国内のトップレベルの会社として第一三共があります。大手の製薬会社であるため、MRの中途採用で求人へ応募し、転職する先として検討する人は多いです。会社規模が大きいため、得意先の医療機関から邪険にされることもありません。

ただ、転職を行うためには求人先の会社の強みや特徴を知る必要があります。そこから志望動機を考えていくことによって、ようやくオリジナルの志望理由を描き、転職成功できるようになります。

そこで、MRが転職時に理解すべき第一三共の特徴について考えていきます。

第一三共の歴史

企業の強みや特徴は歴史に表れます。そこで、まずは第一三共の歴史について確認していきます。

2005年に三共と第一製薬が合併して、第一三共が生まれました。内資系の大手2会社が合併することによって、現在の第一三共になったのです。

三共の歴史

第一三共の歴史は、前身である三共において1899年に三共商店が創業されたことから始まります。このとき、食べ物の消化を助ける医薬品として消化酵素剤タカヂアスターゼを発売しました。一般用医薬品として、第一三共胃腸薬という商品が広く知られています。第一三共胃腸薬には、主成分としてタカヂアスターゼが含まれています。

また、1902年には副腎髄質ホルモン剤アドレナリンを発売します。アナフィラキシーショックの改善など、アドレナリンは現在でも多用されています。

三共の初代社長にはタカヂアスターゼやアドレナリンを発見したことで有名な高峰譲吉が就任しています。高峰譲吉は研究者としてだけでなく、実業家としても手腕を発揮しました。

三共が自社創薬とした薬で有名なものとしては、ロキソニンがあります。解熱鎮痛剤として現在でも広く活用されている薬がロキソニンであり、医療現場だけでなく一般用医薬品としてドラッグストアでも売られています。多様なニーズに応えるため、医療用医薬品では錠剤や細粒、テープなどさまざまな剤型があります。

脂質異常症(高脂血症)の治療薬メバロチンを開発したのも三共です。脂質異常症としては、スタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が最も活用されます。このとき、世界初のスタチン系薬がメバロチンです。

高血圧治療薬オルメテックについても、三共による創出が行われました。高血圧で多用されるARB(アンジオテンシン2受容体阻害薬)の一つとして、オルメテックが活用されます。

第一製薬の歴史

三共に対して、第一製薬は1915年にアーセミン商会という名前で創業しました。梅毒治療薬としてサルバルサンがあったものの、このときは第一次世界大戦の影響でドイツからの輸入が途絶え、サルバルサンを輸入できなくなりました。

そこで、国産のサルバルサンとしてアーセミンという商品名で売り出されるようになったのです。

アーセミンから始まった会社であるため、第一製薬は感染症に強みをもつメーカーとして発展するようになります。例えば、1952年には結核治療薬イスコチンを販売することにより、結核治療へ大きく貢献しました。

第一製薬のときに新薬創出され、現在も多用されている薬としてはキノロン系抗菌薬クラビットがあります。幅広い細菌に対して効果を有することから、合成抗菌薬として世界中で重要な地位を占めています。

合併後、第一三共としての歩み

三共と第一製薬が統合して第一三共になった後、会社本体は医療用医薬品に特化することにしました。そこで、一般用医薬品(OTC薬)は第一三共ヘルスケアを設立することで、別会社が運営することになります。

また、第一三共になった後も自社創薬を進めています。2009年には抗血小板薬エフィエント、2010年に抗インフルエンザ薬イナビル、抗凝固薬リクシアナなどを開発し、グローバル新薬へと育てています。

三共と第一製薬が統合した会社であるため、生活習慣病や感染症領域では特に強みがあります。

第一三共での営業評価

国内大手製薬会社の一社であり、第一三共には高い営業力があります。自社での製品開発能力が高く、新薬が出にくくなっている現在でも自社創薬している点は非常に優れている会社です。

ただ、その分だけ新製品がたくさん出てくるため、他社MRよりも勉強しなければいけません。大手製薬会社になるほど自社創薬品だけでなく、コ・プロモーション(他社製品を共同で販売すること)が多くなります。これは第一三共でも同様であり、新たな領域を勉強して医師に情報提供する必要があります。

MRの年収について、第一三共はトップクラスです。かなりの高年収を実現でき、適切に成果を出していけば年収1000万円を超えることが可能です。

このときの評価は業績と行動に分かれているため、完全なる成果主義ではありません。チームや営業所での目標達成など、さまざまな評価基準があります。よくいえば「単なる成果主義ではない」になるし、悪くいえば「年功序列」です。

