのため、協力を依頼すれば受け入れてくれやすいです。

また、新薬プロモーションに限らず、MSに同行して一緒に医師や薬剤師を回るのも良い作戦の一つです。MSの信用を活用すれば、通常では会えない先生と面会することができるようになります。

MRの分身を作ることを考えるべき

開業医担当のMRが大きな成果を出す秘訣の一つとして、「どれだけMSの力を引き出せるか」があげられます。営業成績の優れないMRであるほど、一人だけの力で頑張ろうとします。一方で優れたMRであるほど、MSへも積極的に情報提供します。

MSに協力してもらい、MSが医師や薬剤師に対して自社製品をプロモーションしてくれればどうでしょうか。あなたが動かなくても製品がMSを通じて自動的に宣伝されるため、その分だけ新規採用の確率が高まります。

要は、自分の分身を作るのです。MRの宣伝では響かない医師であっても、全商品を取り扱うMSから宣伝されれば響く医師もいるため、分身とはいっても非常に優秀な戦友だといえます。

ただ、MRは「どのようにプレゼンテーションをすればいいのか」「他の製品と比べて何が違うのか」「新薬の特性は何か」などの情報が提供されているものの、MSにはそうした情報がありません。

そこで、一緒にプロモーションを行うMSを決めた後は、どのように商品説明をすればいいのかを積極的に教えるようにしましょう。最初は面倒かもしれませんが、MSにも情報提供をして薬を宣伝してくれる分身を増やす努力をすれば、販売成績は飛躍的に向上します。

MSに協力を求めるMRは多いですが、「医師にプレゼンできるレベルまで育てる」ことまで実践しているMRは非常に少ないです。ただ、こうした面倒な作業を最初だけ行えば、後は勝手にMSが製品を宣伝してくれることを考えると、実は非常に効率的な作業だといえます。

朝にMSと話すときは空気を読むべき

医薬品卸の営業所(デポ)を訪問するときは朝がほとんどです。特別な理由がない限り、このときはMS全員が机にいます。ただ、朝はMSにとって非常に忙しい時間です。

商品をチェックするために倉庫へ出向いたり、商品配送の状況を調べるためにパソコンを叩いたりしており、その中でも素早く得意先へ出向くことを考えています。そうした中で多くのMRが話しかけることになります。

このとき、MSへ話しかけることを遠慮していると協力関係を築くことができませんし、空気を読まずに強引に話しかけると反発されます。そのため、話をするときはできるだけ簡潔にまとめて会話をするようにしましょう。

こうした現状はありますが、優れているMRであるほど医薬品卸の朝礼を有効活用します。支店長やMSに対して、薬の説明をしたりどのようにプロモーションすればいいのか解説したりする全体説明の機会をもらえることがあります。このとき、「今回のプロジェクトを成功させることで、どれだけ患者さんに貢献でき、医療が素晴らしいものになるのか」まで含めて伝えるとより効果的です。

人間は感情で動きます。「ぜひともあなたの製薬会社の商品を積極的に売りたい」とMSが前向きになってくれなければ、いくらこちらがお願いしても動いてくれません。そのため、朝礼の時間をもらったときは勝負だといえます。

ちなみに、朝礼に限らずMSにとってメリットになることを情報提供すれば、人間関係を構築しやすくなります。

例えば、MSは毎日同じ医療機関に出向いているため、医師や薬剤師との新鮮な話題に困っています。そうしたとき、「包装変更になった」「薬に関する新たな知見が発表された」などの情報を資料と共に提供すると、MSにとってみればその日は話題に困らなくなるのでありがたく思ってくれます。

医薬品卸には情報が溜まっている

病院担当のMRには関係ないかもしれませんが、開業医担当MRでは「どれだけ医薬品卸を制することができるのか」が重要になります。これは、MSと協力することで製品のプロジェクトを推し進めるだけでなく、得意先に関することを含めあらゆる情報が医薬品卸に溜まっているからです。

前述の通りMRが医療機関へ訪問できる頻度は、訪問頻度の多い得意先であっても週1~2回ほどです。ただ、MSは同じ医療機関を毎日訪問しています。そのため、得意先に関する情報や最新の動向などはMSの方が詳しいです。

MSと仲良くなれば、得意先の情報を教えてくれます。診療に関することから医師のプライベートなことまで、こうした情報を知っているほど営業活動ではプラスに働きます。

また、医薬品卸はMSだけが在籍しているわけではありません。支店長や管理薬剤師、商品担当者の方までいます。

支店長はMSのトップに立つ人間であるため、当然ながら医薬品卸を訪問したときは最初にあいさつをします。ただ、営業成績の優れているMRは管理薬剤師や商品担当者に対しても情報提供します。

医薬品卸の管理薬剤師には、さまざまな医療機関から問い合わせの電話がかかってきます。メーカーであれば自社商品しか取り扱っていないものの、医薬品卸では全商品を取り揃えているため、中立的な立場から情報提供するのが医薬品卸の管理薬剤師です。

そこで、新薬が発売されたり適応追加されたりしたときなど、管理薬剤師にも案内するといいです。医薬品卸を訪れてボーっと突っ立っているMRは多いですが、そうした暇があるならこうした人たちにも情報提供すると良いです。

商品担当者は意外と重要

そして、多くのMRは実践していないものの、意外と効果が大きいのは医薬品卸の商品担当者への情報提供です。実際に病院やクリニック、薬局などから商品の注文を受け、発注したり伝票を記載したりする業務の方々が商品担当者です。

商品担当者に渡すべき情報は「包装変更の案内」がメインです。医療機関は包装変更を嫌うため、その情報を医薬品卸の商品担当者へ早めに伝えることで、トラブルを未然に回避することができます。また、発売中止や規格追加など、商品の流通に関することも情報提供すべき内容です。

また、商品担当者の方にまで情報提供するMRがほぼいないため、商品担当者の方から支店長やMSに対して「あのMRさんはこっちまで気にかけてくれている」と良い口コミをしてくれます。そうなると、当然ながら支店長やMSからの評価が上がり、医薬品卸営業所(デポ)での営業活動がしやすくなります。

商品担当者の方は階が違うなど、少し離れた場所で仕事をしていることが多いです。ただ、包装変更の案内などわずか数分で行える情報提供作業をするだけで、非常にありがたく思ってくれます。

成績の悪いMRであるほど、自分に関係がありそうな人だけにアプローチします。ただ、トップMRであるほど一見すると関係なさそうな人にまで情報提供します。

私の場合、トップ成績をたたき出していた他社MRが医薬品卸(デポ)の商品担当者まで情報提供していた姿を見て、それを真似したら大きな効果がありました。

開業医担当のMRにとって、どれだけ医薬品卸を攻略できるのかによって営業成績が大きく変わってきます。あなたに賛同してくれるMSをたくさん見つけるほど、多くの人があなたの商品をプロモーションしてくれるようになります。

ただ、MSに必要最低限の情報を提供しているだけでは不十分です。支店長は当然のこと、管理薬剤師や商品担当者に対しても情報提供しましょう。そうして営業所の人たち全員から信頼してもらってこそ、優れたMRとして大きな営業成績を残せる下地を作ることができるようになります。


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特に製薬業界の場合、情報を表に出せないので非公開求人となっていることがほとんどです。そのため、MRの転職では転職サイトの活用が必須です。

ただ、転職サイトによって「外資系に強い」「中小の求人が多い」など特徴が異なり、保有している会社の求人が違ってきます。そのため複数の転職サイトを利用する必要があります。

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