なお、昇進するためには試験を受けて合格する必要があります。昇進試験に落ちてしまい、長年同じ役職に就いている人もいます。

また、製薬会社が研修を行うときは主に「薬」に焦点を当て、その効果やポイントを解説するのが一般的です。ただ、第一三共では患者背景の研修を行うなど、「他社とは異なるMRでの視点」で営業活動を行えるようになります。

第一三共の社風や福利厚生

採用時は全国転勤が基本です。MRである以上、全国転勤は覚悟しなければいけません。ある程度の希望は聞いてくれますが、勤務地の要望はなかなか通らないと考えた方がいいです。

有給休暇は取りやすく、まとまった休みを取って海外旅行に行くなどは問題なく行うことができます。

住宅手当についても充実しており、家賃の8割ほどを負担してくれます。もちろん上限はあるものの、住宅手当が手厚いことはそれだけ実質的な手取り(給料)が増えることになります。

また、自己啓発費用のサポートもあるため、MR以外の能力を向上させたい場合であっても応援してくれます。

第一三共は人にやさしく、ダメな人であってもポストを用意してくれる半面、高コスト体質によって製薬会社にも関わらず利益率が低いという側面があります。一人当たりの生産性は低いが、社員にとってみれば給料は高く働きやすい会社だといえます。

第一三共の主要製品

会社の特徴や強みを知るときに最も重要なことは、「どのような製品を有しているのかを確認する」ことです。MRとして在籍するとき、売らなければいけない製品を知ることは必須です。

そこで、どのような主要製品があるのかを確認し、そこから第一三共の強み・特徴を探っていきます。

代謝性・循環器系疾患

脂質異常症や高血圧など、第一三共では生活習慣病に関連する自社創薬品を保有しており、こうした領域に強みがあります。

・脂質異常症治療薬メバロチン(一般名:プラバスタチン)

前述の通り、脂質異常症治療薬の中で最も活用される薬がスタチン系薬です。世界初のスタチン系薬として、第一三共がメバロチンを開発しました。

家族性高コレステロール血症の患者さんなど、メバロチンによって命を救われた患者さんは非常に多いです。

・高血圧治療薬オルメテック(一般名:オルメサルタン)

高血圧治療薬の中でも、かなり多用される薬の一つがオルメテックです。前述の通りARB(アンジオテンシン2受容体阻害薬)と呼ばれる種類の薬です。

ARBが高血圧治療でたくさん用いられる理由は臓器保護作用があるからです。腎臓や心臓などの臓器を保護することによって、高血圧による腎不全などの症状を軽減することができます。

・高血圧治療薬カルブロック(一般名:アゼルニジピン)

ARBと同じように多用される高血圧治療薬としてカルシウム拮抗薬があります。カルシウム拮抗薬は血管を拡張させ、これによって血圧を下げます。

カルシウム拮抗薬の一つとしてカルブロックが知られています。カルブロックは第一三共によって開発された薬の一つです。

・糖尿病治療薬カナグル(一般名:カナグリフロジン)

血液中の糖濃度が異常に高くなる疾患として糖尿病があります。糖尿病によって、腎不全や網膜症などの症状が起こります。そこで、血糖値を下げるように薬で調節する必要があります。

糖尿病治療薬の中でも、SGLT2阻害薬と呼ばれる種類の薬は「尿中からたくさん糖を排出するようにする薬」として知られています。カナグルはSGLT2阻害薬であり、尿中からの糖排泄を促すことで糖尿病を治療します。

・抗血小板薬エフィエント(一般名:プラスグレル)

狭心症の患者さんなど、心臓に疾患をもつ人では「血栓」の生成が問題になります。血栓によって心臓の血管が細くなると狭心症になり、心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞を発症します。

そこで、血小板の凝集を抑制することで心臓に関わる疾患を予防する薬がエフィエントです。それまで、プラビックスという薬が長年使われてきましたが、この薬の問題点として知られる個人差(人によって薬の効果が変わってしまうこと)を解消した薬がエフィエントです。

・抗凝固薬リクシアナ(一般名:エドキサバン)

同じように血液凝固を阻害することにより、血栓の生成を防止する薬がリクシアナです。抗血小板薬エフィエントの場合、動脈(血液の流れが速い)での血栓生成を防止します。一方で抗凝固薬リクシアナの場合、静脈(血液の流れが遅い)での血栓を予防します。

心臓のポンプ機能がうまく働いていない「心房細動」や血液の流れが滞りやすい「手術後の安静」など、こうした状況では血栓が生じやすくなります。そこで抗凝固薬を活用することで、脳梗塞や心筋梗塞などの疾患を予防します。

消化器疾患

胃潰瘍や十二指腸潰瘍など、胃腸が関わる疾患は多くの人を悩ませる病気の一つです。胃潰瘍や逆流性食道炎などがこれに当たります。第一三共は消化器疾患についても製品を保有しています。

・消化性潰瘍治療薬ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)

潰瘍治療薬として多用される薬にプロトンポンプ阻害薬(PPI)があります。胃潰瘍や逆流性食道炎は胃酸によって引き起こされるため、胃酸分泌を止めれば症状が劇的に改善します。その中でも、胃酸分泌を強力にストップさせる薬がプロトンポンプ阻害薬です。

ネキシウムはそれまでプロトンポンプ阻害薬として活用されていたオメプラールという薬の兄弟です。専門用語では光学異性体と呼ばれ、オメプラールよりも長く作用することができ、さらには個人差も少ない薬になっています。

疼痛・中枢神経系疾患

脳が関わる疾患が存在します。例えば、痛みは脳で感じ取りますし、脳の記憶機能が落ちると認知症を発症します。そうした脳が関わる分野で第一三共は新薬を保有しています。

・解熱鎮痛剤ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)

一般的な解熱鎮痛剤は専門用語でNAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれます。これら解熱鎮痛剤は風邪のときの解熱や痛み止めとして広く活用されます。その中でも、特にロキソニンは多くの人で用いられています。

一般用医薬品としてもロキソニンが活用されており、医療機関だけでなくドラッグストアなどでも手にすることができるおなじみの薬です。

・認知症治療薬メマリー(一般名:メマンチン)

年を取るにつれて物覚えは悪くなりますが、単なる物忘れとは異なり、認知症は脳が委縮する病気です。こうした認知症の中でも、中等度から重度のアルツハイマー型認知症の患者さんに活用される薬がメマリーです。

アルツハイマー型認知症の治療をすることで、症状の進行を遅らせることができます。他の認知症治療薬と併用することで、さらにその効果を高めることができます。

・抗てんかん薬ビムパット(一般名:ラコサミド)

脳内の電気信号が乱れることにより、急に倒れたりけいれんを起こしたりする病気として「てんかん」が知られています。特に小児でてんかん症状が問題になりやすいです。

そこで、電気信号の乱れを改善し、てんかん発作が起こらないように調節する薬がビムパットです。てんかん症状の中でも、脳の一部でてんかん症状を生じる「部分てんかん」の患者さんに活用されます。

感染症

第一三共では感染症に対する治療薬をいくつも独自開発しており、こうした領域についても強みをもっています。

・ニューキノロン系抗菌薬タリビット(一般名:オフロキサシン)

・ニューキノロン系抗菌薬クラビット(一般名:レボフロキサシン)

・ニューキノロン系抗菌薬グレースビット(一般名:シタフロキサシン)

細菌感染症を発症したとき、抗菌薬が投与されます。抗菌薬が働くことによって、ようやく細菌感染症から立ち直ることができるようになります。

こうした抗菌薬の中でも、ニューキノロン系薬は医療現場で多用される薬の一つです。幅広い細菌に効果を示す広域抗菌薬であるため、非常に使いやすいのです。これらタリビット、クラビット、グレースビットは第一三共によって創出されました。

・抗インフルエンザ薬イナビル(一般名:ラニナミビル)

毎年、冬になると大流行する感染症がインフルエンザです。集団感染を引き起こすため、インフルエンザは初期で治療しなければいけません。

そうしたとき、一回の服用によってインフルエンザウイルスの増殖を抑え、インフルエンザを治療する吸入薬がイナビルです。

ワクチン

第一三共はワクチンも取り扱っています。ただ、第一三共の本体というよりも、その子会社がワクチン事業部を担っており、ワクチンMRとして活躍することができます。

インフルエンザ、麻しん(はしか)、風疹、おたふくかぜ、ロタウイルス、ヒブなど各種ワクチンを取り扱っています。

ワクチンMRの場合、育児経験のある女性が重宝されます。ワクチンは主に小児に対して活用されるからです。そのため、時短MRが最初から認められているなど、ワクチンMRは女性にとって働きやすいです。

第一三共のMRとして転職し、活躍する

製薬会社の中でも高年収を実現でき、良くも悪くも社員を大切にする会社が第一三共です。完全なる成果主義というよりも、そのプロセスまで考えて評価されます。

ただ、そうした体質のためコストが余計にかかり、製薬会社の中では利益率が低いという特徴があります。

しかし新薬の開発能力は高く、新薬が出にくくなっている現在であっても自社開発品を多数保有しています。国内大手の1社であり、営業力も強いです。

このように、第一三共には強みがあれば弱みもあります。こうした社風に加え、どのような領域に強みをもっている会社なのかを把握した上で志望動機を考えてみてください。会社の特徴を理解したうえで、MRとして求人先の会社に「自分」を売り込むことにより、ようやく中途採用で内定を勝ち取れるようになります。